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 頑張れ!女子サッカー 03/07/23 (水) <前へ次へindexへ>
 さあ、タイでの借りを返そう!

 日本、韓国に借りを返す5得点の圧勝。


 取材・文/西森彰
日・韓・豪3カ国対抗国際女子サッカー大会2003in仙台 日本女子代表vs.韓国女子代表
2003年7月22日(火)19:04キックオフ 仙台スタジアム 観衆:人 天候:曇
試合結果/日本女子代表5−0韓国女子代表(前2−0、後3−0)
得点経過/[日本]大谷(5分)、宮本(41分)、荒川(71分、83分)、宮間(79分)


 ガラガラのスタンドの中で相手チームの鳴り物だけが響く。一方的に攻めているのに、どうしても同点ゴールが奪えない。強烈なシュートがポストに弾かれ、完璧に崩し切った後にゴールキーパーのビッグセーブに阻まれる。焦る日本の選手をあざ笑うかのように時間が進み、レフェリーが腕時計を確認し、試合終了の笛を鳴らす。

「サッカーに絶対は無い」。ワールドカップへの切符をかけたアジア女子選手権の3位決定戦は、その言葉を強烈に思い出させてくれた。相手がひとり少ないことを差し引いても、明らかに日本女子代表の力は韓国女子代表の力を圧倒的に上回っていた。それなのに…。メキシコとのプレーオフであんな幕切れを見せつけられた日には、強烈なショックでしばらくサッカー観戦恐怖症に陥ったに違いない。それほど「ありえない結末」だった。

 あの試合を見た人なら、韓国女子代表との再戦には自信を持って臨んだはずだ。「10回やって8回は勝たなきゃいけない!」「アメリカに行く前に間違いは正しておかなければいけない!」。「○○しなきゃいけない」という妙なプレッシャーをいくつも背負いこんで杜の都に向かった私の前で、日本女子代表は期待以上のパフォーマンスを見せ、タイでの借金に熨斗袋をつけて返済してくれた。



 2002FIFAワールドカップTM開催1周年記念事業として七北田公園仙台スタジアムで開催される「日・韓・豪3カ国対抗国際女子サッカー大会2003in仙台」。その初戦となる日韓戦には、チームや協会の関係者、いかにもサッカー好きという人たち、そして熱心なLリーグファンが、このフットボール専用スタジアムに足を運んでくれた。10日前の国立霞ヶ丘陸上競技場とは入場者数こそ比べ物にならないが、雰囲気は同じように良い。

 試合前のセレモニーを終えて日韓両国の選手がピッチに散る。親善試合ということもあってかスタジアムは静かに試合を見守ろうという空気が漂い、キックオフ直前の「日本コール」もまばら。私の周りの高校生からは、YKK東北所属でキャプテンの大部由美選手への声援が飛ぶ。明日の国立ではこんなゆったりしたムードは望めないだろう。

 日本女子代表のフォーメーションは3−4−3。メキシコ戦とほとんど同じスターティングメンバーで、アメリカに戻った澤穂希の代わりに丸山桂里奈が入った。しかし、最前線に張った大谷未央を小林弥生と丸山のふたりが高い位置でサポートし、明らかにメキシコ戦よりも攻撃的なフォーメーション。対する韓国は中盤右サイドのソン・ヒョンアが若干高いポジショニングをとる変則の4−4−2で臨んできた。



 韓国のキックオフに小林弥生が思いきって突っかける。力のこもったスタートを切った日本は、試合開始後僅か5分で韓国に先制パンチを浴びせた。大谷が持ち前のスピードで相手のライン裏を狙った瞬間、田崎の同僚・山本絵美からフワリと注文通りのパスが供給される。完全にGKキム・ジョンミと1対1になった大谷が、これを落ち着いて流しこんだ。ゲームプラン通りの幸先の良いスタートだ。

 これに対して韓国もすぐに反撃を開始、3バックの脇に生じるスペースを狙う。キム・ジンヒと川上直子が睨み合って戦線が膠着した左サイドを諦め、ソン・ヒョンアのスピードを生かして右から攻める韓国。11分、チャ・ソンミとイ・チウンが攻略し、折り返したボールをソン・ヒョンアが狙う。その5分後にもイ・チウンが後方からのハイボールをワンタッチでコントロールしたイ・チウンがシュート。日本のゴールを脅かす。

 日本も川上直子のミドルシュートが左ポストを叩くなどしたが、得点後は全般に押され気味の展開。サイドが押しこまれて5バックになった分、中盤でセカンドボールを拾えず、相手の波状攻撃にあう。かといって小林、丸山がフォローに下がれば、相手のDFまで攻撃参加される嫌なサイクル。試合後に振りかえってみれば、この30分間が1番苦しかった。

 しかし41分、喉から手が出るほど欲しかった追加点が入る。コーナーキックのセカンドボールをもう一度右サイドの小林に預けて作り直す。小林の鋭いクロスボールを、ニアに飛びこむ大谷をデコイにして、その裏に走りこんだ宮本ともみが頭で叩きこんだ。メキシコ戦の2点目と全く同じ日本得意の得点パターン。良い時間帯に点が入った。

 この後、オーストラリアのクリスティーナ・サッカーライ主審が、バックスラインでボールをキープする日本のパス回しを「プレイ時間の浪費」とみなし、掲示された2分間のロスタイムを大きく上回る4分間のプレイ時間をとるというアクシデントはあったものの大事には至らず、2点のアドバンテージを保ってハーフタイムに入った。



フレンドリーな強敵・オーストラリア女子代表
 この日はゲームの無いオーストラリア女子代表チームの選手・スタッフが、メインスタンドで観戦していた。ハーフタイムには観客と記念写真をとったり、子供たちと握手をしたり、ニコニコと大変、サービス精神旺盛。私がエイドリアン・サントラツ代表監督に2つ、3つ質問を試みると、リップサービスを交えて応じてくれた。

−前半、ご覧になってどうですか?
「ナイスゲームだ。日本チームは素晴らしい」

−日本チームの中で気に入った選手がいましたか?
「たくさん良いプレイヤーがいたよ。まず、ふたりの得点者だね。特に8番の宮本ともみはナンバーワンプレイヤーだ。他には2番のキャプテンマークをつけた大部由美がディフェンスリーダーとして良いプレイを見せている。それと6番の小林弥生は素晴らしいボールを蹴るね」

−あなたのチームと日本チーム、どちらが強いでしょう?
「ハハハ、日本は良いチームだよ。もちろん、我々もね」



 お礼を言って自分の席に戻る頃、両チームの選手がピッチに入ってきた。日本は丸山に代わって荒川恵理子が登場。ポジションは荒川をセンターにして、大谷がやや左になったが、大きくいじってはいない。これに対して韓国は一気に3枚の入れ替えを行なうとともに、最終ラインを1枚削ってシステムを3−4−1−2に変更してきた。

 しばらく受けに回って、相手のシステム変更を見極めた日本は山本、大谷の田崎コンビからチャンスを作り出し、徐々に一方的な展開に持ちこんで行く。61分、小林に代えて宮間あやをピッチに入れる。71分、ドリブルで切り込んだ大谷が粘って中央の荒川へ戻して3点目を挙げると、その直後に酒井與惠に代えて中地舞を右サイドに入れて川上をボランチの位置に入れる。交代の度にバランスが崩れて行く韓国とは対照的に、ポジションチェンジをスムーズにこなす日本。

 韓国のパワープレイ攻勢を防いだ後、79分にも中地からの右クロスを、宮間あやがループ気味のシュートで決めて4−0。さらに83分、3点目と同じようにスルーパスを受けた大谷から荒川のパターンで5点目を奪う。最後は大部を下げて、右から山岸靖代、矢野喬子、宮崎有香という3バックにGK小野寺志保というディフェンスのテストまで行なった。その上での5−0。これ以上の結果は望めないだろう。



 普段通りの戦いで韓国を完膚なきまでに叩きのめした日本女子代表。女子部門ランキングで日本を14位と、直接対決に敗れた韓国(25位)より遥かに上位に置いてくれたFIFAの面目を保つ結果を残した。このFIFAのランキングによると日曜日に戦うオーストラリアは15位。強化試合の対戦相手としては非常に手ごろなレベルだ。ちなみにワールドカップの本大会で同グループに入ったアルゼンチンは35位、ドイツは3位、カナダは12位で「日本、決勝トーナメント行ける!」という無責任な見出しをつけたくなる。

 本大会に向けてひとつ気になるのが審判の癖だ。多くの国籍のレフェリーが集まる国際トーナメントでは昨年の日韓ワールドカップを持ち出すまでもなく、ジャッジに大きなブレが出る傾向にある。審判に異議を申し立てても反感を買うか、カードをもらうかのいずれかなのだから、ジャッジの癖を読み取り、対応する力が問われる。

 ここまで見た限り、特に副審のオフサイドに対する考え方に大きなバラツキがあるようだ。この日のオーストラリアのセットで言えば、プレイに全く関与しないポーズをとっていても、最終ラインの裏にいるプレイヤーは厳しくオフサイドの対象としていた。日本は基本的に1枚余らすマンマークディフェンスだが、セットプレイの際、たまにオフサイドトラップをかけるので、このあたりは審判の癖をしっかり見極めて戦ってほしい。



 この「日・韓・豪3カ国対抗国際女子サッカー大会2003in仙台」はあと2試合を残している。7月25日(金)19:00キックオフの韓国VSオーストラリア、7月27日(日)16:00キックオフの日本VSオーストラリア。今秋の第4回女子ワールドカップに参戦が決まっている3カ国によるトーナメント。1試合のチケット代は全席自由の1,000円。共通観戦チケットは1,800円だから2試合見るならこちらがお得だ。興味のある方はぜひ足を運んでいただきたい。


(日本女子代表) (韓国女子代表)
GK: 山郷のぞみ(85分/小野寺志保) GK: キム・ジョンミ
DF: 磯崎浩美(78分/山岸靖代)、大部由美(83分/宮崎有香)、矢野喬子 DF: ジン・ソクヒ(45分/キム・ユミ)、キム・ユジン(75分/キム・ジュヒ)、ユ・ヨンシル、ソン・ジュヒ
MF: 川上直子、酒井與惠(72分/中地舞)、宮本ともみ、山本絵美 MF: ファン・インソン(45分/イ・チャンホ)、イ・ミョンハ、キム・ジンヒ、ソン・ヒョンア(66分/ホン・ギョンソク)
FW: 小林弥生(61分/宮間あや)、大谷未央、丸山桂里奈(45分/荒川恵理子) FW: チャ・ソンミ(45分/シン・ソンナム)、イ・チウン
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