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 頑張れ!女子サッカー 05/03/02 (水) <前へ次へindexへ>

 更なる飛躍を目指して
 なでしこジャパン(日本女子代表)候補のトレーニングキャンプ

 取材・文/西森彰
 なでしこジャパンの2005年最初の合宿が2月22日(火)から2月27日(日)まで、約1週間に渡って行なわれた。

 昨年末に行なわれたチャイニーズ・タイペイ戦を大勝で飾った大橋浩司監督は、2年後のワールドカップ、3年後のオリンピックを見据えて、じっくりと選手を育てている。フォーメーション練習のような「大橋ジャパン」を作るための合宿ではない。しっかりとした個人戦術を手ほどきする、いわゆるトレセンに近い形式だ。

 さらに今回は、女子チーム強化策の定番となった男子高校生とのトレーニングマッチも行なった。まず25日(金)の勿来工業高校戦は30分のゲームを4本やって1対1。「1、2本目はゲーム内容が悪くかったのに1対0で勝ってしまい、3、4本目はゲーム内容が凄く良かったのに0対1でやられた。皮肉な結果でした」(大橋監督)。

 そして合宿最終日の27日(日)は、磐城高校と対戦して3対0の完勝。結果よりも内容を求めている段階とはいえ、1勝1分けは立派な成績である。「男子高校生相手の練習試合でも『ガツン!』とぶつかっていくところが出てきた」。合宿に参加した選手たちに戦う意識が浸透していることを、指揮官も認めた。地力強化の兆候は出ている。



 取材した2月26日(土)の練習内容を振り返ってみよう。まずは朝9時半から、屋内練習場で前日の試合で出た課題をフィードバック。食事やミーティングを挟み、午後は「集中できる場所でやりたかったので」(大橋監督)、芝グラウンドから屋内練習場に場所を変更して15時半から行なわれた。

 まずは軽くアップした後に、2人1組になって対人ヘディング練習。「競り合いに負けるのはフィジカルの差ではなく、日本の選手に競り合いに勝てるスキル、テクニックがないから」と就任後初の御殿場合宿でも語っていた大橋監督。この日はヘディングにおける腕の使い方など、基本プレーを自ら示して再確認させていた。

 その後、22人のフィールドプレーヤーが11個のボールで思い思いの方向に軽く動きながらのパス練習。受け手に出すことを認識させなければ、パスはそのまま流れていくし、密集地帯にボールを蹴れば、当然、他のプレーヤーに当たってしまう。スペースが生まれる勘、そして出し手と受け手のコミュニケーションを図るためだ。さらにグリーン、イエローとゼッケンで色分けされたグループに別れ、それぞれが、ダイレクトプレーを意識した2タッチパス、ダイレクトパスとポジションチェンジを相関させた連携を確認する。

 この日はグリーンのゼッケンが、安藤梢(さいたまレイナスFC)、宇津木瑠美、酒井與惠、澤穂希、須藤安紀子、永里優季(以上日テレ・ベレーザ)、下小鶴綾、鈴木智子、柳田美幸(以上TASAKIペルーレFC)、宮間あや(岡山湯郷Belle)、原奈津美(富士見FCエンジェルス)の11人。イエローのゼッケンが、北本綾子、高橋彩子、田代久美子(以上さいたまレイナスFC)、大野忍、近賀ゆかり、四方菜穂、豊田奈夕葉(以上日テレ・ベレーザ)、磯崎浩美(TASAKIペルーレFC)、原歩、山岸靖代(以上伊賀FCくノ一)、矢野喬子(神奈川大学)の11人。

 この組分けについて大橋監督に尋ねたところ「今の時点では色にも特に意味はありません。金曜日の練習試合と半分ずつ入れ替えて、別の選手と組ませただけです。『誰々としかプレーが合わない』『誰々としかプレーできない』なんてことは許されませんからね」との答えが返ってきた。

 パスの精度はもちろん、パスを受ける体勢や、視野の確保など、指揮官自らが細かな点までチェックする。気になるプレーや、おかしなプレーが出ると、大きな声で流れを止める。そして自ら、正しいやり方を指導する。大橋監督の指導が始まると、もうひとつのグループも練習を止めて集合し、監督の話に耳を傾ける。そしてプレー再開。これが繰り返される。

 大橋監督の怒号が屋根に響き、これに呼応するかのように今泉守正コーチも大きな声で叱咤する。見ているこちらが首をすくめてしまうような厳しい練習だ。最後はグリーン、イエローの2つのチームがGKを加えての11対11で、スペースの使い方、相手のプレスを破るサイドチェンジを意識しながら、ボールの回し方のおさらい。17時半まできっちりと2時間を使っての練習を終えた。



 本番が近づけば、対戦相手を研究し、チーム戦術やメンバーの固定を行なっていく必要があるが、今年はキリンカップや東アジア選手権のようなミニトーナメントだけ。大目標となる世界大会までにはたっぷりと時間が残されている。だからこそ大橋監督も荒削りな若手を積極的に招集したり、クラブとは違う新しいポジションにチャレンジさせている。まだまだチームを固める段階ではない。

「アテネの時はチーム作りが優先になっていたので、その1年で伸びてきていた選手を入れ辛い部分があったと思うんですよ。今は、いろいろな選手を入れて個の力を見て、育てている段階です。現時点でチームを作るつもりはないです。個々のスキルアップをする。チームに戻るとハイプレッシャーの中でトレーニングをする機会が少ないので、こういうところで刺激を与えてまたチームに戻ってトレーニングを積む。その段階です」

 個人戦術は、フォーメーション練習などと違い、ひとりでも取り組める。所属チームのレベル差に関わらず、日々の練習の中で伸ばしていける部分でもある。「選手を直接指導する時間がたっぷり与えられている」ことを理由になでしこジャパンの采配を預かった大橋監督。トップダウン方式による、女子サッカー界全体のスキルアップを図っている。


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