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 webnews 03/06/24 (火) <前へ次へindexへ>
「らしさ」の出ないブラジル。アメリカに勝つも内容は疑問符。
FIFAコンフェデレーションズカップ フランス2003 グループリーグB ブラジル代表vs.アメリカ代表

2003年6月21日(土)21:00キックオフ リヨン(スタッド・ジェルラン) 観衆:20306人
試合結果/ブラジル代表1−0アメリカ代表(前1−0、後0−0)
得点経過/[ブラジル]アドリアーノ(22分)


文/中倉一志

 初戦でトルコに敗れたアメリカは、なんと先発メンバーを7名も代えるという布陣でブラジルとの対戦に臨む。チームに活を入れるためか、それともターンオーバー制を利用して1人でも多くの選手に経験をつませたいということか。いずれにせよ、この試合で敗れればグループリーグでの敗退が決まる。しかも相手はブラジル。アメリカは徹底的に守ってカウンターを狙うという、極めて当然の戦術を採ってブラジルに挑んだ。

 敗れればグループリーグでの敗退が決まるのはブラジルも同じ。そのブラジルも機能しなかった攻撃に変化をつけるべく先発メンバーを入れ替えてきた。中盤をアレックスを加えたダイヤモンド型の構成に代え、ヒカルジーニョを左サイドに、アレックスをトップ下に起用。最前線はアドリアーノとロナウジーニョの2トップだ。実力でアメリカに優るのは誰もが認めるところ。どれだけ攻めの形を作れるかが、この試合のポイントだった。



 試合は負ければ終わりという状況がそうさせるのか、互いに極めて慎重な立ち上がりを見せる。しかし、そういった状況を考慮しても、両チームともあまりにも消極的過ぎた。アメリカは徹底して引くばかり。ボールに対してプレスにいくこともない。これでは自陣の低い位置でしかボールを奪うことが出来ず、得意のカウンター攻撃の威力はないに等しい。時折、左SBのチェルンドロがサイドを駆け上がろうとするものの、攻撃の形にならないのは当然のことだった。

 ブラジルもピリッとしない。互いの実力を比較すれば、アメリカに足元をすくわれる危険性はかなり低い。そのわずかなリスクを警戒するよりは、最終戦でグループリーグ突破を争うことになるであろうトルコに対し優位に立つために、1点でも多くのゴールを狙うのが定石のはずだ。しかし、ボールを一方的にキープするものの相手を積極的に崩そうという姿勢が見られず、チャンスを作れないままに時間だけを費やしていく。

 全くチャンスらしいチャンスがない試合にゴールが生まれたのは22分。最終ラインで不用意にボールをキープするバーハルダーに襲い掛かったアドリアーノがボールを奪取。GKとの1対1の場面からシュートを放つ。一度はGKがはじいたものの、そのこぼれ球を再びアドリアーノが無人のゴールに流し込んだ。しかし、その後、互いに1度ずつの決定機を作った以外は、これといったチャンスもないままに時間だけが経過。見るべきもののないままに前半が終了した。



 後半に入ると、さすがにアメリカが前に出はじめた。しかし、ブラジルもそれは承知の上。両サイドに蓋をしてアメリカのスピードを殺す。元来、スピードを生かしたサイド突破からのカウンター攻撃を持ち味とし、遅攻が苦手なアメリカは攻め手を見つけられず手詰まり状態が続く。ブラジルもブラジルで、一方的にボールを支配して試合を進めるが、縦に有効なパスがつながらず、こちらも攻め手は見つけられないまま。後半も退屈な展開が続く。

 互いに決定機がなかったわけではない。ブラジルは6分に直接FKにエメルソンが頭であわせ、10分にはアレックスの強烈なミドルレンジのシュートがゴールを襲う。そして31分にはロナウジーニョがあわやという直接FKを放った。アメリカも16分、ドノバンの強烈なシュートがスタンドを沸かせた。しかし、どれも単発なものばかり。試合の流れを変えるまでには至らない。いつアメリカが逆襲するのか。いつブラジルがアメリカを翻弄するのか。観客はそれだけを思いながら試合を見つめている。

 しかし、退屈な試合に変化は訪れなかった。1−0でブラジルの勝利という結果を互いに受け入れたかのように、両チームはただ時間を使い、そして終了のホイッスルを聞いた。もともと大会の位置付け自体が不明確なコンフェデレーションズカップ。どのチームも、2006年W杯を睨んでの新しい選手たちの発掘という意味合いが強いだけに、シチュエーションによっては、こういう試合になるのもやむを得ないのかもしれない。



 しかし、主力メンバーの多くを招集していないとはいえ、ブラジルの内容は悪すぎる。ロナウジーニョが1人で気を吐いているが、それがチーム全体につながっていかない。原因は、両SBが効果的な攻撃参加が出来ないことと、今大会期待されていたヒカルジーニョが、高い位置へ出て行ってプレーすることが少なすぎることに集約されている。そのため、ボールをキープできても攻撃に広がりがない。またリズムに緩急がつけられず、絶えずゆったりとしてリズムでボールを運んでいるのも攻めきれない理由のひとつだ。

 アメリカを下したブラジルは勝点4でトルコと並んだ。しかし、得失点差ではトルコがブラジルを1点リード。ブラジルは勝ち以外では決勝トーナメントに進むことが出来なくなった。しかし、過去2戦のパフォーマンスでは、難敵トルコに苦戦を強いられることになりそうだ。コンフェデレーションズカップに縁が薄いブラジルだが、どんな大会でも優勝が義務づけられている。そんな責任を背負いながら戦うブラジルは、トルコに対して「らしさ」を見せることが出来るのだろうか。


(ブラジル代表) (アメリカ代表)
GK: ジーダ GK: ハワード
DF: ベレッチ(70分/マウリーニョ) ルシオ ファン クレーベル DF: ギブス(78分/コンベイ) チェルンドロ バーハルダー ボカネグラ
MF: クレベルソン エメルソン アレックス(73分/ジウ) ヒカルジーニョ MF: ビーズリー クライン(57分/ルイス) マストローニ(84分/トゥエルマン) スチュアート
FW: ロナウジーニョ アドリアーノ(89分/イラン) FW: マティス ドノバン
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