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 スペインからの風 03/08/20 (水) <前へ次へindexへ>

 スペインフットボールのバブル Part 2


 文/中島泰介(アリカンテ在住)
 リガ・エスパニョーラの多くのクラブが負債を抱えていることは前回のコラムでお伝えしたが、LFP(リガ・エスパニョーラ事務局)が定めた期日までに選手達への借金を返せなかった2チームに制裁が下った。その2チームとはガリシア地方サンティアゴ・デ・コンポステーラ市のUDコンポステーラと、その隣のアストゥリアス地方オビエド市のレアル・オビエド。それぞれ2部B、3部への降格が決定した。他にも期日の最後の最後まで行方が分からないクラブが多くあった。この2チームは悲しみの中新しいシーズンに望むが、再起を祈りたい。

 最近、また面白い数字を見つけた。大型移籍が年々減っているのは移籍ニュースを見ていて分かることだが、8月15日付の経済紙"エクスパンシオン"は独自の調査によって、スペインのクラブが選手獲得に使う費用が格段に減っていることを記事で伝えた。

 今シーズンの予測は昨シーズンより200万ユーロ少ない9000万ユーロ(およそ121.5億円)。ピークの2000−2001シーズンは3.5億ユーロ(現在のレートでおよそ472.5億)なので、そのときの約4分の1に出費が抑えられている。これはリガ・エスパニョーラのクラブが経済的に苦しくなっているのを表すデータの一つだろう。



リーグは開幕間近

 リーグの経済状況はよろしくない。しかし2003−2004シーズン開幕が迫っており。多くのプレシーズンマッチが開催されている。私は近所で開催された以下のゲームを見に行った。

8月13日(水)アリカンテCF−レアル・ムルシア

 アリカンテCFの、2003−2004シーズンの選手お披露目のセレモニーから始まった。2,200人と結構な観客数だったのだが、30,000人のキャパシティーを持つリコ・ペレス・スタジアムでは、やはり少し寂しく感じる。スタジアムの照明を消し、選手一人一人がスポットライトを浴びながらピッチに入場。全員入場し、キャプテン、監督、会長のスピーチの後、景気付けの花火が上がった。ゴール裏スタンドに花火で"Alicante CF 2003-2004"と文字が浮かび上がる。3が逆さでEとなっているのはご愛嬌。今年の目標は、もちろん2部A昇格。

 今日の試合の相手は今シーズンからトップリーグでプレーする、隣のムルシア県のレアル・ムルシア。キャパが一万数千人のラ・コンドミナ・スタジアムにおいて、8月1日から売り出したアボノ(シーズンチケット)はすでに8,000枚以上が売れている。今年のムルシアは大応援を背に強豪チームと対戦するだろう。

 たとえ上のレベルの相手とはいえ、アリカンテはシーズンお披露目試合で惨めなプレーを見せられない。試合は22:10(しかも平日!)に開始した。開始1分でアリカンテがシュートまでつなげる。このプレー以降も予想外にパスが回り、ゲームを支配。今年でアリカンテでのプレーが8シーズン目のキャプテン、ヘルマンが攻守に貢献。いいリズムを保ち、31分、見事のパスワークから、ペナルティ・エリア内左サイドからの短いクロスボールにアセンシオが喰らいつき体に当てて先制点を奪った。前半はアリカンテのゲーム。

 後半は開始早々集中が途切れ、DFの準備が整わないうちにスタートされたセットプレーから同点ゴールを許し、終了間際にはカランカのミドルシュートで逆転されアリカンテは敗れてしまった。プレシーズンマッチなので、アリカンテは後半から5人、試合終了までに11人全員を交代、ムルシアも半数以上を交代させた。アリカンテの敗戦は残念だが、選手のテストが優先。前半は1部リーグのムルシアを相手にリードし、しかもゲーム支配率でも勝っており、今シーズン十分に期待の持てる内容だったと思う。



8月16日(土)エルチェCF−FCバルセロナ

 一週間程前にアリカンテのビーチでリラックスしているときに、尾に広告の布を付けたセスナ機が飛んでいた。アリカンテではよく使われる宣伝の方法だが、よく見るとElche−Barcaと書かれていたので早速スポーツ紙を見て、プレシーズンマッチがあることを確認したので行くことにした。

 エルチェCFはアリカンテ県エルチェ市の、2部リーグに所属するチーム。アリカンテ市からはバスで南に30分程行けばエルチェ市に行ける。この都市には、イスラム支配の時期にもたらされた北アフリカの椰子の景色が現在まで残されており、このエルチェの椰子園(El Palmeral de Elche)は2000年にユネスコ世界遺産に登録された。

 エルチェCFの本拠地Estadio Martinez Valero(マルティネス・バレロ・スタジアム)はおよそ40,000人収容。82年のワールドカップでも使用された。最近ではコパ・デル・レイ(国王杯)決勝が開催され、マジョルカがこの地で優勝を遂げている。過去2試合エルチェの試合を見に行ったが、2部ということもあって、アリカンテのクラブ同様大きなスタジアムを持ちながら観客が少ない。しかも前シーズンは下部リーグ降格争いまでしてしまった。

 普段は5,000人集めるのに苦労するほどだが、バルサが来るということもあって今日は33,000人が集まり、ゴール裏の2階席以外はほぼ満員だった。最も安い席は15ユーロとシーズン中の試合より高く価格が設定されていた。観客はエルチェ、バルサのファンは半分ずつといったところか。

 この試合も夜10時キックオフ。2分にいきなりゴール前のエルチェのパスミスをバルサがカットし、ロナウジーニョ、サビオラとつなぎシュートを放ったがGKがセーブ。その5分後にはまたエルチェが危険地帯でパスをカットされサビオラがゴールを襲う。またもエルチェGKのセーブでバルサは決定機を逃す。先制点は時間の問題に思われた。しかし何度もチャンスがあるのだが得点にはつながらない。プレシーズンのせいなのか、どうも集中力というか、真剣みというか、が足りない。その後の攻撃の連携もイマイチ。うまくいってもただボールをつなげているだけという感じで深さやアグレッシブさがなかった。

 ホームのエルチェも、少ないながらも好機を作り、バルサDFをたびたび脅かす。21分にははじかれたCKのボールをシュート。低い弾道の良いシュートだったがわずか右に逸れる。その1分後には右サイドでのパス交換からDF裏にエルチェのプレーヤーが抜け出し上げたクロスボールをシュート。これも外れたが上手くバルサDFを崩した攻撃だった。27分のヘディングは残念ながらポストに阻まれてしまった。

 後半に入ってもバルサの緩慢プレーは変わらない。ロナウジーニョのプレーにはカメラのフラッシュが多く集まったが、上手く機能しているとはいえなかったしボールを奪われるシーンがよく見られた。サビオラも決定機にシュートを浮かしてしまい、どうしてもゴールが奪えない。エルチェもバルサからゴールを奪うまでの力はなく、0−0で終了。

 さあスタジアムを去ろうとしたらPK戦が始まった。あとで分かったのだが、このゲームはTrofeo Festa d'Elx(エルチェ祭トロフィー。バレンシア語ではエルチェをElxと書く。)と名のついた、一応タイトルをかけた試合だったのでPK戦での決着を行った。ここで後半から入ったバルサのGKバルデスの活躍で、バルサが1−3で勝利。このPK戦にはエルチェ、バルサの両ファンは一喜一憂していた。しかしバルサ、プレシーズンとはいえリーグ開幕まであと間近。不安だけが残る試合だったが、それでも笑顔で去る多くのバルサファンを見かけた。この近郊に住んでいるカタルーニャ人やバルサファンには、生でバルサを見れたことに満足しているのかもしれない。

 一つ気になったのが芝の状態。まだシーズン開幕もしていないというのにスタジアム一番上の席から見てもお粗末なのが分かる。9月10日にはここでスペイン代表がウクライナ代表を向かえ、ユーロ予選の山場を迎える。はたしてそのときまでに芝の状態は良くなるのだろうか。8月21日にはレアル・ムルシアがポルトガルの強豪ベンフィカ・リスボンを迎えて調整を行うはずだったが、スタジアムの芝の状態が良くないためキャンセルされてしまった。どうやら今年ヨーロッパを襲っている猛暑の影響らしい。選手達にはできるだけ良い環境でプレーしてもらいたい。


 ともあれリーグ開幕まであと2週間。待ち遠しくなってきた。
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