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 福岡通信 05/09/04 (日) <前へ次へindexへ>

 大きな勝ち点3
 2005Jリーグ ディビジョン2 アビスパ福岡vs.ザスパ草津

 取材・文/中倉一志
2005年8月31日(水)19:00キックオフ 東平尾公園博多の森球技場 観衆:9,409人 天候:晴
試合結果/アビスパ福岡1−0ザスパ草津(前0−0、後1−0)
得点経過/[福岡]千代反田(81分)


取材・文/中倉一志

「今日の勝ち点は本当に大きい」。チームスタッフ、選手、報道陣を含めたチーム関係者、それぞれが口々にそう語った。チームのベースとなるディシプリンに欠け、攻守にわたって組織的なサッカーが出来ず、勝利に対する強い姿勢も見せることが出来なかった。最終的には草津の決め手のなさに助けられたが、中盤ではいいようにボールを回されるシーンもあり、敗戦の危険性もあった。それでも手に入れた勝ち点3。福岡にとってはこれ以上ない結果だった。

 勝利の立役者は千代反田と長野のCBの2人。前半は守備が機能しない中盤をカバーしてゴール前での決定機を許さず、後半は前がかりになって攻めるチームの最後尾に残って、たった2人で守り通した。「厳しい時間帯がかなり続いたが、僕たちがいちばん我慢強くやらなければいけない」とは長野。「この前の試合では、結果的に2人のCB欠けたことが大きかったと思うので、何とか取り返したいという気持ちがあった」という千代反田は、守備の頑張りに加えて試合を決める決勝ゴールまで奪った。

 厳しい試合でも最終的には勝ち点3を取る逞しさが出てきたと見るか、大事な試合にも拘わらず気持ちを表現できなかったと見るか、評価の難しい試合だった。前節の徳島戦でああいう敗戦をした後だけに、本来なら自分たちのサッカーを表現し、攻守にわたって積極的にボールに働きかけなければいけなかった試合。そういう意味では、前半の戦い方には不満が残る。連戦の疲れもあるのだろうが、だからこそ積極的にプレーしてほしかった。

 しかし、既に終盤にさしかかろうという時期では、何よりも勝ち点3という結果が最優先。結果がついてこなければ内容など何の慰めにもならない。また、勝ち点3が何にもましてチームに勢いを与えてくれる薬であることも疑いのないところだ。大切なことは、この結果をチームの勢いに変えて次の試合で勝ち点3をもぎ取ること。鳥栖とのダービーマッチに勝利を収めてこそ、この試合の結果が大きな意味を持つものになる。



 この日の草津のフォーメーションは4−4−2。最終ラインには右から依田、小川、斉藤、チカが並ぶ。狙いは福岡の両サイドの攻撃に備えることと、ボールを奪った際に両ワイドの選手を高い位置から飛び出させることだ。迎え撃つ福岡は、出場停止の古賀の代わりに宮崎を左サイドにシフト。右サイドには田中を置いて、2トップはグラウシオと有光がコンビを組む。5試合ぶりの先発起用となった有光のスピードとスペースへの飛び出しに期待がかかる。

「ポゼッションされる時間帯が多くなるが、辛抱して、しっかり組織を作って守備をしていく中で必ずチャンスが来る」(手塚聡監督・草津)。草津は福岡ボールになると守備陣系をコンパクトに整えて素早く帰陣、福岡が前に出てくるのを待ち受ける。左サイドではチカが田中を、右サイドは酒井と依田が宮崎、アレックスを警戒し、CBの2人はグラウシオと有光をマンマークでカバーする。そのバランスは悪くない。

 立ち上がりから身体が重く中盤が活性化しない福岡は、そんな草津の前に攻め手が見つけられない。田中をケアして中途半端な位置にいるチカの後方のスペースを狙うものの、飛び出しが遅れたり、抜け出したところを潰されたりと活路が見出せないままに試合が進む。そんな閉塞感がそうさせたのか、2トップと両ワイド、更には山形までもが前線の高い位置に横一線で並んでしまう。これでは中盤でビルドアップすることはかなわない。

 そして、バランスを崩した中盤は守備面でも問題を抱えた。相手にプレッシャーをかけられない中盤のスペースを草津にいいように使われて、いとも簡単にゴール前までボールを運ばれてしまう。千代反田、長野の頑張りで決定的なチャンスは与えないものの、嫌な雰囲気がスタジアムを包む。結果的に草津のシュートが1本に終わったのは、草津にフィニィシュの部分で問題があったから。攻守にわたっていいところを見せられないままに前半を終了した。



 後半に入ると、松田監督は有光に代えてFWに岡山を投入。田中と2トップを組ませ、右サイドに宮崎を、左サイドに山形を配置してグラウシオをトップ下へ。そしてボランチをホベルトの1枚にした。これがチームの活性化につながる。高さを生かして前線で起点を作る岡山と、最前線に留まってプレーするグラウシオに草津の最終ラインが引っ張られ、出来たスペースに田中が、両サイドハーフが、そして中村北斗、アレックスまでもが飛び込んでいく。縦の関係がスムーズになった福岡はスピードに乗って草津ゴールに迫る。

 53分にはグラウシオが、58分には山形が決定的なシュートを放つ。そして67分にはアレックスのシュートが左ポストを叩いた。しかし、押し切れないのがこの日の福岡。ここから草津の反撃を受けることになる。草津は前がかりになる福岡に対してカウンターで応酬。大きく広がるスペースで山口が起点になり、そこからガラ空きのサイドへ展開してチャンスを作る。福岡は2人のCBだけでゴール前を守り抜くが、試合は打ち合いの様相を呈していく。

 しかし、キックオフ時点で気温29.8度、湿度68%の悪条件は確実に両チームの選手から体力を奪っていく。互いに多くのことは望めない。試合は1点勝負に。そして81分、福岡が貴重なゴールを挙げる。決めたのは千代反田だ。「いいボールが来たので思い切り頭をぶつけた」(千代反田)。右からCKのチャンスにゴール前に飛び込むと、ドンピシャリのタイミングで頭を合わせた。次の瞬間、大きく揺れるゴールネット。大きくガッツポーズする千代反田に博多の森の歓声が降り注ぐ。

 ところが、どうしてもバランスを整えられない福岡は、最後の粘りを見せる草津の前にジリジリとラインを下げる。今シーズンの前半戦に何度も見た悪いパターン。今シーズン、試合終了間際に喫したいくつものゴールシーンが頭をよぎる。だが、ここでグラウシオがチームを救う。ルーズボールを奪って強引にドリブルで相手陣内へ持ち出した。ゴールには結びつかなかったが、このプレーがチームに落ち着きをもたらした。そして試合終了のホイッスル。福岡は厳しい試合で勝ち点3をもぎ取った。



 これで福岡は第3クールに入ってから4勝2分1敗。ここまでは順調に勝ち星を重ねてきた。しかし、第30節に行われる鳥栖とのダービーマッチをはじめ、カズの加入でチームに変化が起きている横浜FC、まだ福岡が勝っていない札幌、甲府と難敵との対戦が控えており、まだまだ安心は出来ない。J1昇格を手繰り寄せるためには、この4試合をしっかりと勝ち越して終えたいところ。負けられない、厳しい戦いはまだまだ続く。

 ライバル同士の直接対決の結果は今まで以上に重みを増し、試合を消化するごとにプレッシャーが大きくなっていく中で、昇格争いから脱落したチームは何のプレッシャーもなくぶつかってくる。むしろ、今まで以上に厳しい環境の中で戦いを強いられることになる。そういう状況で最後にモノを言うのは、いつでも、どんな状況に追い込まれても、自分たちの力を発揮することの出来る精神力の強さ。草津戦のようなメンタリティでは足元をすくわれる。

 そういう意味では、鳥栖とのダービーマッチで、どのような試合が出来るかがひとつの鍵。意地と意地がぶつかり合う試合では、互いに思うようなプレーが出来る機会は少ない。我慢比べのような時間も増えるかもしれない。それでもなお、勝利に対する欲求を相手より強く持ち続けられるか、そして自分たちのサッカーを表現することが出来るかで勝敗が決まる。苦しい状況の中で発揮できる力が本当の自分たちの力。過去2年間で積み重ねてきたものが本物であることを証明して欲しい。

 そして、チームに対して最後の後押しとなるのが、チームに関る全ての人たちの力だ。J1昇格は決してチームだけで成し遂げられるものではない。フロント、球団職員、サポーター、そしてメディア等々、福岡に関る全ての人たちの力の総和がアビスパ福岡というクラブの力。結局のところ、福岡に住む我々の意思が試されているのだ。残る試合は15。決して多いとはいえない残り試合に全員の力を合わせて戦いたい。


(アビスパ福岡) (ザスパ草津)
GK: 水谷雄一 GK: 岩丸史也
DF: 中村北斗 長野聡 千代反田充 アレックス DF: 小川雅己 齋藤竜 チカ(89分/籾谷真弘)
MF: 田中佑昌(82分/喜名哲裕) ホベルト 山形恭平(75分/大塚和征) 宮崎光平 MF: 酒井良(57分/山崎渡) 依田光正 山口貴之 鳥居塚伸人 佐田聡太郎
FW: 有光亮太(45分/岡山一成) グラウシオ FW: 佐藤正美 吉本淳(67分/樹森大介)
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