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 頑張れ!女子サッカー 04/09/30 (木) <前へ次へindexへ>
岡山湯郷イレブンと子供たち
狭山イレブンと子供たち

 狭山に借りを返した岡山湯郷、次節の決戦へ向けて万全!
 L・リーグ2部 第10節 岡山湯郷Belle vs. ASエルフェン狭山FC

 取材・文/西森彰
2004年9月26日(日)12:00キックオフ 倉敷運動公園陸上競技場 天候:曇り
試合結果/岡山湯郷Belle2−0ASエルフェン狭山FC(前2−0、後0−0)
得点経過/[岡山]中田(13分、22分)


 試合前に行なわれたサッカー教室の子供たちか、L2の上位対決を見るために詰め掛けたファンか、それとも唯一の黒星をつけられた相手にスッキリ勝ちたい岡山湯郷Belleイレブンか。誰の行いが良かったのかは分からないが、前日調べた「昼過ぎから雨」という天気予報は覆された。公式記録上は「曇り」とされたが、快晴の中、僅かに雲が残る、絶好のサッカー日和である。



 昨シーズン、西日本リーグで3位以内、L1参入決定リーグで2位以内のどちらも、あと一歩のところで涙を呑んだ岡山湯郷。今シーズンは3回戦総当り15試合の6割を消化し、僅かに1敗。アルビレックス新潟レディースに3ポイント差をつけて、首位をひた走っている。L2を戦うにあたって、自分たちの力が上であると考え、守備的な戦いで挑む相手に3−5−2、3−6−1の2つを使い分けて、勝ち星を積んできた。

「L1に入ったら、ウチが守る側に回るので、恐らく4バックになると思います。本当は11節の新潟戦からL1を想定したフォーメーションで戦いたかったんですが」と本田美登里監督。夏場の中断期間に「(『オリンピックは見た?』)起きれませんでした。君が代を聞いたところで満足して寝ちゃった(笑)」(宮間あや・岡山湯郷)ほどの厳しいトレーニングを行なった。それでも、時間が足りなかった。

 もちろん、2つのシステムを使い分けることで、若い選手たちの戦術理解に時間を費やしたことだろうし、次回開催県として国体ベスト4をノルマとして課せられていたこともある。だが、最も大きな理由は後続クラブとの差が「セーフティーリード」と呼べるまでの間隔でないこと。勝負どころでことごとく競り負けた昨シーズンの記憶と、今季の至上命題「L1昇格」を考えれば「まずは結果を出してから」と考えたくなるのは当然だろう。

 岡山湯郷の年間スケジュールを大きく狂わせたのは、この日の対戦相手であるASエルフェン狭山FCに喫した敗戦だろう。狭山は現在、勝ち点18の3位につけている。前節、アルビレックス新潟レディースに敗れて、岡山湯郷との差は勝ち点に開いた。この日のゲームに勝利して、L1昇格の可能性を繋ぎ止めたい。


好守でゲームを締めた、狭山の早田志麻

 岡山湯郷のゲームメーカー・宮間あやが累積警告による出場停止中だったこともあり、狭山が立ち上がりから主導権を握った。狭山は4−5−1の陣形でスタートし、佐藤典子がDFラインを統率。相手の2トップを見て3枚が左にスライド。左サイドバックの前田秀美は中盤にも顔を出して、強烈なプレスに参加する。岡山湯郷もこれに対抗するが、宮間というボールの預けどころを失ったため、ボールがなかなか落ち着かない。結果として前線へのロングボールに頼ることになる。

 そんな苦しい展開に陥った岡山湯郷を救ったのは、田中静佳の負傷でFW起用された中川理恵、中田麻衣子の2トップだ。13分、中央にいた中川が左に流れながら狭山のDFを釣り、右サイドに大きなスペースを作る。ここに飛び込んだ中田が、中川からのパスを受けてシュート。岡山湯郷は最初のチャンスをきっちりとモノにした。先制された狭山も押し返すが、福元美穂がゴール前に座す岡山湯郷の守備は堅い。

 そして22分、岡山湯郷は再びカウンターを見舞う。最後方の福元が蹴ったボールからの早い展開で、左に開いていた中田が一気に持ち込み、中川へラストパス。中川のシュートは狭山GK早田志麻の好セーブにあったが、フォローに詰めていた中田が再び蹴りこんだ。俊足2トップのコンビネーションが岡山湯郷のペースを加速させ、前半終了までに2点のリード。



的確なプレーで舵を取る北岡幸子(紺・4番)
「前半の2点は『ポロッ、ポロッ』と入れられちゃったからね。決して崩されちゃったわけじゃないからね。あの辺が惜しかった。後半はその点を修正できたと思う」(佐藤仁威監督・狭山)

 ハーフタイムに2枚の選手交代をした狭山は後半、もう一度気合を入れ直してゲームに臨んだ。これに対して岡山湯郷はダブルボランチが、狭山の攻撃を潰し、ピッチ中央を支配する。ベテランの北岡幸子が的確なポジショニングでワイパー役をこなし、コンビを組む高畑愛美は北岡が出て行った後ろに座して、前線へのコースを切った。

「北岡がガンバ大阪の遠藤くらい若くてガツガツ体をぶつけられるのなら(ボランチ)1枚で良いんですが、年齢とともに『要領の良さ』を覚えてきましたからね(笑)。高畑は、守備はしっかりしているんですが『パスを捌く、繋ぐ』という点が今ひとつ。まあ、もともとセンターバックタイプの選手ですから」(本田監督・岡山湯郷)

 国体優勝メンバーの佐藤舞が完全に封じられた狭山は、中盤から後ろにボールを戻す場面が目に付きだした。そして、苦し紛れに左右からのアーリークロスを上げて活路を見出そうとするが、なでしこジャパンバックアップメンバーの一員だった福元が制空権を渡さない。狭山の選手たちに、ボールを持たされているような閉塞感が漂い始める。「(『ボール支配などで、ちょっと押していた場面もありましたが?』)まあ、相手がそういうやり方をしてきたこともあるんでしょう」と佐藤監督は手詰まりを認めた。

 時間の経過とともに岡山湯郷のカウンターが回数を増していく。ダイレクトパスを軸にしたオートマチックな攻撃に見えるのだが、2得点の中田は「まだまだ連携ができていないって思わせるところがありました」と理想を高く持つ。とどめの1点を奪うチャンスを幾たびか掴んだ岡山湯郷だったが、狭山GK・早田の好守もあって、それ以上の追加点を奪うことはできず。結局2対0のスコアは動かなかった。



 敗れた狭山は、この敗戦で岡山湯郷に9ポイント差をつけられ、L1昇格は数字上の可能性を残すだけとなった。「一方的にやられっぱなしじゃなかったし、サッカーにはなった。まあ、良かったんじゃないですか」とゲームを総評した佐藤監督。だが、指揮官が謙遜するほどの差は存在したのだろうか。

 GK・早田が幾度も見せた好セーブ。ラインディフェンスを敷く佐藤典子のカバーリング。そして前半で退いた(ケガか?)菅野久美子のパワフルな左足など、狭山も3位にいる理由を随所で発揮した。前回の対戦のようにボタンのかけ違いがあれば、結果はすぐにひっくり返せる。佐藤舞、早田という国体優勝組がチームに自信をもたらせれば、まだまだ強くなるだけの伸びシロはあるはずだ。



天気予報は雨だった
 勝った岡山湯郷の本田監督には「せっかく東京からいらっしゃっていただいたのに、今ひとつの内容ですいません」と、いきなり謝られた。宮間抜きで昇格を争う狭山を叩いても、その試合内容には不満が残っている様子だ。手塩にかけて育てている若い選手だからこその苦言であり、弟子たちもそのことは分かっている。

 試合終了直後から、グラウンドの入口にペンと色紙を持って列を成していたチビッコたちは、運営スタッフのOKが出ると岡山湯郷の選手たちに群がった。2得点を挙げた中田も取材を受けては、しばらく色紙やボールにペンを走らせ、また子供たちを待たせて取材を受ける。その光景を見ながら「下手なアイドルよりもたくさん書いてますね」と言うと「いや、普段はこんなに無いですよ。いつもは1枚か2枚です」と笑った。

 2トップのFWでは「パスを受ける、出す、反転してシュート、ドリブルもやらなくちゃいけない」と自分の仕事が増えることは認識しつつも「FWをやりたい」とキッパリ。「ボランチを2枚にして、国体でも結果が出ましたし、今日も勝ったし」と本田監督は、次の新潟戦も3−5−2の採用を匂わせた。希望のポジションを得た中田が、大一番でまた爆発するか? 




(岡山湯郷Belle) (ASエルフェン狭山FC)
GK: 福元美穂 GK: 早田志麻
DF: 赤井歩、藤井奈々、佐藤シェンネン DF: 市川千昌、佐藤典子、森香央里、前田秀美
MF: 安田邦子、北岡幸子、高畑愛美、杉本あすか(59分/泉紀子)、加戸由佳(72分/福原理恵) MF: 大河原美緒(H.T/田嶋祥子)、國井綾子、山田薫、菅野久美子(H.T/岡上麻里、78分/櫛笥葵)、佐藤舞
FW: 中川理恵(59分/鎌田友里)、中田麻衣子 FW: 関根めぐみ
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