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 福岡通信 05/03/01 (火) <前へ次へindexへ>

 準備は整ったか
 

 取材・文/中倉一志
「空いているポジションを誰が埋めるかという作業をしてきたんですけれど、大体戦力は整ってきたんじゃないかと思います。新しいメンバーとのコンビネーションが良く取れてきた、去年のベースを基に戦う戦力はある程度整ってきたかなと言うことです。あとは膠着したゲームで、どうやって点を取って、間違いなく勝ち点3を取っていくということが鍵になると思います。その辺りがクリアできてくれば、いいリーグ戦の戦い方ができるんじゃないかなと思います」(松田監督)

 キャンプ中から厳しい表情を崩さなかった松田監督が、久しぶりに温和な表情で答えた。それは、ロッソ熊本との対戦を5−0で完勝したという単純な理由から来るものではない。自分たちのベースとする組織サッカーが機能したこと。突出した選手がいない中で全員でゴールを奪うという形ができたこと。心配されていた空いているポジションが埋まったこと。全員が自分の持ち味を発揮したこと。そして何より、試合内容をゴールという結果に表わせたこと。それが手応えを感じることにつながったのだろう。

 将来のJリーグ入りを目指して設立されたロッソ熊本は、決して簡単な相手ではなかった。Jリーグ経験者を多く揃え、Jリーグのチームと積極的にトレーニングマッチを行うことでチームの完成度を高めている。シーズン開幕前のこの時期では、思い切りぶつかることのできる下位チームの方がのびのびと試合をすることは良くあること。そんな相手との試合では、少しの隙も見せず、そして相手が緩んだ瞬間を見逃さずに攻めきってしまうことが求められていた。

 それは、まさに今シーズンの福岡が求められているものだった。得点差ではなく、そういう形を90分間貫き通せるかが、この試合のポイントだった。そして、それを実践して見せた。最初のチャンスを有光が確実にものにすると、あとは試合を完全にコントロール。ホベルトが交代してからは中盤の守備に乱れが生じたが、相手にシュートチャンスを与えず、さらには駄目押し点を奪って突き放した。内容も結果も狙い通りの試合だった。



 さて、試合を振り返ってみよう。福岡はGKに水谷。最終ラインは右に川島、左にアレックス。CBには千代反田と岡山が並ぶ。ボランチはホベルトと松下。両ワイドには右に中村、左に宮崎が構える。2トップは林と有光だ。まだ最終確定ではないとはいえ、おそらく、これが開幕スタメンと考えてよさそうだ。対するロッソ熊本はダブルボランチを置く3−5−1。最終ラインはゾーンで守り、左WBに起用された濱田が高い位置から攻撃参加を試みる。

 当然のように福岡が立ち上がりから主導権を握る。ところが最初の決定機はロッソ熊本。時間は4分、前線へのフィードを鎌田が頭で落としたところに濱田。ペナルティエリア内でフリーでシュートを放つ。これは鋭く飛び出した水谷がファインセーブで逃れたが、福岡がひやりとしたシーンだった。しかし、この後は福岡のペース。ロッソ熊本を自陣内に押し込んで、ボールをシンプルに動かしながら守備の綻びを探す。

 そして13分、福岡が先制点を奪う。ボールを奪った岡山から左サイドの宮崎へ。スピードを生かしてサイドを駆け上がった宮崎がGKとDFラインの間に絶妙なクロスを折り返す。そのスペースに飛び込んできたのは有光。左足をダイレクトで合わせると、次の瞬間、ゴールネットが揺れた。たった2本のパスをつないで奪ったゴール。攻守の切り替えを早くして、ダイレクトプレーでシンプルにサイドを崩すという狙い通りの形から生まれたゴールだった。

 追加点は26分。このゴールも宮崎のサイドの突破から生まれた。深く切り込んでファーサイドへクロスを送ると、林がヘディングでニアに折り返し、最後はホベルトが飛び込んでゴールマウスに押し込んだ。ファインゴールとなった3点目は中村から。「アリさんがいい動き出しをしてくれたんで、キーパーが出られないような止まるボールを出した」(中村)。中央、やや右寄りから縦に出したスルーパスは、計ったように左から斜めに走り込んできた有光の足元に。有光は右足で流し込むだけで良かった。



 後半に入っても福岡は主導権を離さない。そして4点目が林のハードワークから生まれる。鋭い出足で相手ボールをパスカットした宮本が縦パスを有光へ送る。相手DFと1対1でボールを奪い合う有光。それを見た林がDFを挟み込んで強引にボールを奪う。そして最後はバランスを崩しながらもゴールを奪った。そして5点目は中村のアグレッシブに姿勢から。ゴール前のルーズボールに猛然と突っ込んでDFと交錯。その気持ちがPKの判定を呼ぶ。これを喜名が落ち着いて決めた。

 しかし、ロッソ熊本はここから反撃を開始する。後半途中から4−4−2に変えてリズムを刻みだしたロッソ熊本は、ホベルトが退いたことも手伝って中盤を突破して福岡の最終ラインまで迫るようになっていく。しかし、福岡は押し込まれながらもシュートチャンスを与えない。むしろ、カウンターから何度も決定的なチャンスを掴んだ。そして、試合は5−0のまま終了。福岡は開幕前の最後のトレーニングマッチを最高の形で終えた。

「格下のチームに、しっかりと点を取って、そして無失点で終えられた。最高の形で開幕を迎えられる。自然体で試合に臨んで、絶対に点を取ってやろうと思っていたので、自分の2得点にはほっとしている。開幕に向けて、気持ち良く臨める」(有光亮太)。キャンプ中のトレーニングマッチでは無失点だった有光も、これで浦和戦に続いて2試合連続の3得点。スペースへ飛び出す鋭い動きとともに、得点感覚に磨きがかかってきた。

 試合を振り返った松田監督は、「ある程度、自分たちのサッカーができたことが良かった。キャンプ中の怪我人も戻ってきて、開幕に向けていい準備ができた。今の戦力で言えば、今日の試合のようにみんなで取っていくしかない。取ったボールを早くカウンターに結び付けて点になったというところが良かった」と語った。この結果だけを見て決定力不足解消とは言い切るわけにはいかないが、得点の形というものが出てきたことは大きな収穫だった。



「一発目の決定力があったから、こういう試合になったと言える。こういう風になれば問題はない。点をとられない形で試合を進められるだろうし。ただし、攻めていても中々点が取れないときに、どうやって、したたかに1点を取っていくかが課題。有光が彼らしい点を取ってくれたが、そこを抑えられたときに誰が取れるかというところ」。リーグ戦でのポイントを聞かれた松田監督は答えた。そのためには「厳しい競争」がキーワード。互いに刺激しあう中で、個々の選手がひとつ上のレベルへ抜け出すことが求められている。

 そうした環境作りも着々と行われている。開幕先発と見られた、この日の先発メンバーも、キャンプ初日から先発FWとして起用され続け、この日も2得点を挙げた有光も、ほんの少しでも気を許せば先発の座がないことを自覚している。

「今シーズンの目標はレギュラー定着。コンスタントに点を取りたい」(有光)
「開幕スタメンの手応えとか、そういう余裕な気持ちを持っていたら駄目。開幕の一戦を取ってやるという気持ちで臨んでいる」(中村)
「去年の1年間を取り返そうという気持ちがあるからやっていられる。(先発争いは)気は抜けないです。福さん(福嶋)も調子がいいのでわかりません」(林)

 こういう気持ちを、1年間持ち続けることができれば、おのずと決定力不足という問題も解決するだろう。

 開幕までに残された期間は4日間。福岡はアウェイの九州ダービーで開幕を迎える。「鳥栖は大幅にメンバーが入れ替わっていて、J2の中でも要注意のチームのひとつ。九州ダービーということもあって彼らの意気込みは強いだろう。しかし、我々としても絶対に負けられない試合。スタートダッシュを決めるためにも重要な試合になる。ある意味では、第1節だけを考えて全力で勝ちに行く」(松田監督)。いよいよ、福岡の勝負をかけた2005年シーズンが始まる。
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