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 福岡通信 05/05/06 (金) <前へ次へindexへ>

 ほんの少しの勇気
 

 文/中倉一志
 調子が良いような、悪いような、ハッキリしない状況がキャンプ中から続いていた福岡は、松田体制3年目ということもあって大崩れすることはなく、勝ちきれないまでも負けない戦いをしながらシーズンの序盤を過ごしてきた。第8節を終えての成績は4勝4分の勝ち点16。ここまではJ1昇格候補として、それなりの勝ち点を稼いできた。いずれの試合も内容は納得のいかないものだったが、それでも数字を残せたのはベースがしっかりしてきた証拠と言えた。

 長いシーズンではチーム状況にも波があるもので、悪いときにしっかりと勝ち点を稼いでおくことがJ1昇格には欠かせない。過去の昇格チームを見ても、勝ち点を稼いでいるうちにチームに勢いがつき、その勢いがやがては本当の実力になり、そして昇格を果たした例は少なくない。おそらく、福岡も同じ道を歩むのだろう。草津戦を終えた後、そう感じていた。「この流れをしっかり掴むことが大切」と松田監督も語っていた。

 ところが第9節、福岡の勢いはマイナスの方向に大きく揺れる。札幌ドームの独特の雰囲気に戸惑ったという側面もあるのだろうが、立ち上がりから不安定な戦いを見せる福岡は、主導権を握っているように見えて、なぜか相手にチャンスを献上してしまうというハッキリしないサッカーに終始。先制点を奪ったものの、攻めるのか、守るのか、ハッキリしないままに時間を過ごし、気がつけば、いつの間にやら一方的な札幌のペース。そしてロスタイムに追いつかれた。

 本来ならば、チームの生命線であるディシプリンを発揮して試合をコントロールしなければいけなかった。ロスタイムで追いつかれたことよりも、2点目を取りに行けなかったこと、相手の出足を封じることなく受けてしまったことが問題だった。そして、チームの約束事も、連携もバラバラだった。「これまでで最低の試合」と松田監督は振り返ったが、福岡らしさがほんの少しも感じられない試合。引き分けたことよりも、こちらのほうが重要な問題だった。



 チームのよりどころとも言える組織プレーを失った福岡は、この試合で流れを掴みそこなった。続く京都戦ではファールも辞さないアグレッシブな守備で、アレモン、パウリーニョの強力2トップを抑えにかかったが、技術の面でも、集中力という意味でも雑なプレーが散見され決定的なシーンを許すことも。宮本の激しいチャージに苛ついたパウリーニョが退場処分になって数的有利な状況を得たが、今度は決定力不足を露呈して勝ちきれなかった。

 そして迎えた甲府戦。天敵バレーを岡山と宮本がチャレンジ&カバーで封じ込め、前に出てくる甲府を力で相手陣内に追いやった。立ち上がりは上々、福岡のペースと思われた。ところが一瞬の隙を突かれて水越にサイド深くまで侵入され、2人で対応したにもかかわらず突破を許す。何とかファールで止めたものの、この一瞬の隙が命取りになる。藤田の放ったFKからのこぼれ球を水越に蹴りこまれて先制を許したのだ。これが甲府のファーストシュートだった。

 時間はまだ19分。慌てる必要のない失点だ。ところが、悪い流れが続いていることが影響したのだろう、ここから福岡は明らかにトーンダウンする。こうなってしまえば甲府の思う壺。守備の意識を高めながら、リスクを負って攻め込むことも、必要以上に引くこともなく、オーソドックスにボールをつないで時間を使えばいいだけだ。守りきられたというよりも、完全に試合をコントロールされてしまった福岡は、太田、釘ア、古賀と投入したが勝機を見つけることなく敗れた。

 なにやら雲行きが怪しくなってきた。順位こそ2位につけているが、首位の京都との勝ち点差は9。3位の山形、4位の湘南との勝ち点差は1しかなく、以下、勝ち点2差で甲府と鳥栖が続く。福岡の勝ち点は昨年の同時期よりも1つ少ない。昨年の悔しさを繰り返さないためには混戦に飲み込まれることだけは避けなければならず、1日も早く、この状況を脱しなければいけない。そのためには、徳島戦では勝ち点3を取ること以外は許されない。



 いったい、何がどうなってこのような状況を招いたのだろうか。そんな思いが頭の中から離れない。確かに実力伯仲のJ2は決して簡単なリーグではない。どんな試合も紙一重の厳しい試合になることは承知しているつもりだ。それでも「なぜだ」の思いは消えない。結果にこだわることを宣言してスタートした2005年シーズン。移籍した選手の穴も埋まり、決定力不足解消のためグラウシオも加入した。それだけの力は間違いなくあるはずだからだ。

 失点は昨年度(第10節終了時点)の10から6に激減。数字の上では際立っており、これが負けない福岡の要因になっている。しかし数字ほど安定感が感じられないのは、何の前触れもなくピンチを招くことがあるからだ。「攻守の切り替えだとか、アラートさという面でレベルを上げていかないと、きちんと勝てるチームにならない」。京都戦後の松田監督の言葉だが、90分間集中を切らさず、全員が最後までディシプリンを守って戦うことを、もう一度徹底する必要がある。

 一方、得点の方は昨年から5つ減って13得点。数字の上でも決定力不足が深刻な状況にあることがわかる。林の怪我、有光の不振、それに代わるFWが現れないこと等、様々な原因が複合的に絡み合った結果と言えるが、それを差し引いても攻撃パターンが単調すぎる。得点できなかった試合は、同じパターン、同じテンポで攻め続け、まるで計ったようにはじき返されている。太田の高さを生かすにも、グラウシオの突破力を生かすためにも、シンプルにピッチを広く使った攻撃が必要だろう。

 今の福岡は、自分たちの戦いに自信がないように見える。それが自分たちのサッカーをピッチの上で表現出来ないことにつながっているように見える。とにかく大事なことは、自分たちが普段やっているサッカーをやることだ。ボランチを中心にして攻守を切り替え、少ないタッチのパスを中盤でシンプルにつなぎ、サイドチェンジを織り交ぜてサイドからワイドに攻め上がる。全員が自分の役割を責任を持って果たし、他人任せにしないこと。そして、目の前の一戦にだけ集中して戦うことだ。



 どれもそんなに難しいことじゃない。雁の巣練習場で毎日取り組んでいることだ。それに、自分たちのサッカーを、自分たちの力を表現すれば、どんな相手も怖くはない。それだけの力は過去2年間で身につけたはず。そして、それを出せなかったとき、どんなに悔しい結果が待っているのかも去年経験したはずだ。悔しさが残っているなら、J1の舞台で戦うことを夢見るのなら、ほんの少しの勇気を出して、自分たちのサッカーをぶつけよう。今は苦しい時期かもしれないが、必ず結果はついてくる。

 結局のところ、プロの世界でお互いの差をつけるのは、強い気持ち以外にはない。ボールを扱う技術、戦術の理解度等々、サッカーをやる上で必要な技術や知識は高いレベルで拮抗しており、そこに差を見出すのは難しい。そうした実力をどんな状況においても発揮しきれる力を持ち合わせているかどうか。それだけが互いの立場に差をつける。リーグ戦とは、そうした力を比べているようなもの。少しでも相手に気持ちで劣れば、その立場はたちどころに逆転してしまう。

 今シーズンはまだ10試合を終えたばかり。今の時点で先の話をするのは早すぎるかもしれない。しかし、1シーズンの結果はひとつ、ひとつの積み重ね。いま頑張りきらなければ最後に笑うことは不可能だ。正直に言ってチーム状況は良くない。昨シーズンの終盤に見せたような一体感も、集中力の高さも、そして勝利に対する強い気持ちも伝わってこない。しかし、ここで下を向いたら全てが終わる。勇気を持って前を向こう。

 明日は第1クール最終戦の徳島戦。福岡からはバス2台を仕立ててサポーターが乗り込む。明日の試合が、今シーズンの結果を左右しかねない大事な試合だということをサポーターは理解している。おそらく、今までの試合以上に気持ちを込めた声援を送るはずだ。そんな声援を力に変えて、選手たちには力の限りボールにぶつかって欲しい。そして、自分たちのサッカーを恐れることなく表現して欲しい。いま必要なのは、ほんの少しの勇気。明日の試合はそれを見せてもらいたい。
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