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産みの苦しみ
2003Jリーグ ナビスコ予選第5節 柏レイソル−FC東京

2003年07月02日(水)19:00キックオフ 日立柏サッカー場 観衆4,367人 天候:曇り
試合結果/柏レイソル0−0FC東京


文/羅天 圭

 J1の中断期間の間、日本代表の試合を観てへこんだり、J2の試合を観に行って当該チームのサポーターを差し置いて審判の判定に激怒したり、中断をこれ幸いと資金稼ぎに没頭したりしていた他の人と同様、私もワクワクして柏サッカー場に行ったのである。

 余談ではあるが、筆者は柏サッカー場に電車で行くのは初めて。「まあ、行ってみりゃ何とかなるさ」ぐらいにタカをくくっていたのだが、間も無くキックオフ1時間前になろうというのに駅前周辺にその雰囲気は全くなく、大まかな方向を示す看板が1つあるだけ。レプリカを着ている人は見かけないし、公式サイトのアクセス案内に載っていた「レイソルロード」らしきものも見当たらない。

 「さて、どうしたものか・・・」と辺りを見回すと、はるか前方にレイソルのユニを着た男性を発見。これ幸いと追跡するが、彼はズンズンと人気の無い路地へと歩いて行く。「近道なのかな」などと思っていたら、何と彼は『小料理屋 こけし』に入って行くではないか!
この時間から小料理屋で一杯やって、ゆっくり食事をしてキックオフに間に合うとはとても思えない。「試合自体にあまり関心が無いのであろうか。いや、試合に行かない人がレプリカを着ているというのは、ある意味地域に密着しているのかもしれない。」などとのんきに思索している場合ではない。もはや東も西も分からなくなってしまった。

 取りあえず野性の勘を頼りに歩き出すと、やがて黄色の看板に「レイソル」の文字が見えた。「おお。あれがレイソルロードの看板か?」しかしやがて私の前に全貌を現したその看板は『健康マッサージ レイソル』・・・完全に迷子である。
だが、その健康マッサージの看板が私を救う。レイソルのレプリカユニに身を包み、レイソルカラーの小旗を手にした坊やを抱っこした親子連れ3人を見つけることに成功する。お母さんはフラッグを折りたたんで持っているし、これは明らかにコア・サポーターであろう。

 近くに寄ってみると、坊やの手にしていた小旗が阪神タイガース、お父さんの鼻歌のメロディが「レッツゴー柏」では無く「六甲おろし」だったので『こけし』の後だけに激しい不安に襲われるが、今度は何とか目的地に導いてもらう事が出来た。

          

 さて、肝心の試合であるが、正直言ってサッカー場到着までの迷走ほどスペクタクルで無かったのが残念である。前半15分までは東京のペースかと思われたが、厳しいマンマークを仕掛ける柏の前に、やがて攻め手を失っていく。

 東京は今季から加入した阿部を生かす為、中盤の配置を試行錯誤中である。開幕当初は阿部と戸田の2トップにするため、中盤をダイヤモンド型にしてトップ下にケリー、1ボランチに浅利を配して臨んだ。この形は2トップが開いて出来たペナルティ・エリアのスペースに度々ケリーが前を向いて侵入する事ができ、相手に与える中央突破への恐怖感が東京の持ち味であるサイド攻撃をさらに効果的にして大きな可能性を感じさせたが、1ボランチは必然的にカウンターに脆いという弱点を孕む(第2節のヴェルディ戦、阿部投入後に流れを掴みながら飯尾にやられたシーンはその典型)。

 アマラオ復帰後は昨年の1トップ・2ボランチに戻したが、今度は阿部が左MFのポジションにフィットしない。元々右に流れるのが得意な上に、小柄ながらも身体能力を生かしてポストに入り、1度前線から引いて来てボールに触れる事でリズムを作っていく彼のプレイスタイルが、完成されたポストプレイヤーであるアマラオと被るのである。

 そこで阿部を2トップの位置に入れ、なお且つダブルボランチにする為に中盤をボックス型に配するフォーメーションに9節の大分戦あたりからトライした。しかしこの形も問題を抱えている。生命線である右サイドアタックのために右に開いた石川とケリーの距離が開くため、石川が孤立しがちになるのである。石川をサポートするには、それまでケリーがいて現在空白のスペースに2トップのどちらかが引いて来て起点を作れるか、つまりポストプレイをFWがきっちりとこなせるか、が鍵になるのであるが・・・。

          

 果たして柏はこの東京の攻撃のキーポイントをきっちりとつぶしてきた。石川には田ノ上を張り付けてボランチから直接彼にパスを送れない様にする。ならばとFWに当ててポストプレイを試みようとすると、激しくアタックしてボールを奪い、逆襲に転じる。特に阿部は何度もボールを奪われ、業を煮やした原監督は前半の内にケリーをトップ下、阿部を左サイドのMFにしてアマラオの1トップにするが、これは機能するどころか完全に逆効果となり、阿部も石川も消えて後半は完全に柏の一方的なペースになってしまった。

 今年2度の対戦から、なぜ柏がリーグ戦で自分達より上位にいるのか、理解に苦しんだ東京サポは私だけでは無いと思うが、皆この試合で理解できたのでは無いだろうか。過去2回の対戦時にいなかった、リカルジーニョの存在が大きい。精度の高いFKだけでなく、簡単にボールを奪われずにテンポ良くパスを周囲に配り、さらにスペースへと走り込む彼が起点になる事で、マルシオ、ジュシエ、玉田らが彼を信頼して周囲を走り回る。

 東京は彼らをつかまえる事が出来ないために受け身のディフェンスを余儀なくされ、次第にズルズルと下がって間延びしてしまう。完全にサイドを崩されるシーンもあった。ボランチの位置でボールを奪い、素早いテンポで相手を押し込んでしまうのが得意の東京にとってはこの展開は苦しい。特に気になったのが、どうも三浦のプレスのタイミング等が他の選手達と噛み合わないこと。柏の前線の選手達が決定期の一つ前のプレイでミスが目立ったために救われたものの、内容は負けゲームだったと言っても良いのではないだろうか。

          

 おそらく、これは産みの苦しみなのだと思う。サッカーは足し算では無いから、期待の新戦力が入ってもチームのパフォーマンスが単純にアップする訳では無く、むしろ一時的には後退している様に見える時期もある。ここでどの道を選ぶかは監督それぞれ。アマラオを生かす為に阿部を外したり、阿部を生かす為にアマラオを外すのも1つの方法。リスク覚悟で1ボランチにし、その代りボランチはより守備的な浅利を使うという手もある。

 しかし、個人的には各選手のプレイスタイルの幅が広がるのを辛抱強く待ちつつ、よりフィットする形を模索している原監督の方針を指示している。おそらく、阿部はポストプレイヤーの役割の方がやりやすいのだろうが、シャドーストライカーの動きを追求する経験は決して無駄にならない筈である。むしろ、彼が将来世界と戦うことを仮に視野に入れているとすれば、体格からいってもそちらにより可能性があると思われる。もし戸田の動きを彼が身に付けたとしたら、戸田には無い足元のテクニックが心強い武器になるであろう。

 実は三浦より浅利を入れた方が・・・と思っていたりもするのだが(今季は浅利がスタメンを外れた以降の試合はシュート数が激減している筈である)、もし三浦が、あるいは宮沢が浅利の仕事をもキッチリとこなせる様になれば、より可能性は広がるであろう。
但し、チームを理想に向けて育てる一方で、その過程においても結果を残さなければならないのが監督の仕事。ポイントとなる試合ではより現実的な判断を下さなければならない時もきっとくる。そのタイミングを見誤ると、せっかく我慢して使ってきた選手の可能性をつぶす事にもなりかねない。原監督の今後を注視するとともに、我々サポーターにも我慢が求められていると思う。

 柏は昨年の一体何をしたいのか解らない最悪の時期を思えば、確実に正しい道を進んでいると思われる。前線の選手のパンチ不足は如何ともしがたいが、幸い柏にはまだ若いものの、矢野、谷澤ら期待の選手もいる。彼らがブレイクするまで辛抱強く待ち、その間は何とか中堅クラスの外国人でしのぐ戦略なのだろうか。

          


 最後に、せっかくの通称金町ダービーであったが、今回は紹介する程のネタには巡り合えなかった。前日に柏市があまりにも非協力的なので、チームとして移転も考えている、というニュースが流れた影響もあったのだろうか。テンションの上がらない時にネタどころでは無い、という気持ちは良く理解出来る。ただ、本当に柏市を動かしたいのであれば、市長に要求したりする以外にもやらねばならない事があるのでは無いだろうか。例えば試合開催の日は、普段サッカーにあまり関心が無い人も「ああ、今日はJリーグがあるんだ」と気付くような駅前にするとか。どうにもならなければ選挙で市民の民意を問う必要、つまりサポ自身が出馬する必要も出てくるかもしれない。

 とにかくどんな小さな事でも良いから、サポーターが自らアイディアと汗を出さねば問題を先送りにする事は出来ても解決にはつながらないのではないだろうか。応援しているだけに、差し出がましい事を書いてしまうがご容赦願いたい。
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