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クラシコ観戦記 (2)


文/茶美

 レアルの選手がピッチに出てくると、すごいブーイング。耳をつんざくようです。熱気が次第に高揚します。隣のno Englishのおじさんが青い紙を手に、こうやって振りかざすんだよ、という風に私の方を振り向いて合図してくれました。いよいよバルサの選手の登場です!スタジアム全体でバルサの歌を大合唱。私も青の紙を両手に高く掲げて、なんだかわからないまま、バルサ、バルサ、バールサ、と大声で叫びました。圧倒的な感動。胸に何かがこみ上げてきて、涙がにじむ。この感情は何だろう?

 試合については、名だたる方々がいっぱい解説していらっしゃるので私ごときが何か言うのもおこがましいのですが、かいつまんで感想だけをちょっと。

 試合開始直後、フィーゴがボールを持った時のうるささは、それはすごかった。翌日私が知ることになるスペインとカタルーニャの確執を考えると、バルサからレアルに移ったフィーゴはやっぱり裏切り者だ。開始20分のEto'oのチャンスに場内が揺れる。28分、ロベルトカルロスとキーパーのお見合いで、つめていたEto'oがゴール。起点はロナウジーニョでした。Eto'oという選手は、でも、全然自己中ではなく、忠実にパスを出し、ラーションを生かしていました。バルサの選手は全員がチームのために動いていて、ロナウジーニョも、あれっと言うくらいシュートを打たない。スタジアムの雰囲気もあるのでしょうが、今日はバルサが圧倒的に押していて、レアルが萎縮してしまっているような印象です。私の大好きなラウールが消えている。後で録画で観たら、彼は、守備に忙しかったんですね。ポジションも後ろの方だったし。

 あまり事前の知識がなかった私ですが、プジョールの賢い守備と、デコの献身的な走り、シャビの視野の広さに感動しました。いつもにこやかに見えるロナウジーニョも印象的でした。相手に倒されて、痛い痛い、と言った感じで自分の頭をなぜなぜしている仕草なんて、たまらなく心が和みました。シュートを失敗しても、シュートが打てたことがとってもうれしい、というようにニコニコしている(ようにみえる)、自分がファールして審判に怒られれば、ごめんなさい、よくわかってます、次はもうしませんから、と愛想笑いをしながら謝る。ラーションのポストも献身的でしたねえ。すべての場面に感動しながら、試合はどんどん進み、2点目の、ロナウジーニョ、デコ、ファンブロンクホルスト(こんな読みでよいですか?)とボールが渡ったシーンは美しかった。もうこのときには、バルサの勝利間違いなしといった雰囲気がスタジアム中にあふれていました。それほどバルサの決定的チャンスが多かったのです。



 試合の流れがどうのこうのというより、個々の選手のプレーに眼が奪われたまま、ロナウジーニョのPK成功。ベッカム、ジダン、ラウールが下がって(そういえばベッカム出てたんだ、という感じでしたねえ)、次元の違いに息を飲みました。レアルでは、後半のグティの頑張りが目立ったぐらいかなあ。いいところなかったなあ。ロナウドはただ突っ立っているだけにしか私にはみえませんでした。サッカー通の方はバルサのディフェンスがしっかりケアーしていたとか、ロナウドのプレースタイル自体が決定的な瞬間に爆発するものなんだ、とかおっしゃるんでしょうけど、私にはどうも性が合わない。これはもう、嗜好の問題でしょうね。

 ラーションやシャビ等、バルサの選手が下がるときの場内の拍手がとても暖かいのも印象的でした。Jではどちらかというと、新しく登場する選手への期待の拍手が大きいことが多いのですが、この日のカンプノウは存分に働いて去っていく選手への感謝と賞賛の気持ちが圧倒的に大きい。シャビが下がるときは、私も思わず立ち上がって、拍手を送り続けました。翌日私が買ったユニも6番(シャビ)です。

 試合内容の記憶は本当のことを言うとほとんどないのです。帰国して、録画をみて、あらためて、いい試合だったんだ、と思いました。レアルも決して押されっぱなしだった訳ではないし、チャンスもそこそこあったし。しかし、カンプノウでは、我らのバルサ!!!という感情が先行して、とても冷静ではいられませんでした。一つのクラブを応援しながら年をとり、クラブの浮沈を見守り、そしてそれを自分の子や孫に語り継いでいく、といった文化が欲しいと思いました。

 そのためには、国や、ある地域が、いつも経済的に、精神的にひとつにまとまっていなければならないし、クラブ自体もしっかりとした経営基盤を持たなければならないし、そのためには人材が必要だし。プロのサッカーが始まったばかりの日本では、まだまだやることがたくさんありますよね。残念ながら今のところ私のこんな気持ちを受け取ってくれるクラブがない。というか、まだまだ未熟。



 試合が終わって、バルサの歌を歌って、周りの人たちと握手をして抱き合い、喜びを放出すると、意外とあっさりと皆が帰り始めました。選手もすぐに引っ込んでしまいましたし。でも、人混みに流されて、外に出ると、暴走族だかなんだかがえらい騒ぎを繰り広げていました。バルサの旗を掲げて、道路中央をバイクや車で曝走する若者。いいなあ。
 
 地下鉄の駅はさすがに込み合いましたが、さんざん注意されていた“危険”はやっぱり感じませんでした。国立競技場に5万人入った時の、試合後込み合う信濃町や千駄ヶ谷といった感じで、人々は順序よく歩き、おじいちゃまやおばあちゃまがいて、家族連れがいて(日本と違い幼児は全くいませんでしたが)、外国人がいて(私の周りはドイツ語が飛び交ってました、日本人の男二人連れも多かったなあ)、皆表情に充実感があふれていて、車内は込んでいるのにとても静かでした。
 
 宿を取った繁華街のリセウ駅の近くでは、深夜1時近くというのにどんちゃん騒ぎ。スポーツバーが数多くあり、中から若者たちの歓声が聞こえ、道路でも人々が談笑しながら歩き、カフェバーも殆どが営業中。私もホテル前のカフェでワインとサラダの遅い夕食をとり、日本へ電話しました。夫の「いい試合みたねえ!」という一言に我に返り、そうだ、クラシコみたんだ、これは世界中に放映されていたんだなあ、とあらためて感動を噛み締めました。


(続く)
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