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 福岡通信 03/11/13 (木) <前へ次へindexへ>
 スタンドから声援を送った部員と喜びを分かち合う筑陽学園

 筑陽学園が接戦を制して全国へ。


 文/中倉一志
 11月9日。ある意味では、この日は福岡県の高校サッカー界にとっては歴史が変わる日であった。過去25年間の福岡県代表の座は、東海第五12回、東福岡10回、福岡商業、伝習館、福大大濠がそれぞれ1回と、事実上、東福岡と東海第五の2強に独占されてきた。しかし、この日の決勝戦の舞台に両校の姿はない。頂点を目指して戦うのは柳川高校と筑陽学園。どちらが勝っても初優勝。12年振りに2強以外のチームが福岡県代表の座を掴む。

 7月22日に始まった一次予選から勝ち上がってきたのは柳川高校。1次予選では17得点無失点と圧倒的な強さを発揮。2次予選では筑前高校に3−2、東海第五を4−2、準決勝の九国大付戦では3−2と点の取り合いを制して、ここまでたどり着いた。後方からのロングフィードで高い位置に起点を作り、そこからワイドに大きく展開して3トップ気味の布陣でゴールを狙うのが得意のパターン。決勝戦でもその攻撃力を生かしたいところだ。

 対する筑陽学園は一次予選免除のシード校。最大の山場と見られた東福岡との準決勝では、徹底的に守り抜いて東福岡の攻撃を押さえ込み、終了間際に訪れた決定機に西野選手が右足を振りぬいて決勝戦進出の権利を手に入れた。試合を通しての決定機はわずかに2度。しかし、見事にそのチャンスを物にした。これしかないといった勝ち方だった。決勝戦の鍵を握るのはMF桑原選手。コンサドーレ札幌への入団が決まっている桑原選手の動きに注目が集まる。

 12:00のキックオフに合わせて筑陽学園の生徒が続々と集まってくる。10年ぶりの決勝戦。インターハイ、高校選手権を含めて初の全国大会進出がかかるとあって同校の生徒たちも気合十分。みるみるうちにバックスタンドアウェイ側が埋まっていく。柳川高校の応援も負けてはいない。筑陽学園の応援団が入場後、こちらのあっという間にホーム側スタンドを埋める。女子応援団長の指揮のもと大声援をピッチに送る。そして12:00、キックオフを告げるホイッスルが高々と鳴り響いた。



 激しくぶつかり合う両チーム。試合は決勝戦にふさわしい白熱した
 試合展開となった。
 筑陽学園の攻撃パターンは多彩だ。前線にはFW西野選手が張り、2トップを組む桑原選手は中央から左サイドにかけて自由に動く。その動きに合わせて、1.5列目の仁科選手が上下動を繰り返し、左からMF久光選手が裏へ飛び出す。流れるようなポジションチェンジから繰り出すパスワークは相手にとっては厄介だ。そして、桑原選手は攻撃の起点になるばかりではなく、ドリブル突破、ラストパス、シュートと、その存在感を見せつける。

 この筑陽学園の攻撃を柳川高校は3−4−1−2の布陣で受ける。筑陽の2トップをストッパーの2人がマンマークで抑え、2列目から飛び出してくる選手にはボランチと低い位置まで下がって構える両WBが協力して密着マーク。こぼれたボールをスイーパーの柴田選手が拾う。マイボールはシンプルに縦へフィード。高い位置に起点を作って、2トップとトップ下、そして中盤の頂点に位置する古賀選手の4人に攻撃を任せる。

 そんな試合の主導権を握ったのは筑陽学園。密着マークに来る柳川を激しいポジションチェンジを繰り返して振り払いにかかる。スピード豊かに上下左右に入れ替わる攻撃は迫力満点だ。準決勝の東福岡戦では「何も出来なかった」と吉浦茂和監督(筑陽学園)に言われた桑原選手の動きが際立っている。そんな攻撃に柳川高校は必死になって付いていく。守備的な立ち上がりになったが、まずは我慢の時間帯。押し込まれながらも決定機だけは与えない。

 しかし21分、先制点が筑陽学園に生まれる。右からのCKのチャンス、ゴール前にこぼれたボールを西野選手が頭で合わせる。そして混戦になったところを仁科選手がシュート。ボールに勢いはなかったが、わずかな隙間をぬってゴールマウスに転がり込んだ。この1点で筑陽学園が一気に勢いに乗る。マンマークに付く柳川高校が振り切られるシーンが目立ち始める。度重なる筑陽学園の決定的なチャンス。しかし、ここは柳川高校が何とか踏ん張って1−0のまま試合は前半を折り返した。



 C札幌入りが内定している筑陽学園の桑原選手(背番号7)。その
 才能を随所に披露した。
 後半開始直後にいきなり西野選手が右サイドを突破。続けて左サイドを桑原選手がドリブルで切り裂く。筑陽学園の勢いはまだ続くかに思われた。しかし、筑陽学園の足が止まり、5人でグルグルと回るようなポジションチェンジが影を潜めはじめた。「両ワイドの選手が下がって3ボランチのようになってしまう。運動量も不足している」。吉浦監督が掲げる課題だが、筑陽の攻撃から迫力が消えた。その変化を柳川高校は見逃さない。

 柳川高校は、中盤の中央にいた古賀選手を最前線に上げ3トップの布陣を敷くと、前半は守備に追われていた両WBを高い位置に上げる。そして、縦への長いパスを徹底して前線に放り込む作戦に出た。ハイボールを頭で落とし、そのボールを後方から押し上げた選手が左右に大きく展開し、前の3人がゴールへ一直線に走りこむ。準決勝でも見せた柳川高校の最も得意とする攻撃パターンだ。リズムは柳川高校。1点差ではまだ分からない。

 しかし筑陽も踏ん張りを見せる。柳川の徹底したハイボールを必死になって跳ね返し、奪ったボールを桑原、西野、仁科の3選手に託してカウンターを狙う。巧みな技術を見せる桑原選手。強いフィジカルを生かして前線で強引に突破を仕掛ける西野選手。隙を見つけて1.5列目から飛び出す仁科選手。柳川の反撃の前に攻撃の機会はめっきり減ってしまったが、それでも時折見せるカウンターの切れ味は鋭い。65分を過ぎた辺りから、試合は拮抗した展開をを見せる。

 前へ、前へと突っかける柳川高校。ぐっとこらえて鋭いカウンターで勝負に出る筑陽学園。ともに持てるもの全てを発揮する両チームは一歩も譲る構えを見せない。白熱した好ゲームだ。71分、柳川高校は怪我のいえない古賀選手を下げてFW木原選手を投入。さらに78分にはDFの高山俊樹選手を下げてMF高山裕樹選手を投入して最後の勝負にかける。しかし、高い集中を見せる両チームは相手にゴールを与えず。結局、試合は1−0のままで終了のホイッスルが鳴った。その瞬間、筑陽学園の初の全国大会への出場が決まった。



 最後まであきらめぬ闘志を見せた柳川高校。
「厳しい試合、追加点が奪えなかった。でも1−0のゲームで勝てるというのは力がついているということ」(吉浦監督)。前半を終えた段階では筑陽学園の一方的なペースになりかけていた。だが、決勝戦に進んでくるチームに力の差はない。戦前の予想通り、試合は厳しい戦いへ。後半は柳川高校に押し込まれるシーンも目立った。しかし、桑原、西野の両選手を中心としたカウンターを仕掛け、決して相手のペースに飲み込まれなかった。

 初の全国大会への豊富をたずねると「まずは初戦突破が目標」と控え目な答えが返ってきた。しかし、いまや九州はサッカー王国。中でも、先の全日本ユース選手権で東福岡が3位に入賞したことからも分かるように、福岡県のレベルは高い。初出場とはいえ、十分に上を狙える力はある。東福岡を破ったチームとして、他県のライバルチームからは厳しいマークを受けることになるかもしれないが、上位を目指して戦って欲しい。

「集中力の差があった。もっと立ち上がりから攻めればよかった」(古賀選手・柳川高校)。敗れた柳川高校にとっては先制点が最後まで重くのしかかった。しかし、劣勢の中からバランスを取り戻し、後半は自分たちのサッカーで主導権を握った。予選から勝ち上がってきたチームらしい粘り強さと、前の3人のゴールへ向かう力強い姿勢は逞しさを感じさせた。全国への切符は得られなかったが、選抜メンバーのうち5人が2年生。来年のリベンジを期待したい。

「筑陽の時代にしていきたいと思います」。試合後、吉浦監督は力強く語った。その思いは敗れた池末監督(柳川高校)も同じだろう。しかし、東福岡、東海第五もチャンピオンの座を奪回すべく両校に戦いを挑むだろう。そして、他の高校も虎視眈々と全国への道を狙うはずだ。福岡県高校サッカー界の流れは変わるのか。これからもしのぎを削る激しい戦いは続く。


(柳川高校) (筑陽学園)
GK: 後藤正也 GK: 山下泰隆
DF: 柴田高征 高山俊樹(78分/高山弘樹) 土井英資 酒見真聡 DF: 中野裕祐 青柳雅信 眞戸原和也 阿比留誠
MF: 永渕裕章 内田雅人 大石良太 古賀拓也(71分/木原敬介) MF: 片原潤 桑原剛 松尾賢二 久光直樹(67分/川瀬翔)
FW: 園田将大 伊藤皓太 FW: 西野涼 仁科友歩
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