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 続・スペインからの風 04/10/18 (月) <前へ次へindexへ>

 危機の意味(2)


 文/神藤恵史(ムルシア在住)
 
 前回の続き、「危機の意味」のもう一つのプラスの要因について述べてみたい。

 簡潔に言えば、クライシスの境地にある時こそ、若手の出番ということだ。レアル・マドリードでは、既に今年はフアンフラン、ジョタらの若手が起用されている。去年ならばボルハ、メヒーヤ、ミニャンブレス、ルーベンが活躍し、その活躍が認められて、ミニャンブレスはエスパーニャ、ルーベンはアルバせーテで武者修行中。メヒーヤとボルハも、しっかりと控えリストに名を連ねている。いずれもクラブ生き抜きの若手選手たちだ。確かに小粒選手が多いかもしれないが、このようにAチームでの出場機会を与えることがヒーロー誕生の切っ掛けとなる。クラブ歴100年の歴史を紐解けば、この法則が理解できるだろう。

 例えばカシージャス。今では言わずと知れたマドリード、またはスペイン代表の正GKだが、名選手イルグナーが怪我や、控えのビサリが機能しなかったことを抜きにしては、弱冠17歳のデビューについて語ることは出来ない。

 また今年古巣に戻ってきたモリエンテス。サラゴサからマドリードにやってきた97年、誰がここまで彼が活躍することを予期はしていただろう。そもそも、ベテランの域に達したミヤトビッチの代わりとするために、当時オリンピックメンバーにも選ばれていたダニとモリエンテスの若手コンビをサラゴサから獲得したのだが、当時の様子を知るマドリードファンは、こう語る。「モリエンテスよりもダニへの期待の方が大きかった。むしろ移籍金の都合でモリエンテスも買ったように思えたね」。しかし、ダニはマドリードで8試合にのみ出場し、翌年マヨルカへ移籍する。一方、33試合で12得点という好成績を見せたのはモリエンテスだった。



 そして最後にラウール。17歳でデビューした彼の神話は、読者の方にもよく知られた話だろう。当時の監督であったホルヘ・バルダーノは3軍のラウールをサラゴサ戦で投入するものの、そのできは期待はずれだった。しかしここで諦めなかったバルダーノ。アウェーでの戦いとなった次節のアトレティコ・マドリード戦で再びラウールを起用。そして、秘めた可能性に託したバルダーノの采配は、見事ラウールのスーパーゴールを生み出したのだ。しかし、このようなシンデレラストーリーは、当時の看板選手ブトラゲーニョの不調がなければ存在しなかったことを忘れてはいけない。

 以上のように若きスペイン選手の到来の背後には度重なるクライシスがあったのだ。バルセロナFCのケースならば、グアルディオーラの衰退の時期にシャビが登場した。また最近では怪我人が増える中、天才肌のイニエスタの存在はバルセロナファンにとって頼もしいものだ。バレンシアの大黒柱アジャラが長期離脱をしている中、ペジェグリーノを押して、若手ナバロがセンターバックで起用されている。同じようなパターンがセビーリャの若手DFパブロにも見られる。チームの不調、主力選手の離脱という悲しい出来事から明るい未来を嘱望させる、若手選手の待望が隠されている。



 これを読んでいるJリーグファンの皆様。サポートしているチームが不振な状態に陥っていることもあるかもしれませんが、プラス思考でそれぞれのクライシスを見守っていきましょう。

 最後にレアル・マドリードが獲得したイギリス人選手、ウッドゲイトの背中に彫られた39文字のタトゥーをもって皆様にエールを送ります。

The darkest moments of our lives are not to be buried and forgotten, rather
they are a memory to be called upon for inspiration to remind us of the
unrelenting human spirit and our capacity to overcome the intolerable. 
(Vince Lombardi)

 我々の人生の中で最も暗黒な瞬間とは覆い隠すべきこと、忘れられるべきことではなく、むしろ、確固不動の精神と耐え難いものを克服する力を我々から思い出させてくれる、そのようなインスピレーションを呼び起こすための一記憶なのだ。(独訳)


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