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 福岡通信 04/09/11 (土) <前へ次へindexへ>
優勝をかけた60分。選手たちは颯爽とピッチに飛び出していく。

 アビスパ福岡U-15、3年連続5度目の王者に。
 第16回福岡県ユース(U-15)サッカー選手権大会

 文/中倉一志
 澄み切った青い空、絨毯のように広がるピッチ。博多の森球技場は、これ以上ないサッカー日和に恵まれていた。5日、この日は福岡県のチャンピオンを決定する試合がダブルヘッダーで行われるという贅沢な1日。9:30にキックオフされる第16回福岡県ユース(U-15)サッカー選手権大会兼高円宮杯第16回全日本ユース(U-15)サッカー選手権福岡県大会では、中体連推薦出場の久留米市立諏訪中学校と、クラブ推薦出場のアビスパ福岡U-15がチャンピオンの座を賭けて戦う。

 諏訪中は1回戦を不戦勝。2回戦では前半を終わって0−2という劣勢からライジングスターズに逆転勝ち。準決勝は粘り強い守備と鋭いカウンター攻撃を武器に八女FCを5−3で下して、ここまでやってきた。「1年間かけてしっかり走りこんできた。最後まで走り抜こうというのが一番大切なところ」(古賀一英監督)。粘り強さが信条の好感の持てるチームだ。アビスパ福岡の激しいプレッシャーをどう潜り抜けるかが、この試合のポイントになる。中学校としては6年ぶり8回目の優勝を目指す。

 対するアビスパ福岡は、県内においては圧倒的な強さを発揮しているチーム。その力は今大会でも健在だ。1回戦で田主丸中学を4−0、2回戦ではFC花鶴を6−0と一蹴。事実上の決勝戦と見られた小倉南FCとの対戦さえも3−0で制して決勝まで進んできた。「全国大会の反省から、(高い位置からプレッシャーをかける)そこをやりましょうということ」。全日本クラブユース(U-15)選手権で勝てなかった(3戦3分でグループリーグ敗退)反省に立って、相手の攻めを封じ込む高い位置からのプレスで試合の主導権を奪うつもりだ。

 前日の晩に降った雨の影響が心配されたが、ピッチ状態は全面良好。福岡県では、今年の中学生年代最後の大会となる決勝戦は万全の形で迎えられた。勝負を決するのは、前後半60分。ここまで鍛えて来た「心・技・体」の全てをぶつけて争う決勝戦は、9:30にキックオフを告げるホイッスルが鳴った。



ゴール前で競り合う両チームの選手たち。
 アビスパ福岡のフォーメーションは、4人のDFラインと2人のボランチ。攻撃的MFがワイドに開き、前線は2トップ。高い位置からプレッシャーをかけてボールを奪い、素早く両サイドに展開してオープン攻撃を仕掛けるというトップチームと変らぬ戦術で戦う。対する諏訪中はダイヤモンド型の中盤を構成する4−4−2。しっかりと守って、大きなサイドチェンジから逆サイドを突破するカウンター攻撃が得意のパターンだ。

 そんな両チームの戦いは、まずアビスパ福岡が主導権を握って進めていく。高い位置からプレッシャーをかけ、積極的に前に出る。そして7分、右サイドを突破した山崎選手のクロスボールがファーサイドへ。そのボールに中薗選手が頭で合わせてゴールネットを揺らした。諏訪中DFはゴール前をふさいでいたが、その僅かな隙を突いての先制ゴールだった。粘り強さを信条とする諏訪中にとっては、早すぎる失点だったかも知れない。

 しかし、諏訪中は頭を下げない。確かにアビスパ福岡の攻撃の前に押され気味だが、要所、要所で堅守を見せて追加点を防ぐ。最終ラインとMFが協力して、ボールを持った選手には必ず2人で対応。粘り強くボールを跳ね返していく。そんな諏訪中に対してアビスパ福岡は攻撃の手を緩めない。一方的にボールを支配して諏訪中を自陣に閉じ込め、相手ボールになっても決して前を向かせない。さすがの諏訪中も守りきれなシーンが生まれる。

 アビスパ福岡の追加点は13分、楔のパスを受けた中薗選手がワンタッチでDFラインの裏へ。そこへ東選手が飛び込んだ。目の前にいるのはGK野田選手がただ1人。これを冷静に決めて2点目をゲットした。諏訪中に惜しまれるのは18分のシーン。ゴール前の混戦から桑野選手がシュートを放つ。この試合で迎えた初めての決定機だった。しかし、これはGK平山選手のファインセーブにあってゴールネットを揺らすことができなかった。



アビスパ福岡のプレッシャーは諏訪中を苦しめた。
 そして後半開始直後の33分、この日、スタジアムを訪れた全ての人を驚かせるゴールがアビスパ福岡に生まれる。決めたのは後半から出場した鈴木選手。ハーフウェイラインを超えたところでボールを受けてルックアップ。諏訪中GK野田選手が前に出ているのを確認すると躊躇せずに左足を振り抜いた。距離にして約40メートル。タイミング、コース、そしてスピードと全てにおいてパーフェクトなゴールだった。さすがはU-15日本代表選手。ブラジル遠征から帰国したばかりの疲れも見せず、いきなりその存在感を示した。

 アビスパ福岡の攻撃は更に続く。34分、そして40分と決定的なシーンを演出した。諏訪中に惜しまれるのは42分のシュートシーン。セットプレーから鎌倉選手が頭で合わせてヘディングシュートを放ったが、僅かにクロスバーを超えていった。しかし、アビスパ福岡からのプレッシャーを受け続けた諏訪中は予想以上に体力を消耗していたのだろう。次第に足が止まりだし、アビスパ福岡の攻撃を跳ね返すだけで精一杯になっていく。

 47分、ゴール前の混戦から、こぼれ球を山崎選手、東選手とつないでアビスパ福岡が4点目をゲット。その2分後、今度はハーフウェイラインを少し超えたところでパスをもらった伊東選手がドリブルを開始。そのままペナルティエリアまで持ち込むと、角度のないところからシュートを決めてリードを広げる。諏訪中は51分、広松選手、国分選手に代えて、古賀選手、渡辺選手を投入。フレッシュな選手を入れることで守備網の再構築を図る。しかし、アビスパ福岡の攻撃は留まることがなかった。

 56分、ドリブルで持ち込んだ東選手からのラストパスを受けた雨夜選手が6点目をゲット。さらに終了間際の58分には、鈴木選手が放った左からのCKに再び雨夜選手が頭で合わせてゴールネットを揺らした。そして試合終了のホイッスル。アビスパ福岡は3年連続5度目の優勝を飾るとともに、10月に沖縄で行われる高円宮杯第16回全日本ユース(U-15)サッカー選手権九州大会への出場権を獲得した。



優勝したアビスパ福岡U-15の選手たち。
 派手さはなかったが、ボールを必死に追いかける姿が印象的だった諏訪中。結果は0−7と、Jリーグの下部組織で育った選手たちとの差を残念ながら埋めることはできなかったが、選手たちの表情に暗さはない。「選手たちは一生懸命、頑張った。大差だったけれど選手たちは楽しかったんじゃないか。どこに出しても恥ずかしくないチーム」(古賀一英監督)。中学校で仲間とともに積み重ねたものを、今大会で全て出し切れたのだろう。

 いま中学校での部活は曲がり角に来ていると言われている。最も大きな問題が指導者不足。諏訪中も例にもれず、古賀監督にサッカー経験はない。「部員は45人。サッカーを好きな子供たちが集まって、自分たちで練習して、自分たちで頑張っている。やる気はありますよ。だから、それを伸ばしていこうと頑張ってます」(同)。スポーツが好きな子供たちと、経験はなくても、その気持ちを大切に育てようと情熱を持って指導する監督。まだまだ中学校の部活も捨てたもんじゃない。

 さて、順当に九州大会に駒を進めたアビスパ福岡。「ずっと成長していけるように、いつも100%の力を出すことが大切。選手たちは全力でやってくれた。そういうところから、何かを身に着けていくし、学んでいくのだと思う。彼らが選手を辞めるまで、そうやっていって欲しい」(有吉和哉監督)。試合の内容については「60%位の出来。大会を通してコンスタントにやれるようにしなければいけない」と厳しい評価だったが、選手たちを見守る温かい目があった。

 全国大会でのリベンジを目指して更にトレーニングを積むアビスパ福岡。残念ながら今年のシーズンを終えた諏訪中。立場は違ってしまったが、それぞれの選手のサッカー人生はまだまだ続く。「一生涯のスポーツとしてサッカーに親しんでもらいたい。サッカーをもっと好きになってくれればと思いながら指導している」(古賀監督)。「サッカーをもっと、もっと好きになってもらいたい」(有吉監督)。進む道は違っても、彼らはいつまでもボールを追い続けることだろう。


(久留米市立諏訪中学校) (アビスパ福岡U-15)
GK: 野田拓志 GK: 平山洸哉
DF: 本田雅之 広松昇平(51分/古賀一也) 前田憲太朗 戸田大介 DF: 山下直人 今井俊幸 伊東慎也(52分/殿納弘崇) 総崎紀孝
MF: 国分翔太(51分/渡辺優希) 鎌倉拓摩 波多江充 島誓也 MF: 一瀬秀平 土田太陸(42分/内藤裕太郎) 山崎文人(47分/森永圭介) 宮本大地(30分/鈴木惇)
FW: 竹中大貴 桑野翔 FW: 中薗亮(52分/雨夜天道) 東威夫
SUB: 木庭健太 緒方聖希 SUB: 笠川永太 原田浩光 中田健斗 諫山翔
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