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 頑張れ!女子サッカー 03/12/19 (金) <前へ次へindexへ>
前半は鋭い出足で白いユニフォームの伊賀が好調な動きを見せていた。

 コンマいくつでも可能性がある限り。日テレ、伊賀を降して終戦を拒む。


 取材・文/西森彰

第15回L・リーグ決勝リーグ 上位リーグ第9節 日テレ・ベレーザvs.伊賀FCくノ一
2003年12月14日(日)12:00キックオフ ヴェルディグラウンド(第二) 観衆:100人 天候:晴
試合結果/日テレ・ベレーザ2−0伊賀FCくノ一(前0−0、後2−0)
得点経過/[日テレ]小林(52分)、大野(82分)


「よろしければどうぞ」

 ハーフタイム。運営という裏方を嫌な顔も見せずに務める、日テレ・ベレーザのベンチ登録外選手の皆さんが配っているお水をいただいた。喉を潤す水が本当に美味しい。もう、12月も半ばだというのに、ヴェルディグラウンドを照りつける強い日差しは、全く季節外れのものだ。休息を取る選手たちも、審判も額を汗が伝っている。

 L・リーグの決勝リーグもあと2節。今節のゲームと次節を残すのみだ。首位が6勝1敗1分けで勝ち点19の田崎ペルーレFC。2位に5勝2敗1分けで勝ち点16の日テレ。そしてこの日の対戦相手・伊賀FCくノ一が5勝3敗の勝ち点15で続く。勝ち点3差だが、ゴールディファレンスで大きく水をあけられる日テレとしては、勝って田崎の自滅を待つほかない。伊賀はこの試合に勝っても同時進行のゲームで田崎が勝ってしまえば、その時点で優勝の望みが消える。

「諦めず最後まで戦おう! でもサッカーを楽しもう!」

 日テレのファンがバックスタンドのフェンスに貼り出した横断幕は、そんな両チームへの最高のエールだ。



 日テレは小林弥生と酒井與恵が前後に位置するダイヤモンド気味の4−4−2。対する伊賀は堤早希と山岸靖代が左右に開いたボックスの4−4−2だ。前半は伊賀の各選手の出足が良く、激しいプレスで優位に立つ。ボールを奪うと日テレの最終ライン裏のスペースを井坂美都、原歩が狙い、ここへ縦のボールを送り込む。

 日テレは負傷を抱える小林弥生が開始6分の激しい接触プレーで傷んだこともあり、やや動きが鈍い。「うーん。それほど押し込まれているようには感じませんでしたが、前回の対戦で前半のうちに2点を奪われて、それを焦って追いかけて負けた嫌なイメージが、ひょっとしたらどこかにあったかもしれません」と日テレの宮村正志監督は試合後に振り返ってくれたが、決勝リーグ3連勝後、全ての歯車を狂わせたアウェーゲームの嫌な記憶が日テレの各選手の頭によぎっていたのか。

 そんな中でも「絶対に、相手に自由にプレーする場面を与えるな」という宮村監督の指示を守って、自陣内ではきっちりとシュートコース、パスコースを限定する。またボールを奪い返すと縦に蹴って失地を挽回したい誘惑に負けず、きっちりとグラウンダーのボールをつなぎながら、相手のマーカーを走らせる。これが後々になってボディブローのように効いてくる。



 後半に入ってボールを回す日テレのサッカーが復活。
 そして52分、小林の楔を荒川恵理子がパーフェクトなポストプレーで後ろに落とす。自ら、駆け込んだ小林が右足のアウトサイドにかけた強烈なミドルシュートを伊賀のゴールに叩き込んだ。先制点に沸く日テレの選手たち。それとは対照的にガックリとなってしまった伊賀のイレブン。田崎戦で負傷した影響か、本来の動きが影を潜めていた小林だが、勝負どころを察知してきっちりとモノにするあたりはさすがだ。

 両チームの間で揺らいでいた試合の流れが一気に日テレへと向かった。前半から忠実にプレスをかけ続けた伊賀のガソリンが枯渇してきたのだ。前半に比べて拡がった網の目をくぐるように、日テレのパスが回りはじめる。彼我の勢いを見極めて仕掛けた、右サイドバック・戸崎有紀のオーバーラップが日テレの勢いを加速する。

 伊賀の江川重光監督は、選手たちを大声で鼓舞するとともに、堤早希から小山美佳とリレーして、戸崎に奪われた左サイドの主導権を奪い返しにいく。75分、原のループパスから井坂のボレーシュート。そして右サイドをえぐって左の小山が押し込みにいった79分のチャンスなどは完全な決定機だった。さらに残り10分、4バックの左・仁科賀恵のポジションを前に上げて3バックに移行。小山を右に回して、トップ下に中長距離砲を持っている山岸を置いて勝負をかけた。

 しかし、試合巧者の日テレは、攻撃的布陣への切り替えでマークがズレた伊賀の混乱をつく。中央やや左のフリーキックを起点にして、右に展開。再び攻撃参加していた戸崎が3バックの脇をえぐってセンタリング。ファーサイドで待ち構えた大野忍が落ち着いて頭で流し込んで加点。疲労からか、ディフェンスがボールウォッチャーになってしまった伊賀は、この失点で力尽きた。



「完敗や・・・」

 伊賀の江川監督は試合後、悔しさを滲ませながら呟いた。前半の流れが来ていた時間帯にゴールを奪えていれば、日テレの動揺を誘えていたかもしれない。しかし、そうするためには決定力を云々する前のシュートへの意識が乏しかったように思える。それは両チームのシュート数を比べれば良く分かる。日テレ13本、伊賀5本。伊賀が押していた前半でも、シュート数は8対3と日テレが圧倒的に多いのだ。

 以前に江川監督に話を伺った時に「シュートを打たなければはじまらない。打てば何かが起こる可能性があるけれど、打たなければ絶対に何も起こらない。ウチはそこがね」と漏らしていたが、この試合でもフィニッシュへの消極性という悪癖が顔を覗かせる場面があった。決定機にフリーになった小山の1本を除けば、井坂と原の2トップが打った4本だけ。2列目以降の選手がシュートを打たなければディフェンス側は2トップのマークに専念できる。失点後のパフォーマンス低下とあわせて今後への課題だ。


ロスタイムに3枚の選手交代。日テレの宮村監督はきっちりと時間を
使って試合を締めた。
 日テレはこの試合に勝って決勝リーグ6勝目を飾り、首位を走る田崎の胴上げを埼玉スタジアムまで持ち越した。「相手に自由にやらせなかったこと。そしてきっちりつないで相手を走らせたことが後半になって生きたかもしれませんね」と宮村監督。きちんとビルドアップしてつなぎ、そしてシュートレンジではフリーになった選手がゴールを狙う。先制点を生んだ小林のミドルシュートはチーム全体で見せた積極性の結晶だ。

 眼下の敵を叩いてリーグ2位以上が確定。数字上は残っている優勝については「コンマいくつかの可能性が残りましたね」と水を向けると、笑いながら「まあ、優勝ができなかったとしても最後までベストを尽くすことを彼女たちに求めたいです。それにサッカーは何が起こるか分かりませんから」。決勝ゴールを奪いながら「チームに迷惑をかけたから」と厳しい表情で自己採点をした小林も「優勝とか関係なく、とにかくウチは勝つだけです」。そしてこう続けた。

「直接対決では1勝1分けで、決して田崎に負けていない。ウチが取りこぼしたのが最終的にこういうふうになっているけれど、良い形で終わりたい」

 リーグ戦は今週末、12月20日(土)、21日(日)の最終節で終了(L1参入決定戦は12月23日(火・祝)まで)。だが年明けには女子サッカーの天皇杯ともいえる、全日本女子サッカー選手権がすぐに開幕する。ライバルの田崎との対戦があるとすれば国立霞ヶ丘陸上競技場での決勝戦。そのステージに胸を張って上がるためにも、流して良いゲームなどない。


(日テレ・ベレーザ) (伊賀FCくノ一)
GK: 小野寺志保 GK: 小林舞子
DF: 戸崎有紀、豊田奈夕葉(89分/藤井奈々)、四方菜穂、須藤安紀子 DF: 藤村智美、馬場典子、宮崎有香、仁科賀恵
MF: 酒井與恵、近賀ゆかり(89分/井関夏子)、伊藤香菜子、小林弥生 MF: 山岸靖代、那須麻衣子(86分/中川愛美)、宮本ともみ、堤早希(59分/小山美佳)
FW: 大野忍、荒川恵理子(89分/山口麻美) FW: 井坂美都、原歩
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