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 福岡通信 05/09/30 (金) <前へ次へindexへ>

 最後の11試合、本当の勝負が始まる
 

 取材・文/中倉一志
 こんなに激しくぶつかり合った試合は久しぶりだったのではないか。福岡vs.甲府の試合を見終わった直後の率直な感想だ。ゲームをコントロールするのではなく、互いに攻めに出ることで相手をねじ伏せにいった試合展開は見応え十分。両チームの昇格にかける強い気持ちが表われた1戦だった。攻撃サッカーを標榜する甲府が攻めに出るのは当然の流れ。そして打ち合いを挑んだ福岡の姿勢は、自分たちがJ2優勝とJ1昇格への挑戦者であるこという気持ちを改めて示すものだった。

 攻めに出ることで叩き潰す。その気持ちは立ち上がりから表われていた。激しく出てくる甲府に対し、自らも前に出ることで福岡は主導権争いを挑み、10分を過ぎた辺りでペースを掴んだ。そして29分、流れた古賀のシュートに追いついた山形恭平が難しい角度からゴールを奪う。しかし、その4分後、CKから甲府に同点ゴールを浴びると、そこからは甲府ペースに。さすがは甲府。簡単に倒せる相手ではない。

 後半も、そのまま甲府のペース。しかし、福岡は山形に代えて岡山を投入。攻めに出ることで主導権を奪い返した。84分、リスクを背負って前に出たところでボールを奪われて逆転ゴールを喫したが、その1分後には岡山の高さを生かしたプレーからグラウシオが同点ゴールをゲット。その後も激しく攻めあう両チームは、互いに決勝ゴールのチャンスを作ったが、結局ゴールネットは揺れず。激しい試合は勝ち点1を分け合う結果となった。

 力を出し切ったからこそ2−2という結果は福岡にとっては悔しいものだった。首位の京都を追いかけるという観点で見れば、勝ち点2を失ったことは痛い。しかし、ノルマであるJ1昇格ということで言えば、2位以下との差をひとつ広げたのは悪い結果ではない。そういう意味では「最低限の結果は残せた」(松田監督)と言える。何があるか分からないのがサッカー。結果を受け止めて、次の試合に最善を尽くすことこそが大切だ。



 試合後、いつものように取材を終えて深夜に帰宅。レポートの草稿のために調べものをしていると、様々な思いが頭に浮かんだ。入れ替え戦での悔しさを抱きながら始動した1月。期待と不安の中でスタートした宮崎キャンプ。開幕の九州ダービーを勝ちきれず、その後も欲求不満の試合が続いた第1クール。16節から1分3敗と一時はどん底にまで落ちた第2クール。そして、上昇気流に乗った第3クール。時には文句を言い、時には勝利に喜びながら、ようやく第4クールにたどり着いた。

 シーズン前に思い描いたような圧倒的に勝ち続けるチームではなかった。去年までと同じようにメンタル面での課題を持つチームだった。前半戦をなんとか2位で折り返したときも、第3クールに限ればJ2トップの勝ち点を稼いでも、少しも安堵感を感じることはなかった。それは、紙一重の試合が多かったからなのかもしれない。けれど、33試合のトータル成績で3位の山形に勝ち点8差をつけたのは、いかにも松田サッカーらしい。

 しかし、そんな状況にも不思議なくらい冷静な自分がいることに気づく。もちろん、記者席で大声を出しては観客から睨まれ、ゴールの瞬間にガッツポーズを決め、チャンスを逃したときに机を叩く癖は変わってはいない。けれども、自分でも信じられないほど現状を冷静に見ている自分がいる。まだ何も始まっていないし、何も終わっていない。手に入れたものも何もないし、手に入るのかさえも分からない。本当の勝負が始まるのはここからと信じる自分がいる。

 ここまで福岡を追いかけてきたのも、昨年からアウェイ取材を続けているのも、自分の思いをレポートに書き綴ってきたのも、そして、時には失礼な質問を選手や監督にぶつけてきたのも、全てはこれから始まる第4クールのための準備だったような気さえする。不本意ながら過ごしてきたJ2での4シーズン。長かったような、短かったような、そんな歳月に感じたことや、蓄積してきたことは、これからの11試合のためにあるのだと思う。



 これまでの戦いや、ライバルチームの様子から第4クールの展開を予想することは可能だろう。残り試合と勝ち点差を考慮すれば、優勝ライン、2位以内を確保するための勝ち点も、ある程度は予想も出来る。しかし、そんな星勘定は意味のないこと。何があるのか分からないのがサッカー。そして、それぞれのチームの間には、それが現実に起こりうる程度の差しかない。ここまでの数字は参考にはなるが、これからを保障するものではない。

 確かに、数字の上では福岡の優位は間違いない。しかし、それは絶対的なものではない。実際、昨年の福岡は勝ち点8差をつけられていた山形に6試合で追いつき、残り2試合で勝ち点5の差をつけた。怪我人や累積警告で出場できない選手も出てくる。4巡目の戦いは互いに特徴を知り尽くした上での戦いになる。いつものようにはいかない。だからこそ、第4クールの戦いは新しい戦いのスタート。そして、その11試合が全てを決める。

 大げさな言い方かもしれないが、これからの11試合は、間違いなく自分のサッカー人生の中で最も印象的な11試合になることだろう。結果がどうなるかは神のみぞ知るところ。そんなものに右往左往されずに、1試合、1試合の戦いぶりを一瞬たりとも見逃さずに見届けたいと思う。そして記者席から、ピッチの上を走り回る選手たちに思いを送りたい。そして、それぞれの試合の意味を稚拙ながらも伝えたいと思う。それが、自分の戦い方だと思うからだ。

 そもそも、自分が全44試合を取材しようと思い立ったのは、2001年シーズンを終えたときに強く感じた悔いを晴らしたいと思ったから。ピッチの外で試合を見ているだけの自分に、たいしたことが出来ないことは分かっている。しかし、それでも何か自分なりに出来ることがあるのではないかと思ったからだ。その答を見つけるために福岡を追いかけて毎日を過ごしてきたが、これから始まる11試合で答を見つけたい。



 第4クールは、チームにとっても、選手にとっても、そしてサポーターにとっても自分との戦い。相手との距離を測りながら戦うのではなく、自分たちが求めるものに向かって戦うチームが最も力を発揮する。少しの油断もなく、最後までボールを追い、声援を送り、自分たちを信じ抜いたチームが勝利を手にする。いまさら違う戦いは出来ない。長所もあれば、短所もあるが、自分たちの信じるスタイルを貫くことが勝利への近道だ。

 苦しくなったら、悔しい思いをし続けた過去のシーズンを思い出せばいい。くじけそうになったら、何を求めて戦ってきたのかを振り返ればいい。迷ったら、なぜピッチの上に立っているのか、なぜスタジアムに足を運ぶのか、自分の原点に戻ればいい。不安になったら思い切り走り、思い切り声を上げればいい。そうすれば、自分たちの譲れない思いが見えてくるはずだ。そして、その思いの強さがチームを勝利に導く。

 いずれにせよ、今まで以上に激しく、厳しい戦いが始まる。そんな戦いを今まで以上に心をひとつにして戦いたい。それぞれの人が、それぞれに積み重ねてきた思いをひとつにして、選手たちの背中を後押ししたい。そして、満員の博多の森で、福岡に関わる全ての人と一緒に歓喜の瞬間を味わいたい。そのための最後の11試合。その1試合、1試合を最後の戦いのつもりで全ての力をぶつけ、チームとともに戦いたい。それがJ1への扉を開けることにつながることを信じて。

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