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 福岡通信 04/11/01 (月) <前へ次へindexへ>
決勝戦は高校生同士。ディフェンディングチャンピオンに豊国学園が
挑む。

 女王の座は渡さない。鳳凰高校が2連覇を飾る。
 第22回九州女子サッカー選手権大会

 文/中倉一志
 今年の九州女子サッカーチャンピオンを決める第22回九州女子サッカー選手権が10月17日から24日、佐賀県総合総合運動場を中心に行われた。昨年までは、各県代表8チームに、九州リーグ前期2位までのチームを加えた10チームで争っていたが、今年から本大会出場枠を拡大。九州リーグに所属する8チーム全てと、各県代表8チームの合計16チームで争われることになった。試合時間は35分ハーフ、一発勝負のトーナメント戦で優勝を争う。

 ところで今大会は、九州リーグに所属する8チームが各県に出向き、それぞれの県代表と戦うことで1回戦を消化する方式を取ったのだが、九州リーグ所属8チームのうち5チームが初戦で敗退。図らずも、女子サッカー界の問題点が浮き彫りにされた。まだまだ十分とは言えない環境、選手数不足に加えて指導者不足という問題も抱える女子サッカー界では、男子のようにピラミッド型の実力構造が出来上がっていないのが現状なのだ。

 そんな中で、少なくない遠征費を負担しながら九州リーグの灯を守り続ける関係者。地域の限られた環境の中で精力的に活動を続けるチーム。同じカテゴリーに対戦相手が殆どいない高校や大学のチーム。それぞれが、すぐには解決できない問題と取り組みながら、地道な活動を続けることで女子サッカーは成り立っている。この大会も、そうした熱意の集まりで運営されているのだと思うと、女子サッカー関係者の情熱に改めて頭が下がる思いだった。

 さて、今大会を勝ち抜いて決勝戦へ進んできたのは、豊国学園高等学校と鳳凰高等学校の高校勢。豊国学園は縦のスピードと攻撃的なサッカーが持ち味のチーム。昨年度の同大会1回戦で敗れた鳳凰高校に雪辱を期す。対する鳳凰高校は高校サッカー界では同じ鹿児島県の神村学園と並ぶ全国の強豪。2年連続2度目の優勝を目指す。昨年の決勝戦の再現となった福岡女学院FCアンクラスとの準々決勝を制し、前評判通りの高い実力を示している。



最前線から激しくボールを追う鳳凰高校。立ち上がりから豊国学園を
圧倒した。
 スピードと強い気持ちを前面に押し出して攻撃的なサッカーをするということでは共通点も多いチーム。しかし、チームの醸し出す雰囲気は実に対照的だ。全員が整列して大きな声を掛け合いながら一糸乱れぬアップを行う鳳凰高校。試合前のミーティングにもたっぷりと時間をかけた。「お互いを信じ合って、役割分担をして、もっと協力していこう。いままで練習してきたのは、この日のため。ここで出さなければいけない。自信を持ってやっていこう」。嶋田監督は選手をピッチに送り出す。

 豊国学園は2人1組になると、三々五々、ピッチに散ってウォーミングアップを始める。その傍らで、選手1人、1人に自ら丁寧にテーピングを施す塩見監督。そして、軽いアップを終えてベンチに選手を集めると塩見監督は諭すように指示を与えた。「タイトルは手のひらに乗っかっている。後は掴むか、それとも離すかの意地の張り合いだ。ポイントは早い判断、コーチング、スピードアップ」。真正面からぶつかる覚悟で選手はピッチに散っていった。そして14:00、第22回目の女王を決める戦いのホイッスルが鳴った。

 戦前の予想は鳳凰高校の優勢。しかし、予想以上に早い時間帯で先制点が生まれた。時間は3分、カウンター気味に攻撃を仕掛けた鳳凰高校は、右サイドからのクロスボールに徳留選手が合わせてゴールを奪った。その迫力は予想を大きく超えていた。徹底して前からボールを追って豊国学園に余裕を与えず、畳み掛けるように嘉数、長濱の両選手がスピードを生かしてサイドを切り裂いていく。そして2トップの田頭選手、徳留選手が鋭くゴール前へ飛び出す。キックオフ直後から豊国学園は押し込まれたままだ。

「相手は勢いのあるチーム。1点取った後に、すぐに点を取りに行って畳み掛けるようにと。2点を先ず取ろうということ」(嶋田監督)。攻撃の手を緩めない鳳凰高校は続く7分、先制点と同じく右サイドからのクロスボールに、徳留選手が今度は頭で合わせてゴールネットを揺らす。あまりにも早い時間帯での2失点に豊国学園には動揺の色が隠せない。そして鳳凰高校は、この後も右サイドの嘉数選手が自由自在にサイドを切り裂いて豊国学園の守備陣を翻弄していった。



ハーフタイムの豊国学園ベンチ
 豊国学園にも狙い目はあった。激しく前へ出てくる鳳凰高校の左サイドの後ろのスペースがそれだ。しかし、長いボールを放り込んでも思うようにボールを追いかけて縦へ出て行けなかった。決して豊国学園の腰が引けてしまったわけではない。それをも上回るスピードと出足の速さで鳳凰高校が豊国学園を力づくでねじ伏せてしまったのだ。スピードとフィジカルで勝る相手が、ボールを休ませることなくシンプルに縦に送り、人数をかけて前に走りこんでくる。これを休まずに繰り返すのだから対戦相手はたまったものではない。

 その迫力はピッチサイドで見ていた私でさえ驚くほどのもの。選手たちの受けるプレッシャーは相当なものだったはずだ。加えて、素早い判断力でボールを動かす鳳凰高校の前に、豊国学園はマークに付くことさえままならない。そして、14分、31分、34分にも追加点を奪った鳳凰高校は前半だけで試合を決めてしまった。「ハートでサッカーをするもんだといつも言っている。ハートのないサッカーじゃつまらない。上手さだけじゃなくて、ハートを感じさせるようなゲームをしたいなと思っていました」(嶋田監督)。まさに、鳳凰高校の理想通りの試合展開になった。

 一方、圧倒的に攻め込まれ、自分たちのサッカーをさせてもらえず、しかも前半だけでゴールを5つも奪われた豊国学園。これで集中が途切れたとしても誰も責められない展開だった。しかし、豊国学園も意地は見せた。後半に入っても攻撃の手を緩めない鳳凰高校に対し、身を挺してボールに喰らいつくシーンが増え、徐々にだが鳳凰高校ゴールへボールを運び始めた。しかし、鳳凰高校の強さは揺るがなかった。43分、豊国学園がメンバー交代を行った直後の隙を突いて抜け目なく6点目を奪うと、51分、54分、59分、さらにロスタイムにもゴールを奪って10−0。圧倒的な強さを見せ付けて大会2連覇を飾った。



身体を張ってボールにアタックする豊国学園の選手たち
 昨年の決勝戦で九州の女王・福岡女学院FCアンクラスを破ったときは、チャレンジャーとして挑み、これしかないという戦い方で勝利を勝ち取った。今年はチャンピオンとしての力を、これでもかとばかりに見せ付けての優勝だった。全員がハートで戦うという伝統を守りつつ、どんな相手でもねじ伏せて勝つという、チャンピオンとしての意地が感じられる試合だった。上手さという点なら対等できるチームもいるかもしれない。しかし、この強さに対抗できるチームは九州にはいない。見事なチームだった。

「春の高校選手権の県予選で、1年生が多く出たんですけれど力が出し切れなくて。そこから、この大会が次の目標だったんで、この大会には何とか照準を合わせようと思っていました。そういう意味では、決勝の中で取り組んだこともやれたと思います」(嶋田監督)。午前中の準決勝では、熊本ユナイテッドSCフローラ相手に不満の残る試合しかできなかった。しかし、それを数時間のうちに修正できるのだから、その底力が窺えるというものだ。

 鳳凰高校の次なる目標は年末に行われる全日本女子サッカー選手権大会。昨年は2回戦でL・リーグの強豪、伊賀フットボールクラブくノ一に1−5で敗れた。2度目になる全国の舞台で再びL・リーグへの挑戦を目指す。「九州のレベルよりもさらに高いですから、どのくらいできるのか常に挑戦です。L・リーグとやって、何とか倒しにかかりたいと思います。ベスト8というところへひとつ進んで行きたいと思います」(嶋田監督)。

 昨年の全国高校選手権での優勝と、全日本女子サッカー選手権の舞台を踏んだことで、チームには、判断の早さ、パススピードの速さ、動きだしの早さが加わった。技術力も昨年のチームより高い。自分たちの力を出し切れば、ベスト8は決して手の届かない目標ではない。夏の全国高校女子サッカー選手権で神村学園が優勝を果たしたが、今度は、鳳凰高校の番。全国の舞台でも素晴らしい成果を挙げることを期待したい。


【1回戦】 福岡大学サッカー部女子 2−2(4PK5) 琉邦クラブ
豊国学園高等学校 4−0 福岡ファーストレディイレブン
北九州FCニューウェーブ北九州ガールズ 1−1(3PK4) スポーツの森・大津マリノス
FC・ALEGRE CAMINHO 1−3 鹿児島鴨池FCアサヒナ
熊本ユナイテッドSCフローラ 9−0 Dream Spread FC宮崎
スカラブジュニア 4−1 中津FCポマト
長崎県立島原商業高等学校 0−12 鳳凰高等学校
大村チェリーズ 0−5 福岡女学院F.C.ANCLAS
【準々決勝】 琉邦クラブ 0−4 豊国学園高等学校
スポーツの森・大津マリノス 0−3 鹿児島鴨池FCアサヒナ
熊本ユナイテッドSCフローラ 4−1 スカラブジュニア
鳳凰高等学校 3−0 福岡女学院F.C.ANCLAS
【準決勝】 豊国学園高等学校 4−1 鹿児島鴨池FCアサヒナ
熊本ユナイテッドSCフローラ 0−3 鳳凰高等学校

【決勝戦】 豊国学園高校0-10鳳凰高校(前0−5、後0−5)
2004年10月24日(日)14:00キックオフ 佐賀県総合運動場 観衆:100人 天候:晴
得点経過/[鳳凰]徳留(3分、7分)、嘉数(14分)、長濱(31分)、徳留(34分)、田頭(43分)、徳留(51分)、嘉数(54分)、田頭(59分)、長濱(69分)
(豊国学園高等学校) (鳳凰高等学校)
GK: 西村沙季 GK: 福田友恵
DF: 田代恵美 熊添有希 山北美穂 上原衣里子(42分/濱田詩織) DF: 磯金みどり 木村紫乃(70分/川瀬愛) 柳村彩乃 高橋悠
MF: 河江裕生 喜代原歩 竹宗梢 藤本圭 MF: 三輪由衣 長濱伊代 筏井りさ(62分/赤崎友美) 嘉数飛鳥(56分/前薗百合香)
FW: 藤島麻美 河江愛生 FW: 田頭陽子 徳留華織子
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