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 webnews 03/06/20 (金) <前へ次へindexへ>
J2上位直接対決。カード14枚の大乱戦は、冷静沈着な新潟の大勝
2003Jリーグディビジョン2 第18節 川崎フロンターレvs.アルビレックス新潟

2003年6月18日(水)19:04キックオフ 等々力スタジアム 観衆:6,079人
試合結果/川崎フロンターレ0−4アルビレックス新潟(前0−1、後0−3)
得点経過/[新潟]マルクス(44分・52分)、ファビーニョ(82分)、宮沢(90分)


文/原田桂

 茂原にレッドカードが出された直後に事件は起こった。ピッチになだれ込む一部の川崎サポーターと無数の投げ込まれたペットボトル。そこには、普段の「家族で観られるスタジアム」とは対極の光景があった。0−4のスコアーとは少し違った理由で騒動が起こっていること、またこの騒動に加担していない多くの人々も暴徒化した一部のサポーターと似たような気持ちでいることは、スタジアムの雰囲気から容易に想像できた。興行として成り立っているとは言い難いこの試合への観客の不満が爆発した瞬間だった。



 序盤ペースを掴んだのは、大方の予想通り6連勝中の川崎。いつものように激しいプレスをかけ、中盤でボールを奪いカウンター気味に攻撃を仕掛ける。だが、攻撃の要であるジュニーニョが執拗にマークされ、なかなか決定機を作れない。9分、頼みのセットプレーも箕輪のヘッドは惜しくもゴールポスト。CBアンデルソンを出場停止で欠き不安定だった新潟守備陣の隙を突けない。

 時計が進むに連れ、安・丸山のCBコンビが落ち着き、試合は小康状態に。新潟は、無駄なボールポゼッションを避け、川崎が有利な中盤ではやりあわずロングボール主体の攻撃に終始する。さらにファビーニョ・深沢を高い位置に上げ、4−2−4に近い形を採り始める。川崎両サイドのアウグスト・長橋を最終ラインに吸収させ、攻守の基盤になっている川崎中盤のプレッシャー(人数)を削ぐのが狙い。また、もし互いの前線が孤立したとしても、ジュニーニョをしっかりと抑えている分、ファビーニョ・マルクスのいる新潟が俄然有利になる。序盤の猛攻も織り込み済みだったであろう反町監督の川崎対策は完璧だった。

 昇格を懸けた大一番、先制点はやはりセットプレーからだった。44分、FKからマルクスが豪快に決める。前評判では不利とされていた新潟の先制。
 大勢に影響のないリスタートポイントの位置までも修正し、厳格すぎるファウル・カード基準で試合の流れを断ってしまう主審のゲームコントロールには、多少フラストレーションが溜まったが、それさえ目をつぶれば楽しめる試合展開。平日にも関わらず詰め掛けた6千人あまりの観客は、1点を争う攻防を期待してハーフタイムを迎えた。



 だが後半開始直後、観客の期待を裏切る事が起こってしまう。川崎CB渡辺がこの日2枚目の警告で退場。そのカードは異議によるものなのだが、1枚目の警告ならともかく(それでも妥当とはいい難いが…)、退場の是非を決まる2枚目に出すには到底考えにくいものだった。渡辺の退場で、川崎の選手・主審がさらに冷静さを失い、試合は壊れ始める。さすがに主審を注目せずにはいられなくなった。

 そんな中、52分新潟が追加点をあげる。またもマルクスのFK。数的不利な状況でプレッシングサッカーをし、しかも前線にはキープできる選手が居なく「槍」ばかり。無謀ともいえる川崎の戦術に当然の報いであろう。
 ようやく川崎ベンチは、ポストプレーのできるバルデスを投入。しかし、衰えを隠せないそのプレーは悪い流れを変えることができない。焼け石に水だった。

 勝負が決まったこの辺りから、判定に冷静に対処していた新潟にもイエローが連発。57分から15分間で、両チーム異議だけで3枚・計6枚のイエローが飛び交う。これは、主審がゲームコントロール不能に陥り、ピッチ上で行われているものがもはや「サッカー」ではないことを意味していた。

 82分に、FKを決めたファビーニョが看板を乗り越えて警告2枚で退場。そして終了間際カウンターから宮沢のダメ押しゴールの後、リスタートを巡る小競り合いで茂原が一発退場。プレー自体より主審に対する不信感が露骨過ぎたのがレッドの主因であろう。
 そしてとうとう、「サッカー」を観れないことに対するサポーターの不満が爆発した。事態はすぐに収拾したが、J2上位直接対決は殺伐とした空気を残しながら終了。なんとも後味の悪い結末だった。



 出場停止で次節4人を欠くことになった以外は、ある意味理想的な試合運びができた新潟。前節の試合などを分析し、導き出したであろう川崎対策は完璧。審判がどうであれ、スコアーはともかくとして結果は揺るぎ無かったであろう。得点がセットプレーとカウンターのみというのが気にかかるが、去年のように創造的な崩しがより鋭利なものになれば、他チームにとって相当脅威なものになるはすだ。

 一方この試合、限られたメンバー・状況でしか機能せず、しっかりしたチームが弱点を突けば簡単に崩されてしまう今年のサッカーの脆さが露呈された格好となった川崎。確かに守備に関して(プレス)は目を見張るものがある。また新潟以外の他チームとの兼ね合いを考えるとあまり大きく変えられないのが実状だが、このままだと実力・人気がある程度で「落ち着く」ことは目に見えている。例えば、現状の戦術を維持しながら技術的な面を重視するなど、機械でいうところのもう少し「あそび」の部分を作る必要があるだろう。

 そして、この日一番の問題は、なんといっても試合を壊してしまった主審であろう。試合の流れを断ってしまう細かいリスタートの位置の修正や、「アピール」も「異議」としてしまう判定。危険なプレーを流し、警告と通常のファールの間の「注意」という概念がなく、ポジショニングも良くない。現時点で、重要な試合を任せられるレベルの主審ではなかった。

 そういった意味では、この主審の責任というよりは、大一番にこの主審をあてたリーグ運営側に大きな責任があるといえるかもしれない。おそらくチームなどには、この騒動に対してなんらかのペナルティーが科せられるであろうが、加害者たるリーグ運営側が裁くというには何か理不尽さを感じてしまう。もちろん決まりをやぶった方も悪いが、ここは一つリーグ運営側には「情状酌量」や「執行猶予」といった類いの言葉が出ることを期待したい。
 ファウルにただ「警告」を出すだけでなく、時には「注意」で済ますことで逆に質の高い「試合」になることもある。


(川崎フロンターレ) (アルビレックス新潟)
GK: 吉原慎也 GK: 野澤洋輔
DF: 岡山一成 渡辺匠 箕輪義信 DF: 尾崎瑛一郎 安英学 丸山良明 三田光
MF: アウグスト 山根巌 茂原岳人 長橋康弘(69分/伊藤優津樹) 今野章(50分/久野智昭) MF: 山口素弘 秋葉忠宏 深澤仁博(86分/末岡龍二) ファビーニョ
FW: ジュニーニョ 我那覇和樹(55分/バルデス) FW: マルクス(79分/船越優蔵) 上野優作(87分/宮沢克行)
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