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 頑張れ!女子サッカー 03/10/05 (日) <前へ次へindexへ>
 1回戦で敗れた誠修高校。パスをつないで組み立てるサイド攻撃は
 魅力的だ

 痛快!攻撃サッカー。豊国学園が優勝を飾る。
 第20回福岡県女子サッカー選手権大会

 取材・文/中倉一志
 先日、第83回天皇杯全国サッカー選手権の組み合わせと日程が発表された。ついこの前に始まったばかりと思っていた今シーズンだったが、早いものでサッカー界は1年を締めくくる最大・最古の大会に向けて動き出した。そして、もうひとつの日本一を決める大会の出場権をめぐる争いもまた各地で繰り広げられている。1月初旬から始まる第21回全日本女子サッカー選手権大会がそれだ。今週は9月26、27に行われた福岡県大会の模様をお伝えすることにしたい。

 今年で20回目を迎える福岡県女子サッカー選手権大会に参加するのは9チーム。福岡大会への出場を免除されている「福岡女学院FC ANCLAS(アンクラス)」と、今大会で優勝したチームの2チームが九州大会へ駒を進める。試合時間は30分ハーフ。引き分けの場合はPK戦で決着をつける。なお、決勝戦では10分ハーフのVゴール方式の延長戦とPK戦が行われる。選手交代は5人まで。出場資格は12歳以上の協会登録の女子選手となっている。

 大会期間は2日間。すっかり秋めいてきたとはいえ、福岡の9月は十分に暑い。優勝するまでには最大で4試合を戦わなければならず、選手たちにとってはハードな戦いになる。会場は福岡女学院グラウンド。乾いた土のグラウンドは太陽の照り返しがまぶしい。走るたびに砂埃が舞い、時折吹く強い風が一瞬視界をさえぎることもある。それでも彼女たちにとっては晴れの舞台。たった一つの九州大会への切符を目指して激しくぶつかり合った。

 激戦の結果、福岡ファーストレディ11(以下、F.F.L)、春日イーグルスFC、豊国学園、北九girlsの4チームが2日目の準決勝に進出を決めた。しかし、敗れたチームの健闘も光った。中でも目を引いたのが誠修高校。ボールをつないで両サイドへ展開するサッカーが持ち味で、ボールをつないで後方から押し上げるサッカーは見ていて小気味よい。九州リーグに参戦しているF.F.Lの老練なゲーム運びの前に敗れたが、もう少し見たかったチームだった。



 今年立ち上げたばかりの「春日イーグルス・オーバー12」これから
 が楽しみなチームだ。
 さて準決勝。第一試合ではF.F.Lと春日イーグルスが対戦した。F.F.Lは福岡県で最初にできた女子サッカークラブ。20年を超える歴史を持つ伝統あるチームだ。九州リーグの成績は前期終了時点で3位、実力もある。対する春日イーグルスFCは今年の3月に女子チームを立ち上げたばかり。選手の半数以上がクラブに入るまではサッカー未経験者だが、技術を気持ちでカバーして準決勝に駒を進めた。しかし、さすがに実力の差はいかんともしがたく、20分にF.F.Lが先制すると、その後もF.F.Lが着実にゴールを重ね、5−0で順当に決勝戦へ駒を進めた。

 敗れた春日イーグルスにとっては初めてのカップ戦。登録人数もまだ15名と少なく、この日は仕事の都合で11人ギリギリでの参加だった。しかし、1回戦ではロスタイムに追いついてPK戦で勝利を掴むという健闘を見せた。「1回戦で県リーグ1部のチームに勝てていい経験になった。こういう厳しい経験をすることでみんなに力がついていくと思う。持てる力は強い相手に対して出し切った」と田中寛典監督は満足げ。選手たちも思う存分ボールを追いかけたことだろう。

 第2試合は前年度準優勝、九州リーグ所属の北九girlsと高校レベルでは九州大会3位の豊国学園が激突した。ゲームは立ち上がりから豊国学園が主導権を握る。毎日の練習量に裏打ちされたスピードとフィジカルは圧巻。高い位置から北九girlsにプレスをかけて相手にサッカーをさせなかった。先制点は7分、約25メートルの地点から放ったシュートがゴールネットを揺らす。さらに、13分、30分にも豊国学園が追加点を挙げた。

 後半に入ると北九girlsも九州リーグの意地を見せる。3点差に意気消沈するどころか、これを跳ね返すべく激しく前に出てきたのだ。しかし、豊国学園も下がらない。ともに高い位置でぶつかり合う展開が続く。そして終了間際の59分、豊国学園が4点目のゴールを決めて試合に終止符を打った。「相手のいいところを消す。それが自分たちのいいプレーにつながった。それを最後までやり続けたことが勝因」(塩見亮介監督)。豊国学園は、これ以上ない形で決勝戦進出を果たした。



 サイドで競り合う豊国学園(白)とF.F.L。写真の河江(裕)選手は何度
 も得意な形から攻撃を演出した。
「ファーストさんは九州リーグに加盟していて高いレベルでやられているチーム。準決勝と同じような形でやらなくちゃいけない。若さでいかないといけない」(塩見亮介監督)
「やろうとしているサッカーは、ある程度出来ている。問題は気持ち。九州リーグにいるという気持ちと誇りを持って戦う」(一木達哉監督)
 若さと馬力で勝負する豊国学園。クラブチームらしい老練なサッカーと九州リーグの意地をかけて戦うF.F.L。決勝戦は14:00に試合開始のホイッスルが鳴った。

 豊国学園のフォーメーションは4−4−2。ボールを捌くのは1ボランチの久世。2トップが激しく動いてボールを引き出すと、両サイドのMFが2列目からスペースに飛び出してチャンスを広げる。トップ下の竹原はパスも出せるし、シュートも狙える万能プレーヤーだ。そして、全体で前からプレスをかけて押し込むと、畳み掛けるように攻め込んでいく。特に左サイドから飛び出していく河江(裕)のスピードは圧巻。来るのが分かっていても止められないほどだ。

 迎え撃つF.F.Lも4−4−2。クラブチームらしい落ち着いたサッカーが持ち味の、いわゆる大人のチームだ。派手さはないが、要所を押さえて試合をコントロール。しっかり守ってからのカウンター攻撃は中々味がある。キックオフ直後は、激しく前に出る豊国学園にてこずる場面も見せたが、時間の経過とともに落ち着きを取り戻し堅い守備を見せる。互いのマークを確認して豊国学園の2列目からの飛び出しに対応し、最終ラインでは村口が的確なカバーリングで豊国にチャンスを与えない。

 しかし9分、豊国学園は追い求める自分たちのサッカーで先制点をもぎ取る。中盤での激しいせめぎ合いの中、竹原が左サイドに目を配る。今までF.F.Lが消していたはずの場所にスペースが出来ていた。すかさずスルーパスを送り込む竹原。そこへ河江(裕)が猛然と飛び込んでくる。豊国学園の最も得意するパターンだ。河江(裕)はスピードに乗ったままシュート。GKの伸ばした両手の先を通ってボールはゴールネットを揺らした。



 豊国学園は1、2年生が主体の若いチーム。九州大会はいい経験
 の場になるはずだ。
 さらに勢いを増す豊国学園。堅い守備ではじき返すF.F.L。だが勢いと攻めの形は豊国学園が上。これまでの戦い方から見て、豊国学園が畳み掛けるのも時間の問題かと思われた。しかしF.F.Lは崩れない。それどころか、次第に安定感さえ出てきた。そして、前半は1−0のままで終了した。ここで豊国学園が追加点を挙げられなかったことが微妙な気持ちの変化を与えたのだろうか。後半は前半とは打って変わった展開になっていく。

「自分たちでやってきたプランを自分たちで壊した。受身に立った。守りきろうと思ってしまった」(塩見亮介監督)。攻めることが持ち味のチームから攻撃の姿勢が消えた。そして、それに乗じてF.F.Lが猛攻を開始する。左サイドを中心に豊国学園の裏を何度も取り、そして前線に4、5人もの人数をかけてゴールを目指した。豊国学園が守備に追われるのは今大会で初めてのことだ。しかし、F.F.Lはどうしてもゴールが遠い。やがて試合終了のホイッスル。その瞬間、豊国学園の3年ぶりの優勝が決まった。

 豊国学園は今年、全国女子高校選手権への出場を鳳凰(鹿児島)に絶たれた。そして、その鳳凰は全国初制覇を果たした。自分たちにもやれるはず。そんな思いを彼女たちは、今大会で九州リーグのチーム相手にぶつけた。その結果、さらに上のランクである九州大会でチャレンジできる権利を手にした。「タイトルを取らなければ次のレベルで戦えない。それが達成できたことは非常に満足」。塩見監督はそう大会を振り返った。

 豊国学園は3年生が2人だけの若いチーム。そういう意味では将来が非常に楽しみなチームだ。しかし、それは経験が少ないことも意味する。塩見監督は続ける。「試合巧者に対して自分たちのサッカーをやり続けられるかが課題。高いレベルのチームと戦い続けるためには最後まで自分たちのサッカーが出来るかどうか。自分たちで崩れるようなサッカーをしないように九州大会に向けて頑張りたい」。

 決勝戦では経験の少なさが少しばかり顔を見せた豊国学園だが、両サイドからのスピードある突破と、絶えず前からプレスをかけ続けるスタイル。そして攻撃的な姿勢を崩さないサッカーは魅力満点。九州大会でも思う存分暴れてくれることだろう。
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