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 webnews 03/06/17 (火) <前へ次へindexへ>
  ジーコジャパンへ追い風は吹くか
ようやくスタートを切ったジーコジャパン。コンフェデ杯に間に合うか?
キリンカップ2003 日本代表vs.パラグアイ代表

2003年6月11日(水) 19:22キックオフ さいたまスタジアム 観衆:59,891人 天候:曇りのち雨
試合結果/日本代表0−0パラグアイ(前0−0、後0−0)


取材・文/西森彰

 平日の夜、そして雨の予報ということもあってなのだろうか。浦和美園駅に降り立つと曇り空にチケットをかざしたファンの姿がめだった。ワールドカップでダフ屋に対する免疫が低下したのか、最近はスタジアム周辺までチケットを持たずにやって来る人や、余りチケットを持ってきて定価で譲り渡す人が増えている。プロのダフ屋はもう少し後ろめたそうにコソコソやっているが、彼らは堂々としている。厳密にいえばこちらも「アウト」なのだろうが、警官もこれくらいは見逃してあげてほしい。

「いや、こんなことするのは初めてなんですよ。友達と見に来る予定だったのに、急に用事が入ったらしくって…。ここまできてみたら他にもたくさん同じような人がいたから、ちょっと心配になりました。売れて良かったです。ラッキーでした」

 カテゴリー1のチケットを外国人に定価で譲ることができた青年は、あたかも不良債権が処理できたようにホッとした表情を浮かべていた。チケットが供給過多になっている感があるのは、増え過ぎた代表戦に対する倦怠感か。それともなかなか結果を出せないでいるジーコジャパンに対する失望感からだろうか。



 試合内容がどうであれ、相手関係がどうであれ、試合に勝っているうちは「今日は勝ったものの…」という前置きとともに世間の批判もトーンダウンする。どの監督もそうやって時間を稼ぎながら、チーム力を上げていく。だが、新たな船頭は最大のチャンスであるデビュー戦でサーカスのような試合をおこない、勝ちそこなった。それでも新しい船頭はその内容・結果に満足し、プレスの大半も話題性溢れるキーワード「黄金の中盤」というコピーを歓迎し、礼賛した。

 初回模試の自己採点でゲタを履かせた日本から流れも去っていった。東アジア選手権が中止に追い込まれ、格下とのマッチメークはなくなり、強豪国の前に勝利が遠くなっていく。早い段階で築くべき戦術ベースは、強敵に対するその場限りの対処療法によって構築されないまま、時間だけが過ぎた。この迷走は決してジーコだけに発しているわけではない。原因を探っていけば、あのジャマイカ戦に日本中でOKを出してしまったことに辿りつくのだから。



 なかなか両目の開かないこうした状況下で、新生・日本代表はコンフェデレーションズカップへの壮行試合ともいえるパラグアイ戦に臨んだ。日本の先発メンバーはアルゼンチン戦とは一変。GKの楢崎正剛と中田英寿の2人を残し、後は総入替という大胆な布陣である。中盤は中村俊輔と中田英が前に、福西崇史と遠藤保仁が後ろに並ぶボックス型の4−4−2。左サイドバックで起用された三都主アレッサンドロの動きが注目される。

 対するパラグアイはスコアレスドローに終わったアウェーのポルトガル戦からメンバーをそれほどいじらなかった。GKのビジャール、DFのカニサ、ガマラが退いただけで、残り8人がそのまま先発してきたのだ。今シリーズの遠征では中心となる選手が多数揃ったベストメンバー。先日のアルゼンチン同様、日本のメディアからは「1軍半」のレッテルを貼り付けられていたが、それはパラグアイにとって失礼だろう。



 日本はキックオフから猛ラッシュを仕掛け、パラグアイをコーナーに押し込んでいく。6分、左サイドで中田、高原とつないでのセンタリングに中村が左足であわせたが、シュートはパラグアイGKタバレリの正面に飛んだ。抑え気味の三都主に対し、クラブで一緒にプレーする坪井慶介と右のディフェンスを担当した山田暢久は、右サイドのスペースに幾度となく上がって攻撃に厚みを増す。逆サイドの三都主はDFの仕事を第一に考え、左サイドのスペースを埋めることだけに腐心する。

 守備力に定評があるパラグアイは専守防衛を決め込んだように、日本の攻撃を撥ね返すことに力のほとんどを傾注する。たまに見せる数少ない攻撃パターンは、ロングボールをファン・サムディオに預けるか、セットプレーでディフェンダーにハイボールをあわせるかに限定された。日本は宮本恒靖を中心とした守備でこれにきっちりと対応し、パラグアイに決定機を作らせない。両チーム無得点のままハーフタイムを迎えた。



 後半に入ると日本の攻撃は一層、迫力を増した。抑え気味のポジショニングをとっていた三都主も、徐々に高い位置を取り始める。52分には欧州組の中田、高原、中村がパラグアイのチェックを力強く撥ね返し、ペナルティボックスに侵入した三都主にパスをつなぐ。本来のポジションまでようやく辿りついた三都主は、対面するパラグアイDFをフェイントで翻弄し、シュートを放ったが僅かに右に逸れた。天を仰ぐ三都主。

 この辺りから徐々にパラグアイの運動量が落ちてきた。日本のハイテンポな試合展開に引きずり込まれたアウェーチームは長旅の疲労からか、湿度の高い気象条件によるものなのか、徐々に足が止まった。パラグアイは交代選手を送り込んで運動量を補充するが、中盤の守備バランスが明らかに崩れ始めた。ボールを楽につなげるようになった日本。ゴールを奪うためのお膳立ては整った。

 そして76分、中盤でボールを持った遠藤にパラグアイのマーカーが詰めきれず、さらに日本の選手が左サイドに2枚余った。またもや攻撃参加をしてきた三都主にボールが渡り、フリーの状態でゴール前にクロスが入る。ボールにかぶった高原とDFの裏にできたスペースに走り込んだ大久保が、パラグアイのゴール左隅に強烈なヘディングシュートを叩き込んだ。

 スタンドに向けて力強くガッツポーズを見せた大久保だが、無情にも副審の旗が上がっていた。三都主がダイレクトで入れようかどうか、一瞬、迷った分だけのオフサイドだったか。ビデオで見ても本当に微妙なジャッジ。これまで日本代表が未勝利のさいたまスタジアム2002。五万人を超える観衆の後押しを受けたこの日もホームタウンディシジョンは存在しなかった。



  日本代表へのメッセージを綴る
 結局、スコアは記されずタイムアップ。日本は、パラグアイの粘り強いディフェンスにゴールを奪えなかったものの、終始ペースを握ったまま、90分間を終えた。ボールポゼッションは55対45、シュート本数では6対7と互角の数字が残っているが、実際はそれ以上に日本が押していた。もちろん、ディフェンスの確認を第一としたパラグアイのゲームプランあってこそだが、親善試合として見れば満点とはいえないまでも、まずは及第点の内容といえよう。

 三都主のサイドバック起用は攻撃面での厚さと守備面のロスを差し引いてプラスマイナスゼロ。それでも2回の決定機に絡んだのだから、ジーコ監督にしてみれば計算通りのパフォーマンスだったのではないか。もちろん、ディフェンスは安心して見ていられるほどではなかったが、ボランチの福西と遠藤が絶妙のポジショニングでバランスをとったため、失点につながるようなシーンは見られなかった。

 大久保、高原の2トップは常にゴールを狙う姿勢でパラグアイの最終ラインに脅威を与え続けた。注目されたイタリア帰りの中村、中田英についてはまだまだ上昇の余地を残したが、オフ・ザ・ボールの局面で相手マーカーを釣りながらスペースを作り出す動きは良かった。彼らが頻繁なポジションチェンジを見せることができたのも、ボランチがしっかりと相手の攻撃を潰して、前線を攻撃に専念させられたからこそだ。



 試合終了後、挨拶に回る日本チームに対し、スタンドの一部からは「トルシエ・ニッポン」コールが起こった。この日の試合だけを切り離して見れば、これほど屈辱的な批判を浴びるような内容ではない。ファンのこの行為はスコア以上の完敗だった韓国戦、スコア通りの完敗だったアルゼンチン戦に続き、なかなか勝利を手にできないフラストレーションが生んだブーイングなのだ。

 確かに「負けないこと」に意識を置いた消極的なパラグアイからは勝利がほしかった。それでも、ひとりひとりが身に着ける代表の青いユニフォームからある種の覚悟が滲み出ていた。代表のレギュラーに生き残りたいニューフェイスと欧州組のプライドが、ジーコ体制になってから最高のパフォーマンスへとつながった。「ガス抜きのための起用」という意図を良い意味で裏切った鹿島抜きのメンバーは、指揮官の目にどのように映ったか。

 6月18日のコンフェデレーションズカップ初戦は正念場だ。今後予定されている親善試合を含めて、今の日本が勝利を計算できる相手はこのニュージーランドぐらいしかない。ジダン等がメンバーから抜けるにせよフランス相手にアウェーで好結果を残すには初戦の勢いが絶対条件。大会初戦にピークをあわせて、とにかく勝ち点3という結果を残すこと。それができなければ3戦でフランスを後にすることになるだろう。


(日本代表) (パラグアイ代表)
GK: 楢崎正剛 GK: タバレリ
DF: 山田暢久、坪井慶介、宮本恒靖、三都主アレサンドロ DF: トレド、マルドナード、カセレス、ダ・シルバ
MF: 福西崇史(46分/中田浩二)、遠藤保仁、中田英寿、中村俊輔 MF: モリニゴ(63分/イララ)、ボネ、A・オルティス、ブリテス(46分/サナブリア)
FW: 高原直泰、大久保嘉人 FW: クエバス(85分/ロペス)、サムディオ(59分/バレイロ
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