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 頑張れ!女子サッカー 03/01/21 (火) <前へ次へindexへ>

 さいたまレイナスFCが準々決勝に進出。敗れた岡山湯郷Belleも実力の片鱗を見せる。


 取材・文/中倉一志
第24回全日本女子サッカー選手権大会 2回戦 岡山湯郷Belle vs.さいたまレイナスFC
2003年1月18日(日)12:00キックオフ(80分)大分総合競技場サッカーラグビーAコート
試合結果/岡山湯郷Belle 1−4 さいたまレイナスFC(前0−1、1−3)
得点経過/[さいたま]安藤(23分)、木原(42分)、安藤(67分)、[岡山]光藤(71分)、[さいたま]中池(79分)


「こっちのチーム?何もない」(田口監督・さいたまレイナス)。試合後のコメントを尋ねた記者に田口監督はそっけなく応えた。それもそのはずだろう。スコアの上だけなら4−1とL・リーグのチームとしての実力を見せつけた形になったが、その試合内容は決して圧勝と呼べるものではなかったからだ。むしろ、「得点するチャンスもあった。その時にきちんと得点を取っていたら、もう少し違った結果になったかなという部分もある」(本田監督・岡山湯郷)という言葉の通り、試合内容なら岡山のほうが上回っていた感もあった。



 ピッチの上を走り回る選手たちの背中に、それぞれのゴールマウスから大きな声が浴びせられる。さいたまレイナスFCのGK山郷のぞみと岡山湯郷GKの福元美穂、ともに日本代表に名を連ねるGKだ。その激しいコーチングは相手の実力を知っているからのことなのだろう。L・リーグ3位のさいたまは、L・リーグ決勝リーグでは日テレ・ベレーザの連続得点記録を止めたチーム。来シーズンからのL・リーグ入りが決まっている岡山は、かつての日本を代表する名プレーヤー本田監督が手塩をかけて育てたチーム。ともに、その実力は高い。

 まず試合の主導権を握ったのは岡山だった。立ち上がりこそ、相手の出方を窺うように低い位置で構えていたが、さいたまのリズムが悪いと見るや、すかさず攻勢に転じたのだ。その展開力は見事だった。常に的確な位置を保つ選手たちは少ないタッチでボールをつなぎ、ボールを持たない選手がスペースを見つけて飛び出すと、そこへ正確なパスが渡っていく。そして相手を引き付けると右サイドを駆け上がる中川がチャンスを広げる。

 とにかくボールをつないで組織的に崩そうという意識が徹底されている。「つなぐことっていうのはサッカーでは普通のことで、当たり前のことを当たり前にやろうということをやっているだけ」と本田監督は涼しげに言うが、これだけスムーズにボールを回せるチームはいない。そして組織的なのは攻撃だけではない。守備でも、必ず1人が身体を寄せてプレーを遅らせ、そこへフォローに来た選手が加わって常に数的有利を崩さない。先入観なく試合を見たら、おそらく岡山の方が強豪だと思った人は多いだろう。

 しかし先制点はさいたま。CKがゴールエリア内にこぼれ、両チーム入り乱れて密集となったところで安藤が押し込んだ。時間は23分、ここまで有利に試合を進めてきた岡山にとっては悔やまれる失点だった。それでも試合のペースが岡山であることは変わらない。先制点を奪われてもチームの落ち着きは変わらず、リズム感あふれるパスワークを駆使してペースを渡さない。惜しまれるのは、チャンスを作りながら最終ラインを崩しきれなかったこと。結局、前半のうちに得点を返せなかったことが後で大きく響くことになる。



 後半開始早々の42分、さいたまに幸運な2点目が生まれる。角田がゴール前に送ったロングフィードを木原が中央へ折り返すようにヘディングしたのだが、そのボールはふわりと高く上がって、そのままゴールに吸い込まれたのだ。呆然とする岡山イレブン。そして、この1点で微妙に岡山のリズムが崩れ始めた。前半、攻守にわたって激しく動き回った影響もあったのだろう。ほぼ一方的に攻めながら、決して崩されたわけでもないのに2点を奪われたショックもあったのかもしれない。徐々に岡山の運動量が落ち始めた。

 岡山の中盤のプレスが緩み、さいたまが中盤で自由にボールを扱えるようになると、ここからはさいたまのペース。岡山からは前半の小気味よさが消え、ボールに対する反応が一歩ずつ遅れだした。そして27分、そんな岡山を突き放すかのように安藤がさいたまの3点目をゲット。その直後の71分には岡山がゴールを奪い返して意地を見せたが、終了間際の39分に中池がCKから岡山に止めを刺す4点目を決めて、さいたまが準々決勝進出を果たした。

 岡山は残念な試合を落とした。決めるべき時に決めないとこうなるという典型的な試合でもあった。また、ゴール前での守備に問題を抱えていたことも敗因の一つだ。「もう一度DFのところ、やはり準備不足の部分があったが、その気になる部分で失点をした」と本田監督は振り返ったが、中盤での守備の良さに反して、セットプレーとゴール前での守備に難を抱えていた。セットプレー時のマークの徹底や、ゴールエリア内での守備のルーズな面を修正することが当面の課題になるだろう。

 一方、順当に準々決勝進出を果たしたさいたまだが、冒頭で紹介したように田口監督をはじめ、選手たちからは決して満足な表情が窺えなかった。前半、あれだけ押し込まれてしまったことが危機感を感じる原因になっているのだろう。次の相手は徹底した守りからカウンターで勝負する日体大。決して侮れるチームではない。田口監督も、「今日のゲームはプラスになるものは何もない。点が取れたというだけ。そこをもう一回時間をかけて修正させて試合に臨ませるしかない。このままだったら日体大にも勝てない」と気を引き締めていた。


(岡山湯郷Belle) (さいたまレイナスFC)
GK: 福本美穂 GK: 山郷のぞみ
DF: 藤井恵 北岡幸子 室みゆき DF: 角田純子 笠嶋由恵 仲希理子
MF: 泉紀子 三宅由真 宮間あや 中田麻衣子(71分/黒川晃) 岡本三代 MF: 片桐ひろみ(54分/伊藤知沙) 高橋彩子 木原梢(78分/中池桃子) 赤星照美 岩倉三恵
FW: 福原理恵 中川理恵(40分/光藤友希) FW: 岸一美 安藤梢
※このレポートは「fantasista online magazine 2002CLUB」に掲載されたものです。
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