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 頑張れ!女子サッカー 04/09/08 (水) <前へ次へindexへ>

 新潟、熊本の追撃を振り切り、勝ち点3をキープ。
 

 取材・文/西森彰
2004L・リーグ L2第8節 ルネサンス熊本FCvs.アルビレックス新潟レディース
2004年9月5日(日)11:00キックオフ スポーツの森大津球技場 観衆:160人 天候:晴
試合結果/ルネサンス熊本FC1−2アルビレックス新潟レディース(前半0−2、後半1−0)
得点経過/[新潟]藤間(17分)、大堀(19分)[熊本]寺澤(52分)


「本当は熊本市内からもっとアクセスの良い水前寺(熊本市水前寺競技場)でやることもあるんですが、今日は天皇杯の県大会決勝があるんで、こっちでやっているんですよね。もっと多くの人たちに見てもらえれば良いと思うんですけれども。L・リーグ4年目の初勝利も水前寺のゲームで、私もスタンドで泣きましたよ」

 帰りにスタジアムから肥後大津の駅まで送ってくださった、熊本日日新聞の山口尚久さんがおっしゃった。「Jリーグを目指す」という話も報道されている熊本では、静かなサッカーブームが盛り上がりつつある。「九州はスポーツが盛んですからね。1県に1つくらいあっても良いんじゃないか、って話もありますし。スポーツ担当は男子のサッカーを追いかけなくちゃいけないんで、結果として私がルネサンスの担当になっています」と山口さん。歴史的な初勝利の場に立ち会っては心情的にも捨て置けない。

 確かにアクセス面では水前寺競技場にやや劣るものの、スポーツの森大津競技場のピッチコンディションは良好で、目に鮮やかな芝の緑が飛び込んでくる。競技場の入り口でL・リーグのパンフレットを売るルネサンス熊本FCジュニアの女の子たちは、本当に元気が良い(ちなみにここではパンフレットを買うと、チームの会報とL・リーグのポスターがついてくるようだ)。「パンフレットいかがですか!」と大きな声を張り上げた女の子たちは、試合が始まるとスタンドでタンバリンを叩きながら応援する。

 地元では、女子の試合でも千人単位のファンが詰め掛けるアルビレックス新潟レディースは、遠く離れた熊本まで乗り込んでくるファンもいる。オレンジの色布をスタンドに敷き、Jリーグで培った大声で声援を送る。ただし、熊本の女の子たちが声援を送っている時には、ホームを立ててこれを自粛する。自分のチームの応援に敢えて声をかぶせるファンさえいるこのご時世。すがすがしい気分にさせられる。



 今春の全日本女子選手権では新潟が2対1で勝利。プレシーズン・マッチの忍びの里レディーストーナメントでは0対0(熊本は国体代表として参戦)。それほど差が無いと思われていた両チームだったが、6月27日(日)に行なわれたL2リーグの第3節では6対0でアルビレックス新潟レディースが、ルネサンス熊本FCを一蹴した。

「(忍びの里の時は)まだまだチームを作っている段階で、高校生を相手にしてもいっぱいいっぱいの内容でしたから」と牛浜真監督は当時を振り返る。連れて行った選手たちを一通り使って、いろいろな局面を試す。テストマッチと割り切って参加したプレ・トーナメントでは、好結果を残すことはできなかったが、それも本番へ向けての調整過程。シーズン前のきちんとした準備が、岡山湯郷Belleと3ポイント差の好位置につながっている。

「(新潟戦の)その大敗もあって『上位のチームと戦う時にはまず守ってゲームにしよう』と。後期は、チーム全体でリーグ戦の戦い方をしてみる。だから、今日のゲームもシステムを変えて臨みました」(熊本・山形秀晴監督)

 熊本は、中断期間に練習してきた5−4−1のスイーパーシステムを実戦で初めて使用した。最後方の重責を任されたのは安部友美。「カバーリングのセンスを買って」(山形監督)の起用だったが、新潟の攻撃陣がドリブルで抜けようとするところを的確に守り、なかなかフィニッシュまで持ち込ませない。シュート数が多い新潟を15分まで3本しか記録させなかった。

 だが、新潟も中央で1対1に持ち込めないと見るや、基本通りにサイド攻撃を繰り出し始める。特に渡辺樹里が幾度も小気味の良いドリブルで右のスペースをすり抜け、深く持ち込んでから折り返す。そして2列目以降の選手が、ベタ引きになった熊本のライン前にできるバイタルエリアからフリーでシュートを放つ。17分に藤間志帆、2分後には大堀幸恵が正確なミドルシュートで、熊本のゴールネットを揺らす。この時点ではまた一方的な展開になるかと思われた。



 劣勢のゲームを強いられた熊本はGK・野添七美の好セーブや相手のシュートミスにも助けられ、ハーフタイムまでそれ以上の失点を喫しなかった。そして、後半に入ると5−4−1から、慣れ親しんだ4−4−2にフォーメーションを変えて、反撃に転じる。中盤から前を厚くしたことが相手ボールへのプレッシャーを増し、それまで自由にプレーしていた新潟の攻撃陣が効果的な展開をできなくなった。

「ウチはリードしているからといって、ボールをキープして時間稼ぎなどせず、常に攻撃して得点を取りに行くチーム。あそこで手詰まりになったのは、選手たちが無意識のうちに『楽をしたい』という気持ちがあったのでしょう」(牛浜監督)

 新潟がスローダウンする中で、熊本が得た左サイドからのFK。寺澤希の蹴ったボールは、折からの台風接近を告げるバックスタンドからの強風にも乗り、ファーサイドのゴール隅へと飛び込んだ。自分の裏を突かれて奪われた2失点の借りを返す一撃。「セットプレーは大きな得点チャンスですから。寺澤のキック力もウチの武器ですし」(山形監督)。熊本が1点差として、試合は俄然面白くなった。

 さらに59分、熊本の有富明菜が負傷退場すると、それ以上熱くさせないように配慮した田上覚美主審の笛が、新潟のハードタックルに鳴らされる。スタジアム上空と同じように雲行きが怪しくなった新潟は「流れを変えようと」(牛浜監督)好調の渡辺を下げて、野村千枝子を入れる。69分には岡林亜希代に代えて、前線に吉本宏美を入れ、田辺友恵を後方で使いながら追加点を狙うが、その1点が奪えない。度重なるセットプレーで新潟を追い詰める熊本。

「余裕があるように見えた? いや、それほどのゆとりは無かったと思いますよ。ベンチもそうでしたし、1点差では何が起こるか分かりませんからね」(牛浜監督)
「あそこで追いつければゲームプラン通りだったんですけれど」(山形監督)

 ロスタイムの連続CKまで、勝負の帰趨は定かでなかったが、試合終了のホイッスルが鳴らされるまで、新潟はギリギリ凌ぎきった。昇格戦線に生き残る上で大きな勝ち点3だ。



 惜しくも1点差に泣いた熊本は風上をとった前半(ハーフタイムに風向きが変わったのだが)、5バックで臨んだことで前線が薄くなり、やや消極的なゲームをしたことにやや悔いが残る。山形監督は「そういう面があったことも確かですが、2点とられたところでフォーメーションを変えると混乱してしまう。だからハーフタイムまでは我慢しました。それでも2トップへの対応、カバーリングは良かったし、ある程度メドが立ったと思っています。2列目、3列目の選手への対応は未完成でしたけれど」と振り返った。

「今日はサイドバックのレギュラーが不在で、試合経験の少ない松元(ゆみ子)を使ったりしました。松元もこれから経験を積むことでまだまだ良くなってくるだろうし、安部がこちらの期待通り、読みの良いカバーリングをしてくれた。これからは上位には守備的に戦い、同レベルのチームから勝ち点3を得るリーグ戦の戦い方を目指します。勝ち星の目標ですか? まずあと4勝ですよ。5勝できると良いけれど」

 3年間で1勝もできなかったルネサンス熊本FCは、今、順位争いを視野に入れてリーグ戦を戦っている。昨年までと違い、レベルの近い相手と試合数が増えたことは、上位チームだけでなく、下位チームにとっても良いことだろう。



 勝った新潟の牛浜監督は「全部勝たなければいけないその中で、最低限の勝ち点3をキープできた意味は大きいと思います。残り7試合を戦っていく上で、この内容では多少不安が残りますね。ただ終わったことを言っても仕方が無いんで、これをいかに次につなげていけるかでしょう。ただ、緊張したところで勝ちきったことは意味があると思います」と1点差での勝利の意味を語ってくれた。

「選手には前回6対0で勝ったからといって、今回同じことができる保証はどこにも無い。『最大の敵は自分だ』と油断しないように言っておいたんですけれど。まだ自分たちでゲームをコントロールするところまでいってはいないですね。1点差にされた後は焦りもあったと思いますよ。トーナメントみたいな状況下で、まあトーナメントだったら延長戦までやれるんですけれども、90分で終わっちゃって引分けだったら、と」

 岡山湯郷が逃げて、新潟とASエルフェン狭山FCが併走しながらこれを追う展開だ。

「勝ち点的にはそうなっていますが、私の中ではまだ三つ巴という考えはありません。ウチが6対0で勝った熊本に、今日1点差だった。岡山が狭山に負け、狭山も下位のチームに負けている。実際は岡山が一番強いと思いますけれども、そこまでに自分たちが負けてしまっては何にもならない。まだ勝ち星を計算したり、得失点差を計算するようなところじゃないんで、どんどん得点を狙うウチのサッカーをしていけたら良いですね」

 全日本女子選手権の際に目標を「世界一のクラブにする」と語ってくれた牛浜監督。新潟が敗れた後も引き続き、他チームの戦いを視察し、オリンピック予選の各会場でも姿を見かけたように、非常に研究熱心だ。その努力を実らせ、登録初年度にL1昇格という快挙の達成なるか?


(ルネサンス熊本FC) (アルビレックス新潟レディース)
GK: 野添七美 GK: 轟奈都子
DF: 安部友美、橋田実佳、高橋桃子、奥村紗代、松元ゆみ子 DF: 岡林亜希代(69分/吉本宏美)、田中桜、片桐ひろみ、川村優理
MF: 有富明菜(59分/田代弘美)、島田佳由子、佐藤恵利子、寺澤希 MF: 江橋桂、大堀幸恵、渡辺樹里(59分/野村千枝子)、藤巻藍子
FW: 林田美由紀 FW: 田辺友恵、藤間志帆
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