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 webnews 03/06/29 (日) <前へ次へindexへ>
  表紙の下にはFC会員や、入場人数の数が
川崎、虎の子の1点を守り、粘る水戸を振りきる。
2003Jリーグ ディビジョン2 第19節 水戸ホーリーホックvs.川崎フロンターレ

2003年6月22日(日)16:01キックオフ 笠松運動公園陸上競技場 観衆:3,663人 天候:曇
試合結果/水戸ホーリーホック0−1川崎フロンターレ(前0-0、後0-1)
得点経過/[川崎]ジュニーニョ(67分)


取材・文/西森彰

 水戸ホーリーホックが発行しているマッチデープログラムの一番下、ブルーのライン上に白抜きの文字で書かれているのは、ファンクラブ会員数、後援会会員数、そしてホーム平均入場者数。昨年、存続が取り沙汰された水戸。クラブの厳しい実情をファンに伝えることで、より一層の支援を求めたいという意志を感じる。

 水戸は笠松運動公園陸上競技場、水戸市立競技場、ひたちなか市総合運動公園陸上競技場と3つのスタジアムを使い分けているが、ホームスタジアムとして登録されているこの笠松運動公園陸上競技場の試合では、今シーズン3,000人以上をキープしている。この試合を前にホーム平均入場者数は3,112人。昨年の2,739人を大幅に超えることが当面の目標だ。



 1試合平均で400人の観客増。その大きな要因が開幕から見せた素晴らしいスタートダッシュだろう。第3節まであっと驚かせる開幕3連勝。その後の2連敗で終わったかに見えたが、再び盛り返し第1クールを2位でフィニッシュすると、第2クールでも2勝2敗3分けと五分の成績で粘った。前節の第18節終了時点でも堂々4位につけている。

 この好調を支えているのが1試合平均失点で0.5点も減らした守備の安定だ。広島から加入したトゥーリオを中心にした3バック、そして戻りの早い中盤からなる守備ブロックは、水戸のゴール前に分厚い壁を作り、相手チームはなかなか決定機まで辿りつけない。

 この日の相手は前節で連勝が止まった川崎フロンターレ。勝ち点34は水戸に勝ち点6差をつけての3位。こちらは前節の大乱戦の影響で茂原岳人、黄川田賢司、渡辺匠の3選手が出場停止という悪条件下のゲーム。水戸としては文字通り目の上のたんこぶとなっている川崎を叩いて、昇格戦線を引っ張るトップグループについていきたい。



 水戸は、前節まで18節フル出場を続けているトゥーリオ、栗田泰次郎がこの日も先発。中盤で栗田がボールホルダーを追い詰め、ゴール前ではトゥーリオが撥ね返す。そうして川崎を前がかりにしておいて、ボールを奪うと1トップの小野隆儀の後ろから、樹森大介、山崎理人らがピッチを斜めにクロスするように動いて、速攻に出る。そのたびに川崎の両翼は後ろをとられるが、箕輪義信、伊藤宏樹、岡山一成と揃った3バックも、押し込むリスクは承知のうえ。落ち着いた対応で、失点は喫しない。

 川崎の方は、左サイドのアウグストを起点に攻撃を展開したが、クロスボールでなかなか競り合いに勝てない。単純なクロスでは崩せないことを実感したのか、サイドからショートパスをつないで中央に届ける。ゴール前でスルーやキックフェイントなどを多用するブラジルらしいアイデアも見られたが、水戸のディフェンスも粘り強く、なかなかシュートチャンスに結びつかない。

 川崎はチームとして完全にマスターした中盤のプレスで勝負したいが、水戸はそのスペースを放棄し、互いのペナルティエリアに勝負を限定する。川崎もボールポゼッションを第一に置いたセーフティーな戦いを続ける。ゴールを狙える位置ではシュートを打って攻撃を切る。なかなか枠を捉えられないとはいえ、押され続けた水戸の守備も焦れる。相撲でいう喧嘩四つのような状態で45分が終了。0−0というどちらにとっても複雑なスコアで後半戦を迎えた。



 後半に入って15分ほどは水戸のペースで試合が流れた。樹森のスルーパスに小野が抜け出しかかったり、トゥーリオから樹森、冨田と大きな展開を絡めた攻撃などは、得点につながってもおかしくなかった。しかし、6月に入って3試合未だに無得点という決定力不足が、ここで顔を覗かせてしまった。しかし、今までになくゴールまでの距離が近く見えたのだろう。前半とは逆に、水戸の重心がやや前にかかった。前半、人の壁に苦しんだ川崎にスペースが与えられた。

 67分、水戸の攻撃を受けとめた川崎は、相手の中盤が戻りきれないうちに、カウンターからポンポンとシンプルなパス交換で前線のジュニーニョまでつなぐ。水戸のGK本間幸司は、前に出ようかどうか迷った分、中途半端なポジショニングになってしまっていた。その頭上を抜くジュニーニョの鮮やかなループシュートが川崎に待望の先制点をもたらした。



 先制点を奪った川崎の石崎信弘監督は「1点で充分」と言わんばかりに、殊勲のジュニーニョを3分後に中村憲剛との交代で退かせる。累積警告でリーチのかかったエースを下げて、1点を守り倒そうという考えか。水戸は、鳥羽俊正に代わって北川佳男、山崎に代わって吉田賢太郎と大柄な攻撃型の選手を投入し、ハイボールからのパワープレーに活路を求め始めた。

 最後の10分間、ややホームチームに肩入れした牧野主審は、軽いファールチャージにもフリーキックを与え、水戸のゲームプランに追い風を与える。しかし、スタジアムの風は水戸にとって向かい風で、守る川崎には風上の利があった。両チームの選手たちは川崎のペナルティエリア内に林立し、空高くから振ってくるボールに頭をあわせていった。

 死に物狂いで攻める水戸は81分、左のコーナーキックから森が頭にあわせ、最後は北川が詰めたが、川崎GK吉原慎也がセーブ。86分にも右からのクロスをファーサイドでフリーになった小野がシュートしたが、飛び出した吉原の体が気になったのか、大きく枠を外してしまった。勝ちたいのは水戸だけではなかった。川崎とて昇格戦線に残るために必死だった。気迫と気迫がぶつかる好ゲームは3分ちょっとのロスタイムをとり、アウェーチームが1点リードしたままタイムアップ。



 川崎は試合内容、結果ともに最悪だった新潟戦を引きずることなく、終始冷静な戦い方で勝ち点3を挙げた。0−0で折り返しながら、全く焦ることなく戦うことができた後半のプレイぶりから、精神的な成長が感じられた。これからはサガン鳥栖、モンテディオ山形、大宮アルディージャと駆逐艦タイプのプレイヤーが揃ったチームとの対戦が続く。この水戸戦を収穫として次節以降につなげていきたい。

 この日の入場者数は3,663人。水戸はこの試合で平均入場者数をさらに増やした。後はバックスタンドのコアファンが出すかけ声にあわせて、メガホンや手を打ち鳴らすメインスタンドのファン(その中には招待客もいるかもしれない)をどれだけ取り込んでいけるか。この日のように好ゲームで終わらせてはいけない。苦しかろうが負けがこもうがついてきてくれるのはコアなファン。結果が伴なわなければ浮動票の再来場にはつながらない。

 ここ数試合、完封負けが続いているのは、他のクラブが水戸を「お客さん」ではなく「対戦相手」としてきっちり研究してきた結果である。今後、対等な相手としてマークされる中、前半戦のような成績を残していけるかどうか。相手が出て来ない時、そして自陣に引かれた時の戦い方を構築する必要がある。すでに水戸は、一歩上がった新たなステージで、答えを出すことを求められているのだ。


(水戸ホーリーホック) (川崎フロンターレ)
GK: 本間幸司 GK: 吉原慎也
DF: 小川雅己、トゥーリオ、森直樹 DF: 箕輪義信、伊藤宏樹、岡山一成
MF: 秦賢二、鳥羽俊正(72分/北川佳男)、栗田泰次郎、冨田大介、樹森大介、山崎理人(78分/吉田賢太郎) MF: 長橋康弘、山根巌、久野智昭、アウグスト、今野章(89分/塩川岳人)
FW: 小野隆儀 FW: ジュニーニョ(70分/中村憲剛)、バルデス(83分/我那覇和樹)
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