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 福岡通信 04/11/03 (水) <前へ次へindexへ>

 いまこそ「博多の森の熱狂」を!
 2004Jリーグ ディビジョン2 第40節 アビスパ福岡vs.水戸ホーリーホック

 取材・文/中倉一志
2004年10月30日(土)13:04キックオフ 東平尾公園博多の森球技場 観衆:11,470人 天候:晴
試合結果/アビスパ福岡2−0水戸ホーリーホック(前1−0、後1−0)
得点経過/[福岡]有光(15分)、山形(81分)


 取材受付を済ませて報道控室に向かい、顔見知りの記者やカメラマンと軽口を交わす。いつもならキックオフ1時間前には控え室を引き上げて、スタンドを一周するのだが、この日スタンドに上がったのは30分前。一様に明るい表情を見せる取材仲間との会話がついつい弾んでしまったからだ。それもこれも、福岡の調子が上がってきたから。依然として厳しい状況に変わりはないが、今の福岡には何かやってくれそうな気配が漂っている。

 トレーニングの雰囲気も実にいい。程よい緊張感とリラックスした雰囲気が雁の巣を包む。負けたら終わりという悲壮感はなく、昇格という目標に対して必要以上の使命感もない。この2年間で積み重ねてきた自分たちのサッカーを出し切ることだけに集中し、それが出来れば自然と結果が付いてくることを信じる選手たちがいる。「最後まで努力は必ず報われることを信じて戦いたい」。松田監督の言葉はチームの総意でもある。

 水戸戦の結果は2−0の完勝。勝ち星はもちろん、勝利を重ねるごとに試合内容が良くなっているのも頼もしい。直接のきっかけは、エジウソンがチームに馴染み始めたことと、有光の起用だが、影のMVPとも呼べる活躍を見せるホベルトや、ゴール前に高い壁を作る増川の働きも欠かせない。何より、ピッチの上でプレーする選手たちが、それぞれの持ち味を武器に献身的に動き回っていることが大きい。水戸戦で見せた山形の働きは、まさに「For the team」と言えるものだった。

 そしてサポーターの後押しも大きな力になっている。ここまではストレスが溜まることのほうが多かったはず。しかし、彼らはチームとともに悔しさを飲み込み、その悔しさをパワーに変えて、力の限りの応援を続けている。試合前、必ずサポーター席へ顔を出すことにしているが、彼らの表情を見、声援を聞くたびに心の底から熱いものが湧き上がってくる。「一緒にJ1へ」。その気持ちは選手たちを強く後押ししている。



 さて、水戸戦を振り返ってみよう。水戸のフォーメーションは中盤をフラットにした4−4−2。過去の福岡戦とは違って、引いて守らずにコンパクトなゾーンを敷いて前からプレッシャーをかけに来た。「アグレッシブなサッカーをしよう」(前田秀樹監督・水戸)。中盤を自由に動く関。関とバランスを取るようにしてポジションチェンジをする森田。ポストプレーで起点を作る磯山。この3人が攻撃のポイントを作る。

 立ちあがりは互いに中盤を抜け出せない展開が続く。しかし、程なく福岡が試合のペースを握った。ホベルト、米田が中盤でプレスをかけて水戸の自由を奪うと、前線では有光がスペースを狙って動き出す。そして宮崎、アレックスが左サイドで攻撃を作り、右サイドでは山形が攻守にわたってバランスを取る。千代反田・増川を中心にした最終ラインの安定度も高い。水戸のDFは相変わらず手堅いが、ジワジワと試合の主導権を掌握していく。

 そして15分、福岡に先制点が生まれる。水戸のCKが大きくこぼれたところをエジウソンがキープ。素早く宮崎へボールを渡すと、このプレーに反応したアレックスと有光が瞬時にスピードを上げて前線に飛び出していく。そしてボールは宮崎から有光へ。「GKは見えていなかったが、ゴールの位置は確認していたのでファーに思い切り蹴った」(有光)。囲みに来た水戸の選手2人をかわして放ったシュートは、きれいな弧を描いてゴールマウスに吸い込まれた。

 水戸にも反撃のチャンスはあった。26分、木澤の突破から松浦がヘディングシュート。続く29分にはカウンター気味の攻撃から磯山がシュートを放った。どちらも決定的なシーン。手堅く試合を進めようとする福岡の前への勢いが弱くなっていた時間帯。その微妙な変化に乗じる形で攻撃に転じたものだった。しかし、この時間帯を凌いだ福岡は落ち着きを取り戻してゲームをコントロール。前半を1−0で折り返した。



 1点のビハインドを追う水戸は、後半開始から北島に変えて吉田を投入。中盤を永井のワンボランチにして吉田をトップ下に置いた。攻撃の枚数を増やし、自分たちのパターンであるサイドアタックで福岡ゴールを目指す。一方の福岡は川島に代えて宮本を後半の頭から投入。さらに、54分にはエジウソンに代えて太田を入れる。高い位置に太田を張らせることで相手の最終ラインと中盤を寸断し、そのスペースを使って再び攻撃を仕掛けるのが狙いだ。

 52分、59分に水戸が決定的なチャンスを作れば、福岡も52分、53分と決定的なシーンを作り出す。ここからは一進一退の攻防。互いにゴール前まで持ち込むものの得点を奪えない展開が続く。しかし、水戸の頑張りも75分まで。この時間を境に足がピタリと止まり、福岡が試合を完全に支配した。そして81分、左サイドから中へ切れ込んだ山形が右足を一閃。アウトサイドにかかったシュートがゴール右隅に突き刺さった。これで勝負がついた。

 エジウソンのキープ力と有光のスピードを生かして奪った先制点。膠着した時間帯を高い集中力で無失点に抑えた守備陣。水戸に疲れが見えた時間帯でのダメ押し点。2点のリードを奪った後は、高い位置にボールを運んで時間を使って試合を終わらせてしまったゲーム運び。細かい修正点はあるにせよ、自分たちのサッカーをきちんとやり通しての勝利は、チーム状況が確実に良くなっていることを窺わせるものだった。

 3位の山形との勝ち点差は5。10月30日の時点では、消化試合の少ない山形に対して暫定で2差までに迫ってプレッシャーをかけたが、さすがに山形は粘り強かった。しかし、そんなことは最初から承知していること。相手のことなど気にせずに、福岡はただ勝ち続けるだけ。そして我々も、勝つことだけに集中して応援を続ければいいだけのことだ。「僕たちは、これからもやることは変わらない」(千代反田)。自分を信じきれる人間だけが最後に笑う。



 さて、そのためには、既にJ1昇格を決めている強敵川崎Fとの次節の戦いを、まずは乗り越えなくてはならない。数字だけを見れば今シーズンは3連敗中だが、その内容はいずれも紙一重。どの試合も、たった一つのプレーが勝負を分けた。それが川崎の強さとも言えるのだが、福岡にも勝機は十二分にある。「勝てない理由は何もない。我々にとってはトーナメント戦のひとつのようなもの。ただやるだけ」。松田監督は力強く語る。

 ポイントは、ジュニーニョを抑えることに尽きる。「相手のFWに対して1人が必ず行くこと。誰が付くかをはっきりさせて常に2対1の状況を作ること。スピードを上げさせないようにしたい」(松田監督)。もちろん、その対策は着々と準備されている。後は、冷静沈着に試合を運び、チャンスに勇気を持って仕掛けるだけだ。

 チャンスはある。ピンチもある。いずれにせよ、試合終了のホイッスルを聞くまで、一瞬たりとも気が抜けない戦いになることは間違いない。選手たちは全身全霊をかけて戦うはず。そして我々も、フロント、サポーター、メディアの力を結集してチームを後押ししたい。幸い、残されたJ1昇格の可能性に賭けて挑戦を続ける福岡に姿に、地元メディアの注目度も高まってきた。追い風は吹いている。あらゆるものを利用してチームに力を送りたい。

 選手とスタンド、そしてメディアをも巻き込んで強く勝ちたいという気持ちを持ったチームが勝利を得る。サッカーとはそういうものだ。「博多の森の熱狂」を再び呼び起こすのは、川崎戦をおいて他にない。「いまは何でも起こせるような気がする。選手も同じような気持ちで戦ってくれていると思っている」(松田監督)。監督と選手の思いに、サポーターの思いを重ねて川崎戦を乗り越えたい。その先にJ1昇格のゴールが待っている。



※記者会見の模様と選手のコメントはJ's GOALでご覧になれます。
松田監督(アビスパ福岡)記者会見 http://www.jsgoal.jp/club/2004-10/00013006.html
前田秀樹監督(水戸ホーリーホック)記者会見 http://www.jsgoal.jp/club/2004-10/00013007.html
試合後の選手コメント http://www.jsgoal.jp/club/2004-10/00013009.html
 
 
 
(アビスパ福岡) (水戸ホーリーホック)
GK: 水谷雄一 GK: 武田博行
DF: 川島眞也(45分/宮本亨) 千代反田充 増川隆洋 アレックス DF: 木澤正徳(75分/伊藤仁) 柴小屋雄一 吉本岳史
MF: 山形恭平 ホベルト 米田兼一郎 宮崎光平 MF: 関隆倫 永井俊太 北島義生(45分/吉田賢太郎) 森田真吾 磯崎敬太
FW: エジウソン(54分/太田恵介) 有光亮太(70分/松下裕樹) FW: 磯山和司 松浦淳
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