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 webnews 03/06/23 (月) <前へ次へindexへ>
エトー、値千金の一発。カメルーンが初戦でブラジルを破る。
FIFAコンフェデレーションズカップ フランス2003 グループB ブラジル代表vs.カメルーン代表

2003年6月19日(木)21:00キックオフ サンドニ(スタッド・ドゥ・フランス) 観衆:46719人
試合結果/ブラジル代表0−1カメルーン代表(前0−0、後0−1)
得点経過/[カメルーン]エトー(83分)


文/中倉一志

 ブラジルGKジーダのゴールキックをカメルーンがヘディングで跳ね返す。ごくありふれたボールがルシオの前に戻ってきた。確実に処理をしようとしたルシオの前でワンバウンドしたボールは微妙にコースを変える。その瞬間、まるで獲物を捕らえる豹のような素早さで走りこんできたエトーがボールの落ち際を右足で一閃。約25メートルの距離から放たれた強烈なドライブシュートはジーダの左手の上を越えて、そのままゴールネットに突き刺さった。

 時間は83分、場内には割れんばかりの声援が響き渡る。カメルーンがブラジル相手に初めて上げたゴール。しかも、それは対ブラジル初勝利を決定付けるゴールでもあった。その後も落ち着いて試合を進めるカメルーン。表示された4分ものロスタイムにも動じるところを見せず、巧みにボールをキープして時間を使っていく。そしてホイッスル。カメルーンに歓喜の瞬間がやってきた。ブラジル相手に初めて記録した勝利は、決勝トーナメント進出に向けての大きな一歩となった。



 この日のブラジルはアドリアーノを1トップ気味に置き、1.5列目にロナウジーニョとジウを配する布陣。最終ラインはブラジル伝統のフラットな4バック。中盤はエメルソンとクレベルソンがダブルボランチを組み、トップ下にはヒカルジーニョが控える。しかし、戦い方はあくまでも慎重。前目に3人を配した攻撃的な布陣でカメルーンを自陣内に閉じ込めるが、決して無理をせずにゆっくりとパスを回していく。リスクを最小限に抑えて、やがて来るであろう決定機をじっくりと待つ構えを見せる。

 対するカメルーンも慎重な姿勢はブラジルと変わらない。ブラジルに対するプレスは自陣内に10メートルほど入ったところから。ボールをキープされると素早く引いて守りを固める。ソングを中心とした最終ラインは、アドリアーノ、ロナウジーニョを決して自由にさせずブラジルに決定機を許さない。ブラジル相手に勝利を得るには、まずは守りを固めてからのカウンター。そうした意識が徹底されている。

 互いに相手の様子を窺がうような展開の前半の決定機は互いに2回ずつ。試合は静かなまま前半を終えた。しかし、狙い通りに試合を進めたのはカメルーンだった。自陣に押し込まれているように見えてもチャンスは与えず、そして機を見てカウンターから決定機を作り出した。一方のブラジルは、慎重になりすぎたのか、それとも連携が合わないのか、流れの中からはチャンスを作れないまま。2度の決定機も個人技によるもので、ブラジルらしさを発揮できないまま前半を終えた。



 果たして、いつブラジルがテンポアップするのか。後半の鍵はそこにあった。しかし、ブラジルはいつまでたっても同じリズム、同じテンポでボールをつなぐだけ。両サイドからの崩しは機能せず、トップにもボールが入らない。時折、ロナウジーニョが光るプレーを見せるものの、それがつながっていかない。そんなブラジルに対し、カメルーンは冷静に自分たちのプレーを続けていく。そしてブラジルの様子を敏感に感じ取ると。プレスの位置が少しずつ高くなっていく。

 前半よりも高い位置でホールを奪えるようになったカメルーンは、1トップのエトーの下に控えるフォエにボールを当てて、そこを起点にボールを左右に展開。右からはジェレミ、左からはイドリスがサイドアタックを仕掛け、エトーが虎視眈々とゴールを狙う。決して攻撃に転ずるチャンスは多くはないが、その攻め方は狙い通り。そして、16分、29分にはエトーのスピードを生かして決定機を作り出した。思い通りに攻められないブラジルを尻目に、カメルーンは着々と自分たちのゲームプランを消化していく。

 そして83分、とうとうカメルーンに先制点が生まれた。ルシオがルーズボールの処理を一瞬ためらったところを巧みについたエトーの見事なプレーだった。さらに巧みだったのがここからの試合の進め方だった。決して守りに入らず、高い位置からブラジルにプレスをかけるのはそれまでと同様。そして、ブラジル陣内でボールをキープして時間を使った。身体能力の高さばかりが注目されるアフリカ勢だが、最後まで組織を崩さず、ロスタイムの4分間を危なげなくすごして試合終了のホイッスルを聞いた。



 欧州組を一部しか召集せず、あくまでもテストの意味合いが強いブラジル。不本意な成績に終わったW杯の雪辱を期し、再び世界の舞台に実力をアピールしたいカメルーン。互いの大会の位置づけが違っていたことも、勝敗の結果に影響を与えていることは間違いないが、そうしたことを差し引いてもカメルーンの勝利は賞賛されるべきだろう。ともすれば、身体能力ばかりが注目されるアフリカ勢だが、この日のカメルーンは身体能力に加え、鍛えられた組織力と戦術眼を身につけていることを証明して見せた。

 あらかじめ練られていたであろうブラジル対策を着実に遂行し、リードした後も落ち着いて試合をコントロールして見せた。ブラジルに「らしさ」がなかったとはいえ、思い描いたとおりに試合を進める、したたかささえ感じられる試合だった。それも、勝利に対する強い欲求があったからこそだろう。まだ1試合が終わっただけ。しかし、カメルーンが今大会の中心になりそうな予感がする試合だった。


(ブラジル代表) (ブラジル代表)
GK: ジーダ GK: カメニ
DF: ベレッチ ルシオ ファン クレーベル DF: ベリエ メトモ ソング チャト
MF: クレベルソン(79分/アドリアーノ・デ・ソウザ) ヒカルジーニョ エメルソン ロナウジーニョ MF: ジェレミ ジェンバジェンバ フォエ(64分/アトゥバ) エンバミ イドリス(67分/ジョブ)
FW: アドリアーノ(66分/イラン) ジウ FW: エトー(95分/エンディフィ)
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