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 スペインからの風 03/07/03 (木) <前へ次へindexへ>

 スペインフットボールのバブル


 文/中島泰介 写真/ふかえまさひろ
 6月28日のエルチェで行われた国王杯決勝、そして29日の2部B、3部のプレーオフが終了し、リガ・エスパニョーラ2003−2003シーズンが終了した。国王杯決勝、下部リーグとはいえ昇格がかかるプレーオフ、どちらも私の住むアリカンテの近郊都市で試合が行われたが、残念ながら都合により見に行くことができなかった。

 すでに来シーズンに向けての補強のニュースが連日見られる。最も大きなニュースは疑いなくベッカムのレアル・マドリードへの移籍。先日もメディカルチェック、契約書に正式サインのためマドリードを訪れたベッカム夫妻のニュースが繰り返しテレビで放送されていた。



 さて、スターが集まり、チャンピオンズリーグでも必ず上位に食い込むクラブのある豪華でハイレベルなリガ・エスパニョーラだが、多くのクラブの経営状態はよろしくない。現在リガ・エスパニョーラは総額16億2500万ユーロ(およそ2227億5000万円)の借金を抱えているというニュースが報じられ、更に全国紙"エル・パイス"の6月8日付け日曜版では、「借金リーグ」と題して特集記事が掲載された。

 その記事によると、1部リーグですら11チームが収入の90%以上(そのうちの5チームが100%以上、4チームが130%以上)を借金返済及び人件費に費やしているという。2部には言及してなかったが、おそらくほとんどのクラブの経営状態は良くないだろう。華々しい舞台の裏には暗い影が忍び寄っている。

 今シーズンの最中から、来シーズンの放映権の問題が取りざたされている。今、放映権はクラブにとって命綱のようなもの。経済的に大きい1部リーグ12クラブのグループ(G-12)と、残りの1部8クラブ、及び2部の22クラブで構成された小クラブのグループ(G-30)との間で利害関係がぶつかり合っている。メディア側にとっても魅力的なG-12のクラブは、各クラブが個々に放映権を交渉・契約するべきだと主張し、それによる更なる経済格差及びクラブの破綻の可能性を恐れるG-30はそれを否定。契約のオファーのないG-30は、自分達が放映権の契約を締結するまで、8月30日開始予定の来シーズンのリーグを開始しないとまで宣言した。これはセリエAで起こった状況と同じである。7月2日付けのAS紙ウェブ版ニュースによると、LFP(スペインプロリーグ機構)は、2部リーグの放映権のオファーを受けたとのことだ。まだ契約が締結されたわけではないが、状況は少しずつ良くなってきているようだ。



 とは言え、ビッグクラブにとっても放映権の上昇はもう見込めない。6月29日付けのエル・パイス紙に興味深い記事が載っていた。1998−1999シーズンから2002−2003シーズンの間に、1試合当たりに自治州テレビ局が支払った放映権料が、41%も上昇しているのに対し、視聴率が26%も下がっているのだ。経済的にも今まで以上の放映権料をテレビ局は払えないだろうが、この数字から考えるとフットボールはソフトとして以前ほどの魅力もない。テレビ局テレ・マドリード社ディレクターであり、自治州ラジオ&テレビ局協会(FORTA)の会長であるフランシスコ・ヒメネス・アレマン氏は、同日付のエル・パイス紙で、フットボールに対して今まで以上に放映権料を支払うつもりはないと明言している。

 借金返済にあえぐスペインフットボール。LFPは4月にラホイ・スペイン副首相に対して、キニエラ(サッカーくじ)のクラブに対する分配率を上げる法改正を文書で依頼している。しかし、最も必要なのは各クラブが健全な経営を行うことである。クラブもファンももちろん魅力的な選手を獲得したいし上位進出(あるいは降格阻止)のための補強をしたいだろうが、クラブが破綻すれば元も子もない。多くのメディアや専門家がリーグの危機を警告している。あとは経営サイドの意識が変わるかが、リーグとクラブの将来を左右する。
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