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 webnews 03/06/11 (水) <前へ次へindexへ>
レッジーナ逆転で残留決定、アタランタは本拠地でセリエAに別れを告げる。
セリエA2002〜2003シーズン プレーオフ2ndレグ アタランタvs.レッジーナ

2003.6.2(月) アッズーリ・ディタリア
試合結果/アタランタ 1−2 レッジーナ(前1-1、後0-1)


文/西森彰

 雹を伴った嵐によって開催が一日延びたセリエAプレーオフの第2戦。マッシモ・タイービはどんな気持ちでこの一戦を迎えたのだろう。2年前、同じプレーオフの舞台ではレッジーナの一員として戦った。そして試合終了5分前、ヴェローナのミケーレ・コサットによるゴールを許してトータル2-2、アウェーゴールによる降格に涙した。その後レッジーナを離れたタイービはこのプレーオフで元の所属チームを相手にすることになったのである。

 第1戦は敵地で負けなかったとはいえスコアレスドロー。アタランタもアウェーゴールを奪うことはできなかった。ゴールキーパーにかかるプレッシャーはいつも以上にキツイ。ホームで涙した2年前のことを頭から振り落とすことはできていたかどうか。当時のチームメイトと彼のどちらかが、また降格の屈辱を味わうことになるのだ。因果な巡り合わせだが、タイービにとって一番当たりたくなかった相手だったかもしれない。



 その対戦相手のレッジーナにしても2年前の悪夢を忘れることができたわけではない。10人になったアタランタにホームゲームで勝ち損ねてしまった。山ほどあったチャンスはかつてのチームメイトのスーパーセーブによって生まれては消えていった。負傷を抱えている中村俊輔は後半から強行出場に踏み切ったが、バーの上を越したフリーキックが唯一の見せ場で、この第2戦でもルイジ・デ・カーニオ監督の選ぶ11人に入ることができなかった。

 中村が交代出場するような場面が発生したら、それはレッジーナが守備を放棄せざるを得ない、すなわちビハインドを背負った展開ということだ。逆に中村がベンチを温め続けるということは、レッジーナが得点を必要としない局面、つまり残留が濃厚ということになる。日本のファンは「絶体絶命の場面に登場。起死回生のフリーキックで残留決定」などとコミックのようなストーリーを期待してしまうが、同時に現実がそんなに甘くないことも知っている。



 第1戦が0-0ということもあり、静かな立ちあがりになるかと思われたが、延長の1日で闘志が充満しきっていたのか、両チームとも積極的に前に出る予想外の展開。6分、左からのCKをコッツァが直接狙ったが、タイービがライン上のパンチングで逃れる。アタランタも2分後、ザウリが中央のスペースに飛び込んでシュートのお返し。さらに10分、レッジーナがディ・ミケーレのドリブルからシュートを放つ。試合開始から10分のうちに決定的なシュートが3本も生まれる。

 どちらにとっても喉から手が出るほどほしい先制点。その1点は18分、ホームのアタランタにもたらされる。アタランタにとってこの試合最初のCKをヴグリネッツが蹴る。カーブのかかったボールに敵味方とも触れず、ファーサイドにいるシヴィーリャの足元に流れ、打ちきれずにもう一度戻した中央に戻したボールをナターリが蹴り込んだ。ナターリを中心に輪ができると同時に、ホームチームのゴールに、ベルガモのスタジアムが沸きかえった。

 しかし、アタランタの歓喜も長くは続かなかった。29分、左サイドから崩し、ヴグリネッツが決定的な場面で追加店を逸するとレッジーナが反撃。ファルシーニ、コッツァから中央につなぎ、ディ・ミケーレがラインの裏を狙ったパスをボナッツォーリが胸で落とすと、このボールをコッツァが攫って突進。シュートコース上に飛び出したタイービの体に当てながらも、執念でアタランタのゴールに捻じ込んだ。32分、追う者と追われる者が立場を変えた。

 36分、直前にシヴィーリャ交代でピッチに入っていたルスティコの軽いマークを交わしたディ・ミケーレが抜け出すが、ナターリの好タックルにボールを奪われた。43分にもシミュレーションに見えるプレーで相手DFのクリアミスを誘ったが、目の前に転がったご馳走を枠の外に吹かしてしまう。この相次ぐ逸機は命取りになるのか? 勝負は1-1のまま後半戦へ持ち越された。



 ハーフタイムを挟んで再びピッチに姿を現した両チーム。タイスコアとはいえ、このままではアウェーゴールによって降格が決まるアタランタは、予想通り、ゴールを奪うために総攻撃を仕掛ける。後半開始早々にガウティエリがシュートを放ち、その後も相手陣内に押し込む。してもちろんレッジーナは最前線のプレイヤー以下11人全員が自陣に退いて、アタランタからシュートコースを奪い、必死の防戦。

 71分、アタランタのフィナルディ監督は、レッジーナの中村同様、ここまでベンチに座っていた10番を投入する。22歳のピナルディは75分、ボールをキープしながら機を窺い、レッジーナゴール正面にできた狭いスペースにパスを通す。ヴグリネッツを経由したボールがフリーのガウティエリにこぼれたが、至近距離からのシュートをベラルディが体に当てて、アタランタにゴールを許さない。

 後半のほとんどを守備に追われたレッジーナに決定的な追加点がもたらされたのは84分だった。右サイドでボールを持ったディアーナが中央を見る。その瞬間、ディ・ミケーレの動き出しに釣られてラインを下げたアタランタの4バック。ペナルティボックス手前に生じたスペースでボナッツォーリにボールが渡り、左足で放たれたシュートはアタランタのゴール右隅に吸い込まれていった。レッジーナはセリエA残留を決定的なものとした。

 実質2点のアドバンテージを握ったレッジーナのデ・カーニオ監督は、87分、88分に2、3枚目のカードを切って時間をきっちりと消化。もう、考えなければいけないのは、防護幕に覆われたチューブまでの逃走ルートだけだった。約5分のロスタイムの後に、試合終了の笛を吹くピエルルイジ・コッリーナ主審。ワールドカップでブラジルの優勝を告げたホイッスルは、1年後、セリエA最後の残留チームを決定した。



 今をときめくキエーヴォ・ヴェローナと同じく、若い選手たちにきっちりとした戦術を染み込ませてセリエAに旋風を起こしたアタランタ。最後の最後に致命的なサスペンションでエースを欠いたことは余りにも痛かった。こけら落としのさいたまスタジアムで日本から同点ゴールを奪ったクリスチアーノ・ドニは、来シーズンどのチームで戦うのだろうか。そしてまたもや降格の憂き目にあったタイービは…。

 レッジーナは予定より2試合多く消化したものの、当面の目標であったセリエA残留を決定。数少ない南部のクラブとして意地を見せた。終盤はケガもあって出場機会を失っていった中村俊輔だが、残留に貢献した1人であることは間違いないのだから大いに胸を張ってほしい。現実的な戦術を貫いたデ・カーニオ監督がナポリに移るということで、またレギュラー奪還の期待も高まる。

 だが、デ・カーニオ監督の後が噂通りズデネク・ゼーマン氏に決まるとすれば、これは巷間伝わるような強い追い風ではない。純正3トップを置くゼーマンの4-3-3の中盤では90分間忠実なプレッシングが要求される。そしてシンプルにダイレクトでショートパスをつなぐという戦い方が中村のプレースタイルにあっているかというと…。「4-3-3の攻撃的布陣では、中村の攻撃力が生きる」という単純なものではない。レッジーナを出るのか、残るのか。いずれにしろ中村がその作業を、ドニやタイービほど沈んだ気持ちで行わなくて済むのは幸せなことだ。


(アタランタ) (レッジーナ)
GK: タイービ GK: ベラルディ
DF: シヴィーリャ(36分/ルスティコ)、カッレーラ、ナターリ、ベッリーニ(71分/ピナルディ) DF: イラネク、トッリージ、フランチェスキーニ
MF: ガウティエリ、ダボ、ベッレッタ(83分/イナシオ・ピア)、ザウリ MF: ディアーナ(88分/サヴォルディ)、パレデス、モザルト、コッツァ(78分/バルガス)、ファルシーニ
FW: ロッシーニ、ヴグリネッツ FW: ディ・ミケーレ、ボナッツォーリ(87分/モラビト)
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