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 webnews 03/06/18 (水) <前へ次へindexへ>
選手とサポーターでもぎ取った勝ち点3
2003年Jリーグ ディビジョン2 第17節 アルビレックス新潟vs.サガン鳥栖

2003年6月14日(土) 14:04キックオフ 新潟スタジアム 観衆:35.460人 天候:曇時々晴
試合結果/アルビレックス新潟2−1サガン鳥栖(前0−1、後2−0)
試合経過/[鳥栖]鳴尾(30分)[新潟]ファビーニョ(73分)マルクス(88分)


取材・文/砂畑 恵

 スタジアムに入ったとたん、不思議な感覚に襲われた。新潟陸上競技場へは何度か訪れたことはあるが、ビッグスワンでの観戦は初めて。それが原因なのだろうか。J2では驚異的と言える35,460人という観客数が驚きを与えているのだろうか。しかし、J1や代表戦などを考えれば、大きなスタジアムや、この日の3万人を越える大観衆が初体験というわけでもない。それなのに、何ゆえにこうも戸惑いを覚えるのか?

 勿論、試合開始前から熱狂するアルビレックスサポーターの中にあって、ニュートラルな立場で観戦する自分が場違いに感じたせいもあるだろう。だが、その大きな理由はビッグスワンの構造にあるように思う。ビッグスワンは屋根つき二層式のスタジアム。同じ構造のスタジアムには、鹿島スタジアムや、等々力競技場等があるが、それらのスタジアムの2階席が後ろに引いているのに対し、ビッグスワンの2階席は1階席の大半を覆うように迫り出している。この違いがある種の圧迫感を生み出しているからのようだ。

 けれどこのビッグスワンの持つ閉ざされた空間は、サポーターや選手にとっては大事なことなのだ。観客が目の前の試合に集中し、熱狂が渦巻き、選手にとっては後押しを受けやすい、絶好のシチュエーションを産み出す。例えるならイタリアの中規模クラスのスタジアムにありがちな、コロッセウムタイプのスタジアムの雰囲気に似ている。選手入場の大歓声は映画「ベンハー」でのグラディエイター入場にも重なり、オレンジの海原に浮かぶ氷山のような、ほんの一角に見える青いサガンサポーターが気の毒に思えたほどだ。



 大声援に勇んだアルビレックスの立ち上がりは悪くなかった。圧力とも思える異様な空気にサガンの選手は受け身に回らざるを得ないといった様子に見える。それでもサガンの面々は場に飲まれていたわけではなかった。荒れる海が凪ぐのをじっくりと待つ心の余裕はちゃんと残していたからだ。最初の10分を持ち堪えたサガンが効果的に攻めたファーストチャンスはビッグなチャンスでもあった。古巣のアルビレックスに放った鳴尾のループシュートがクロスバーを直撃。これが反撃の狼煙となって徐々にだがサガンはペースを握り返す。そしてついにはサガンが先制点を奪ったのだ。

 味方の蹴ったパスがアルビレックスの選手に当ったのだが、幸運にもアルビレックスのゴール方向にボールが零れる。それを拾った米山が佐藤大に横パス。横パスはぶれてはいたが、DFを抱えてゴールに背を向けた佐藤大がどうにか足を当てて、右横にいた鳴尾へボールを託す。ドリブルを仕掛けた鳴尾に三田・丸山・秋葉が迫り来る中、鳴尾は冷静に逆サイドを狙ってシュート。ポストに当たってゴールに突き刺さった。

 鳴尾の得点は思った以上にアルビレックスにダメージを与えていた。ゲームスタッツを見てみるとFKはアルビレックス15に対し、サガンが22となっている。それだけアルビレックスがサガンに多くのファウルを犯していたことになる。それと同時にアルビレックスの選手は、度々吹かれる審判の笛にイライラを募らせて不満を露にする。ただアルビレックスの選手がサガンに与えたFKのエリアがゴール附近では少ないことは、チームに幸いしていた。逆にアルビレックスの獲得したFKは、ゴールを直接狙える位置のものが半数を占めていた。自分のノートにメモされているものだけで8回に及んでいる。

 しかしアルビレックスは攻めあぐねた。直接狙えるFKのほとんどを枠から大きく外す。54分には鈴木が1発レッドで退場し、アルビレックスにとっては大きなアドバンテージとなるはずが、最終局面となるとなかなかサガンのDFラインを破ることが出来ない。前半から絶妙な飛び出しをしていたGK藤川のファインプレーもアルビレックスに暗い影を落とす。61分には安を投入して、アウトサイドのファビーニョをFWに近いくらい高めに配し、山口を前線のフォロー役にしたが、シュートの多くはミドルレンジから放つものばかりだった。



 当然、アルビレックスサポーターも苛立ちが隠せなくなる。相手選手や審判にも手厳しいブーイングが飛んだ。そして、それをも凌ぐアルビレックスの選手に対する励ましのコールが起きる。ゴール裏だけではなく、J1ではやや大人しい客層が大半を占める、メイン・バックックスタンドや2階席からも怒涛のような歌声が響く。これでこそホームだ。しかし既に後半も25分過ぎるのにアルビレックスにゴールの気配が感じられない。

 だが73分、「もしかしたらこのまま最後まで行くんじゃないだろうか」と思い始めた私の予感を、吹き飛ばすゴールは生まれた。右に開いたマルクスが、安のパスを受けるとセンタリング。中央にいた上野がDFを潰す。逆サイドに突っ込んだファビーニョがかろうじてボールを捉えた。ワンバウンドしたボールは力強さこそなかったが、ゴールネットを目指していった。

 同点となったくらいでは、上位を窺うアルビレックスには満足はない。サポーターもその気持ちには変わりがない。攻めに攻めまくるアルビレックスの選手達に、ヒートアップしたサポーターが背を押す。傍目から見ていると、審判までが熱気にのぼせて前半よりも判断がぶれていると感じたほど。今度はサガンの選手がファウルを取られる度に、納得できないといった表情を浮かべる。1人少ないことでサガンのディフェンシブハーフに疲労の色が濃くなる、交代やむなしと私は考えていたのだが、残った2枚のカードはジェフェルソンと服部を投入し、攻めることを選択した。アルビレックスも船越を投入し総攻撃を仕掛けた。ところがサガンはさしたる攻撃が出来ないまま。反対にアルビレックスは船越がゴール正面でファウルを受けてFK。マルクスが厳しいコースへ蹴り込み、サポーターの声援に応えた。



 試合後、スタジアムを見回すと、ゴール裏のアルビレックスのサポーターが、友人だけではないだろう、知らない者同士でも肩を組んで揺れながら凱歌を奏する。さまざまなJのチームを見てきた。応援ではレッズやアントラーズ、ベガルタが有名所だが、それらの既存に類をみない、新たなサポーター文化が新潟に生まれていることを私は悟った。


(アルビレックス新潟) (サガン鳥栖)
GK: 野澤洋輔 GK: 藤川康司
DF: 尾崎瑛一郎 アンデルソン 丸山良明 三田光 DF: 鈴木勝大 朝比奈伸 川前力也 中村祥朗
MF: 山口素弘 秋葉忠宏(80分/船越優蔵) 深澤仁博(61分/安英学) ファビーニョ(89分/神田勝夫) MF: 川崎元気 佐藤陽彦 大友慧(83分/服部浩紀) 米山大輔(58分/森惠祐)
FW: マルクス 上野優作 FW: 鳴尾直軌 佐藤大実(77分/ジェフェルソン)
SUB: 前田信弘 末岡龍二 SUB: 高橋範夫 宮川悟
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