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ようこそJ1へ 〜新たな「道」へ〜
2003Jリーグ ディビジョン2 第44節 アルビレックス新潟vs.大宮アルディージャ


文/石毛大介

 11時を少し回った頃、新潟駅に着いた。いつもなら新潟駅構内から、シャトルバスへ行く道のりはオレンジの人たちでいっぱいなはずだが、今日はいつになく少ない。J2の試合を観戦するのに、スタジアムまでの道のりでサポーターの数が少ない、と思ってしまうのは非常に珍しいのだが、その疑問はスタジアムへ入るとすぐに解消された。新潟スタジアム通称ビックスワン。観客動員数約42,300。そのスタンドはすでに超満員。もちろんオレンジ一色だ。小さい子供を連れた家族連れなど、老若男女問わずスタンドを埋め尽くしていた。

 時間はまだ12時前だというのに。自由席の僕は席探しを始めた。がわずか1人分の席を探すだけなのだが、なかなか見つからない。今までにこんな経験はなかった。日本代表の国際Aマッチでも1時間以上前なら、自由席一人分くらいは簡単に座れる。もちろんスタジアムのキャパにもよるが、ビックスワンは4万を超える。しかも今日はJ2の試合だ。分かってはいたが、改めてアルビレックス新潟の力の源を認識した。と同時に「こういう地元にしっかりとした根を下ろし、これだけの観客を集め、この上ない後押しの強力なチームは絶対J1へいくべきだ」という想いも強くなった。

          

 やがて両チームの選手がピッチに姿を現し、練習を始める。当然スタジアム全体がアルビレックスコール。そしてイギリスの伝説のロックバンド、Queenの「We will rock you」が流れ、やがて選手紹介。スタンドのボルテージは最高潮。両チームの選手が入場し、記念撮影。そして円陣を組み、パっとオレンジの花が開くが如く、選手が散らばる。いつもの見慣れた風景だ。

 今日はアルビレックス単独で負けさえしなければJ1昇格が決まる。しかしスポーツの世界では何が起こるか分からない。僕らも数々の奇跡や不運を見てきたから十二分に理解している。当然選手たちも気合もあるが、不安もあるはず。ピッチ上で神に祈る者。両手を合わせ天を仰ぐもの。静かに主審のキックオフの笛を待つもの。スタンドもアルビレックスコールがこだまするが、当然ピッチ上の選手同様、昂ぶる気持ちとそれと同居する不安。J1昇格への道はかなり開けているものの、そう容易くはないのもまた承知。まさに「本日天気晴朗ナレド波高シ」といったところか。

 そして主審のキックオフの笛が鳴った。新潟の悲願を叶えるための90分間の戦いが始まった。僕はとうとう席が見つからず、通路階段の所に腰を下ろした。余談ですが、その後前半途中から、すぐ隣にいた観客の方から、「あそこ席空いてるよ」と言われ無事椅子に座っての観戦となりました。これも初めての経験です。あまりそうやって声をかけてくれる人いませんからね・・・ 非常に感謝しています。

          

 立ち上がりからアルビレックスの素晴らしい守備が目立ちます。「守備」といっても最終ラインでガチガチに守るのではなく、前線の上野、マルクス、ファビーニョも参加しての全員アグレッシブプレス。非常に見ていて気持ちが良いです。両サイド、中央と非常に効率良く、しかも誰一人手を抜くことなく協力プレスを行います。もちろんただのパスコース限定プレスではなく、「ここで奪って攻撃へ!」という強い意志を感じる守備です。こういう攻撃的守備を見ると非常に気持ちが良いものです。事実ボールを奪ってからの攻撃へ移るのが早い。攻守の切り替えが非常に早いし、新潟にはマルクスという個人能力が強烈なFWをはじめ、上野、ファビーニョとすぐに攻撃態勢に入れる選手が揃っています。あっという間に大宮ゴールへ迫ります。やはり「中盤でのディフェンスは攻撃への第一歩」といったところでしょうか。

 一方の大宮ですが、立ち上がりから足許パスのオンパレード。これでは新潟の協力プレスから逃れられません。案の定、一人二人とすぐに囲まれ新潟ボールになってしまいます。仮に再度大宮がボール奪取したとしても、ボール奪取された選手をはじめ、臨機応変に協力プレスをかけるので、大宮がボール奪取されなくても、苦し紛れの横・後ろパスとなり、危険な臭いが全くといって良いくらいです。しかもボール奪取後はいきなり前線へフィードしたり、サイドへ散らして攻撃するなど非常にバリエーションが豊富です。ゴール付近では大宮のディフェンスもボールウォチャーになっているので、非常に危険なディフェンスが多々見られました。「こりゃ時間も問題かも・・・」と思っていたところ、やってくれました上野優作が。

 前半10分。マルクスのFKがペナルティエリア内で混戦。遠目からでは誰が触ったのか分からない状態。新潟はゴールネットへ。大宮はクリアへ。そんな混戦の中、大宮のクリアボールが上手くいかず、上野の元へ。絶妙なトラップから持ち替えて右足でシュート。決して美しいシュートとは言えないが、シュートしたボールはコロコロと大宮ゴールへ。スタジアム全体が歓喜の渦に包まれます。上野選手に集まる選手たち。同じようにスタンドでも抱き合う者。すでに歓喜の涙を流すもの。スタジアムが一体となったゴール。さらにスタジアムのボルテージは上がります。
試合後反町監督が「気持ちの強い方が勝つと思った。やはりそういうところにボールが行くんですね」とコメントしたが、まさに全てのアルビレックスを応援する想いが乗り移ったゴールと言えるでしょう。
 その後、追加点を感じさせる攻撃もありましたが、大宮もさすがに意地をみせ、両チームとも決定機を迎え、ボール支配率はほぼ互角。そういった戦いで前半が終わります。

          

 さて後半。新潟の守備が一変します。先ほど言ったようなアグレッシブな協力プレスが影を潜めました。もちろん間合い詰めはしますが、あくまで詰め。ボール奪取の臭いが感じられる、中盤で大宮が自由にボールを支配できるようになりました。だから大宮の攻撃にも危険な臭いがしてきます。しかし新潟はアンデルソンを中心に堅固な防波堤があるので、難なく跳ね返します。前半に比べて大宮の危険な臭いは感じられるのですが、それを上回る新潟の人数をかけたスペース削除ディフェンスが主流になります。

 新潟の十八番ではありますが、前半のアグレッシブ協力プレスディフェンスを観ているので、個人的にはちょっとボルテージが下がりました。確かに忠実にリアクションディフェンスとはいえ、防いでいるので問題はないのですが、前半であれだけのアグレッシブさを見せてくれたのだから、後半も継続し、追加点を奪い、大宮の戦意を喪失させるだけのプレーをしてほしかった、というのが後半の感想です。
 大宮も高さを生かそうと選手を投入しますが、それを堅固な防波堤で防ぎます。「俺たちの頭の上からゴールは奪わせない」そんな気持ちが感じるハイボール処理でした。

 そして試合終了の笛。今日一番の歓喜の渦がスタジアムを包みます。ピッチでは選手、スタッフが抱き合い、喜びを発散させます。それはスタンドも同じ。先制ゴールを上げた以上にスタジアムが一体となります。

          

 僕は新潟がJ1に昇格して本当に良かったと思います。それは新潟が未だJ1を経験したことがないからです。僕は一貫してJ1未経験のチームに一度はJ1を経験して欲しいと思っています。それがJリーグ全体の向上になると思っています。もっと具体的には言えませんが(非常に抽象的で申し訳ありません)

 以前から思っていましたが、今シーズンと同じ戦い方では「J1で勝ち残る」ことは難しいと思います。今まではJ2でJ1へ上がるための戦い方。今度はJ1で勝利を上げるため、勝ち残るために戦います。そこは知将反町監督、十二分に理解していると思います(11/25付け続投決定!)来シーズンに向けて構想を練っていると思います。そしてフロントの方々も来季に向け既に動きだしているのではないでしょうか?

 そしてJ2にも関わらず常にビックスワンのスタンドを超満員にしてくれたアルビレックスを応援する全ての方たちへ。これからはJ1です。皆さんも新しい場での戦い、そして応援となりますが、アルビレックス新潟旋風はすでに日本全国へ届いています。皆さんの後押しがアルビレックスを奮い立たせ、躍動することと思います。J1には強豪チームが多々ありますが、どうか何があっても、アルビレックス新潟サポーターの色を失わないで、応援し続けてください。

          

最後にちょっとカッコよく・・・

「希望とは、もともとあるものだともいえぬし、ないものだともいえない。それは地上の道のようなものである。もともと地上には、道はない。歩く人が多くなれば、それがおのずと道になるのだ」 〜魯迅〜

 さて来季はJ1アルビレックス新潟として一年間戦います。このことはアルビレックスを応援する全ての人たちは誇りとなるでしょう。また新たな希望となるでしょう。そして新たな「道」となるでしょう。僕はその道を楽しみに待っています。
 それではまた来年に・・・
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