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中越地震被災者に捧げる一勝。でもまだ終わらない。
2005Jリーグ ディビジョン1 第27節 アルビレックス新潟vs.横浜F・マリノス


文/石毛大介

 2004年10月23日、僕らから様々な「あたりまえ」を奪い去りました。新潟県中越地震。メディアから流れる情報に、我々は自然災害に対しての無力さを強く感じました。流れてくる情報は増え続ける死傷者の数。避難所生活を強いられる被災者の方たちの苦しい状況下の映像。絶望的な状況にも関わらず、僅かな望みに賭け懸命の救助活動をする方たちの姿・・・。

 この日僕は日産スタジアムで横浜対FC東京の試合を観戦していました。後々アルビと対戦するからスカウティングだ、と訳の分からない理由で行っていました。試合終了後、自分が目まいで揺れているのか?と錯覚してしまうほどの揺れを感じ、「どこかでそれなりに大きい地震でもあったのかな?」と思い、帰りの電車内で携帯端末からニュースを見ると、そこには・・・。

 驚きというかショックというか、今でもあの時の気分は忘れません。変な言い方かもしれませんが、アルビを通して、こんなにも自分の中で、新潟というものが非常に身近になったんだ、というのを感じた瞬間でもありました。この地震の影響で、いつも通い慣れたビッグスワンは避難所への援助物資輸送などの前線基地となり、そのため週末の楽しみであるJリーグ開催が不可能となり、リーグ1試合、天皇杯1試合を国立と平塚で開催。2ndステージは大躍進の途中でしたが、負けが重なり2ndステージ優勝戦線から離脱。選手らに与えた精神的なダメージは大きかったことと思います。

 あれから1年。時がたつのは早く感じますが、それと比例して復興も進んでいるとは言い切れないようです。今もなお9000人以上の仮設住宅者がいるとのことです。今日の帰りの新幹線で、長岡駅を出てすぐ右手を見ますと、たくさんの仮設住宅が見えました。今まで知らなかったのですが、そのことを今日、スタンドの隣の方から聞いて知りました。何だかちょっと考えてしまいました。自分は新幹線往復してサッカー観戦を楽しんでいる。一方で、自分のせいではないのに、こういう生活を強いられている方たちもいるんだ、と・・・。

 僕は自然災害での被災の経験がありませんので、正直そういった方の気持ちは分からないと思いますし、何もできませんが、とくかく少しでも今よりも良い生活ができるように。そしてアルビの活躍が、そういった方たちの気分を少しでも晴らすことができれば、と思う気持ちは変わりません。改めて犠牲となられた皆様に謹んで哀悼の意を表するとともに、被災地域の1日も早い復興を心からお祈りいたします。


 現在、順位上はアルビとそう離れていない横浜。ですが、「個人、個人の力量は、間違いなくマリノスさんの方が上だという大前提でゲームを始めた」とは試合後の反町監督がコメントで、まさにそのとおり。リーグ前半戦では1−4の惨敗でした。「順位が近いから」なんて思ったら、大差で叩きのめされてもおかしくない相手です。「今日はとにかく我慢に我慢を重ねる試合になるだろうな・・・。8月の千葉戦のようになるかもな・・・。勝ちこそはできなかったけど高質な千葉相手に粘り強かったもんな・・・。もしかすると今日は耐えに耐えて、その対価として勝利が・・・」何て考えていました。

 中越地震から一年。試合前には犠牲者に哀悼の意を表して黙祷が捧げられました。あれから1年。こうしてサッカーを楽しめ、また地元チーム(僕は地元ではありませんが・・・)が必死になって戦う姿に想いを込めることができる喜びを感じ、哀悼の念を想いながら、キックオフの笛が響き渡りました。

 やはり実力差といいましょうか、アルビと横浜との差を感じるのには、そう時間はかかりませんでした。ボールの支配率、勝負の仕掛率はマリノスが上。特に中盤でのそれは非常に高く、単にボールを「持っている」というのではなく仕掛率も高いですから、高質な中盤をベースにした試合展開を披露します。もちろんそれを甘んじて受けるアルビではありません。当然必死に迎撃します。「やっぱり我慢に我慢を重ねた試合展開になりそうだ・・・」。試合開始後しばらくしてからの印象です。


 あの試合は、後半終了間際に先制し同点に追いつかれた試合ですが、千葉のレベルの差を感じずにはいられないサッカーを前に、本当に我慢を重ね、その対価として後半終了間際の先制弾があったと思っています。結果引き分けてしまいましたが・・・。「我慢比べのサッカーだったら、アルビは簡単には負けないゾ・・・」。そんな想いが沸々と湧いてきました。

 しかし僕個人は無責任にそう思えますが、実際ピッチで戦う選手らは、その脅威を体感しているわけですからネ・・・。やはりセットプレーは怖いし、それに強い選手も揃っている。そして全ての形から得点を取れる雰囲気が満ちています。中央からもサイドからも、と。前半すぐに感じたボールポゼッション率などですが、もちろん試合が進むにつれてさらに強く感じます。ピッチで戦う選手らは本当にイヤだと思いますヨ。

 アルビは中盤でのプレッシャーからのボール奪取はあまり見られず、いつもの最終ラインで人数をかけての専守防衛ブロックで迎撃するから、どうしても中盤や最終ライン前での相手のボールポゼッションは高い。もう少し早い段階からのプレッシャーも必要だと思います。中盤やサイドで。ですから決定的チャンスも横浜の方が上。ただ前半30分過ぎまで、横浜相手に守勢にまわるにせよ、よく粘り強く対応していると思いました。当然穴はあるし、間合いが甘い感じもありますがネ。

 とにかく我慢。何が何でも我慢。そうすればその我慢の対価として・・・。またアルビの速攻に警戒してか、マリノスの戻りが早いので、アルビのカウンターも途中で遮られ決定的チャンスまでいく場面が少ないです。アルビも横浜のPA内でのチャンスもいくつかありましたが、横浜だって身体張ってブロックします。我慢我慢・・・。

 そして前半のうちに待望の先制点が生まれます。中央でリマとエジとのワンツーからエジのシュートが決まります。前年王者の横浜からの先制点。スタンドのボルテージは、ここ最近の連敗や勝ち星から見放され、溜まっていたものを一気に噴出したかのような盛り上がりとなります。エジのシュートもそんな想いを乗せた渾身の一撃。

 前半は当然、全体的にはマリノス優勢でしたが、アルビが少ないチャンスもモノにしました。アルビが力では上のチームに勝つ場合、こういった数少ないチャンスをブラジル人選手らで作り出し、それを一瞬で確実にモノにするケースがあります。いい雰囲気で前半を終わったと思いました。でもこれを2点3点でひっくり返す力は十二分にあるマリノス。絶対に気は抜けません。


 後半に入ると横浜は山瀬、大島、マグロンとカードを切り、試合後半には松田を前線に上げてのパワープレーを挑んできました。横浜も当然必死です。そんな中、やはり魅せてくれましたヨ。苦労人、男木寺が。ゴール前の混戦から、ほぼフリーの状態となった大島のシュートを、木寺がファインセーブ。彼の全ての運動神経が反応したかのようなセーブ。やはり雰囲気が変わります。それに呼応するかのようにアルビ守備陣も懸命に守ります。前半同様、集中切らさず守ります。マリノスもそう簡単に崩せそうにありません。しかしボールポゼッションした時の巧さは感じるので、一瞬たりとも気が抜けません。ただ前半に比べてマリノスが、やや攻撃の迫力に衰えを感じました。なぜでしょうか・・・? どこか単調になってしまったといいましょうか・・・

 そしてその守備陣の頑張りが攻撃陣にものりうつったのか、カウンターからのチャンスでマリノス陣内に攻め入る場面も作りました。得点には繋がりませんでしたが、少ないチャンスを確実に、決定的チャンスにしています。今日のアルビは、前半だけではなく、当然穴はありますが、90分間集中切らさずギリギリまで戦っていると思いました。今日は特に見ている我々に強く感じさせるものがあります。試合終了が近づくにつれて、そう簡単に同点に追いつかれる気がしなくなってきましたヨ。

 ですが終了間際、激しい打ち合いが。エジを残して全員守備。マリノスが仕掛けますが、ゴール中央はアルビ専守防衛ブロックで迎撃し、PA付近での混戦では、懸命に身体を張ります。無様で不恰好でもとにかくこの勝負に勝つ。そんなスピリットの表れだと思いました。いや本当に終了間際の混戦にはハラハラドキドキ・・・。この混戦の場面でもそうですが、ピッチで戦ったアルビの選手らだけではなく、今日の入場者数39,207人の想いが見えないオレンジの壁となって弾き返していたのかもしれません。また普段は脚がでない場面でも、あるいは反応できない場面でも、いつもなら相手のコンタクトに負ける場面でも、その想いが僅か数センチ選手らの身体を動かし、最後の最後まで選手らの足の裏を、ピッチから離さなかったのかもしれません。


 今日の試合は本当によかったです。勝点3をとったこともそうですが、最後の最後まで懸命に戦ってくれたと思いました。それはスタジムだけではなく、TVで観戦していた方も感じたのではないでしょうか? ただせっかくの勝利ですが、いつも感じていることは拭いきれませんでした。それは・・・ せっかくの久々の、そしてビッグスワンでの勝利ですから、このへんにしましょう。

 次節はアウェイでの神戸戦。最下位のチームですから残留に向けて必死にくることは間違いないですから侮れません。単に最下位のチームと思うことなかれ、というところでしょうか。ちょっと僕は行けませんので、次は11月の天皇杯の対草津戦になります。去年は初戦敗退。今年はJ1昇格後初初戦突破といきたいものです。では。
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