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 頑張れ!女子サッカー 03/08/08 (金) <前へ次へindexへ>

 伊賀が宝塚に順当勝ち。宝塚は下位リーグへ。


 取材・文/西森彰
第15回Lリーグ一次リーグ 西日本リーグ第6節 伊賀FCくノ一vs.宝塚バニーズレディースSC
2003年8月3日(日)14:15キックオフ 上野市運動公園競技場 観衆:100人 天候:晴
試合結果/伊賀FCくノ一3−0宝塚バニーズレディースSC(前0−0、後3−0)
得点経過/[伊賀]原(49分)、山岸(52分)、水本(84分)


 西日本リーグの第6節、上野市運動公園競技場での連続開催第2試合は、黄色のユニフォーム・伊賀FCくノ一と白の宝塚バニーズレディースサッカークラブの対戦。この試合に先立って行われた第1試合では田崎ペルーレFCが7連勝を飾り、東西で13あるLリーグのクラブで最初に上位リーグ進出を決めている。西日本リーグに残されたイスのふたつを争う権利を、伊賀も宝塚もまだ持っている。

 伊賀は開幕直後、2引き分けともたつき、白星を4つ並べた後の前節で田崎の前に0−4という完敗を喫している。どうも今ひとつ波に乗り切れないまま、ここまで来てしまった。絶対条件とも言える上位リーグ入りにも黄信号を灯らせてしまった。今シーズン、躓きの原因となった開幕戦ドローの相手に勝って、一息つきたいところだ。

 一方の宝塚はトップグループ常連の伊賀に引き分けと上々のスタートを切ったが、その後はルネサンス熊本FCに2勝した他は4敗。現在2位のスペランツァF.C.高槻と2ゲームとも1点差の勝負を演じているように、完全に格落ちということでもない。この試合に敗れると上位リーグ入りの可能性が完全に消滅する。こちらも背水の陣で気合万全。



 大方の「伊賀優勢」という前予想を覆すかのように、宝塚がキックオフから前に出る。この試合に敗れると上位リーグ入りの可能性が消滅する宝塚は、伊賀の良さを消すよりも打ち合いを選択した。小柄な三浦香子、伊丹絵美のふたりを経由してオープンスペースにボールを展開し、右のサイドハーフ・小林舞子の突進が宝塚にチャンスを幾度かもたらす。

 そして17分、右、右と攻めて、そちらに伊賀の意識を振っておいて、左サイドを長身の阪上由紀代がディフェンダーと競り合いながら、ペナルティボックスへ持ち込んでシュート。しかしこれが伊賀のゴールバーを直撃。試合後に、宝塚の高藤順監督をして「あれが入っていればなぁ・・」と嘆息せしめた絶好のチャンスは報われなかった。

 伊賀のほうもジッと受けるのではなく、すぐに反撃。センターバックから右サイドハーフにコンバートされた山岸靖代が、サイドを突破し、トップに張った井坂美都に当てる。井坂のライン裏への抜け出し。またはポストプレイから原歩のシュート。シュートへの意識が高かったこの日の伊賀は、射程距離に入ったプレイヤーが積極的なフィニッシュ。前半45分間でシュート14本の山を築く。宝塚は僅かに2本。好むと好まざるとに関わらず、自陣に押し込められ始めた。



 ハーフタイム。0−0のスコアをキープしてベンチに戻ってきたイレブンに、宝塚の高藤監督は戦術ボードを用いてディフェンスのやり方を再確認する。井坂に裏を狙われた時、ポストプレイをされた時のポジショニングなどディフェンスのやり方を整理した高藤監督。あわやのシュートを放っていた長身の阪上を、中盤の三井ともみにつけてきた。スコアレスの状況を長引かせることで、伊賀の焦りとミスを待った宝塚。後半は相手の良さを消すことを選択した。

 しかし伊賀には得点できない焦りよりも、自分たちのサッカーができているという手応えのほうが遥かに大きかった。江川重光監督の大声だけが響き渡っていた田崎戦とは違い、伊賀の選手たちは互いに声を良くかけあっていた。「声が出ていたのはうまく行っている実感が選手たちにもあったんでしょう」(伊賀・江川監督)。あの大敗から2週間、メンタル面のリバウンドをおこなった効果がはっきりと見えていた。



 井坂のマークのため中央に密集した宝塚に対して、「サイドから攻めるのがウチのサッカーの特徴だから」と山岸、堤が深くえぐるようになった。まず、後半開始直後から伊賀は右サイドの山岸にボールを集めた。49分、その山岸がドリブルで抜け出し、中央で待ち受ける原にラストパスを通して先制。52分にもペナルティボックス付近で相手ボールを奪い、原、井坂とつないで、山岸のヘディングシュートで2点目。

 宝塚は自分たちの左サイドを蹂躙する山岸に対応するため、全体的に4バックが引っ張られる。これによって、それまで右サイドのスペースを巧妙に消していた道下愛子がインサイドに絞ることを余儀なくされた。広大なスペースを与えられた堤早希が今度は輝き始めた。左から機を見てあがり、チャンスメイクだけでなく、ミドルレンジからシュートも放つ。多彩な攻めでペースを掴んだ伊賀は宝塚を圧倒。84分、途中出場の水本喜美が駄目押しの3点目を奪って快勝した。



 宝塚は正攻法で戦った前半ではなく、皮肉にも守備に重心をシフトした後半に3点を奪われ、敗れ去った。だが、これは結果論。伊賀の攻撃のバリエーションが、宝塚の修正能力を上回った結果であり、仕方がないだろう。「前半は善戦して、番狂わせを起こせそうだったんだけど」と呟いていた高藤監督にも、現状の力は出し切ったという笑顔が浮かんでいた。この日の敗戦で宝塚は上位リーグ進出の可能性が絶たれた。来年1部で戦うためには下位リーグを勝ち抜かなければならない。

 伊賀の江川監督は「前節の敗戦(田崎に0−4)の後、2週間、選手たちは本当に集中して次の試合に準備をしてくれた」と選手を称えた。この日の勝利で勝ち点を14まで伸ばし、1試合多く消化している高槻に2ポイント差。「上位リーグからが本番。現状ではいろいろなことにチャレンジし、そこから洗い出した問題をひとつひとつ修正している段階です。まだまだ彼女たちのポテンシャルはこんなもんじゃないし、もっと良いサッカーができるはず」。1試合ずつチーム力を積み上げる伊賀に、最終ステージでの逆転劇は待っているだろうか。


(伊賀FCくノ一F.C.) (宝塚バニーズレディースサッカークラブ)
GK 小林舞子 GK 安田真季
DF 藤村智美、馬場典子、宮崎有香、仁科賀恵 DF 道下愛子(80分/佐藤裕美)、田中真由美、西手友美、加治屋早織
MF 山岸靖代、那須麻衣子、宮本ともみ、堤早希(82分/吉泉愛) MF 小林舞子、伊丹絵美、河野雅子(68分/今枝梢)、稲葉昌美(55分/若林エリ)、三浦香子
FW 原歩(87分/小松愛)、井坂美都(77分/水本喜美) FW 阪上由紀代
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