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 webnews 03/07/15 (火) <前へ次へindexへ>
勝利の明暗は運のみ?!両チームが抱える攻撃の問題点
2003Jリーグ ディビジョン1 1stステージ 第12節 浦和レッズvsFC東京

2003年7月12日(土) 19:04キックオフ 埼玉スタジアム2002
観衆:33.524人 天候:晴
試合結果/浦和レッズ0−1FC東京(前0−0、後0−1)
試合経過/[F東京]ケリー(84分)


取材・文/砂畑 恵

 試合後の挨拶に来るレッズの選手達に、ゴール裏に陣取った赤い集団は烈しい非難の声を投げつけた。レッズのこの試合に於けるパフォーマンスについては、恐らくサポーターにとってそう不満が残るという感じではなかった。要は因縁浅からぬFC東京に負けたということへの抗議。東京戦は5戦全敗と結果がサポーターはやるせなかったのであろう。

 得点は残り時間が5分になるかという場面だった。それまでの試合経過を観ていて、どちらも得点は厳しいかもしれない、そう漠然と思い始めた頃だった。84分、FC東京3本目のCK。宮沢のボールを茂庭が中に折り返し、ケリーがダイレクトボレー。鈴木が茂庭のマークを放してしまったこと、そこで勝負あったとも言えるが、ケリーのシュートもレッズにとっては坪井と山田に当たり2度もコースが変った、あまりにも不運なものだった。



 ともかく試合内容を振り返ると、勝ったとはいえ、それ意外の点ではFC東京のサポーターも満足のいくものではなかったのではないかと思う。
 今シーズンのFC東京はアウェイでの勝利がないこともあって、原監督も慎重に試合に入るよう選手に言い含めていた。今のFC東京を支えているのは、リーグ2番目に少ない失点を誇る守備である。堅実に力を発揮するジャーンと、進境著しい茂庭の成長、この二人のCBが安定していることが、チームを現在の順位に押し上げていると言っても良い。その自信もあって守備的にゲームを進める魂胆だった。ただ、誤算だったのは三浦・宮沢で構成するディフェンシブハーフが、最終ライン近くまでズルズル下げられてしまったことだ。

 それに相まって、前線では阿部が孤立する。もともと阿部はスピードで相手の裏を取ることが得意。ただC大阪の大久保とはタイプが違い、自分一人で状況を打開するまでにはいかず、味方の選手に使われて初めて能力が開花する。この試合ではケリーとトップを組んだという恰好だが、ケリーは2列目近い動きをしていることもあり、実質は阿部のワントップ。楔のボールを受けても体格に勝る室井の餌食となり、有効な攻めは右サイドから突破を計る石川の単独攻撃くらい。20分過ぎ辺りで、ようやくケリーがボールに絡み3度ほど心地のよい展開を見せたが、前半はレッズペースと言わざるを得ない。

 そのFC東京の攻撃にリズムが産まれたのは、やはりアマラオ投入が影響を及ぼしている。今年はまだノーゴールのアマラオだが、彼が前線で身体を張り、ボールをキープすることで、他の選手が攻撃参加をする時間が出来る。FWにとって点を取ることは最重要な課題だが、もう一つの大事な役割としてアマラオの果した作為は貴重な価値がある。



 それでもセットプレーでの得点のみに終ったのは、戸田、宮沢のいった選手に積極的なプレーがなかったからで、FC東京が攻めあぐねた原因の一端だった。本来なら、戸田や宮沢といった選手にゴール前へ顔を出して欲しいところだが、その前に足を止めることが多く、セカンドボールを次の展開なり、シュートなりに上手く結び付けることが少なかった。

 それと同時に、サイド攻撃を仕掛けても核となるFWがいないことも、今期FC東京が得点に苦しむ要因となっているのではないだろうか。石川は波に乗ってる様子は知るところだが、クロスを上げるというより、自分がシュートで終るしか選択の余地がないことが多い。サイドバックの徳永、金沢といった選手も、攻撃参加した際は質の高いクロスを有している。けれど、中央にはそのボールにヘディングで競ってくれる選手がいない。戸田やケリーといった選手がゴール前に詰めれば得点ということもあるが、それだけでは苦しい。結局、アマラオに賭けるしかないの?というところに思考が行き着いてしまう。

 今シーズンは怪我もあって、今1つコンディションが上がってこないアマラオに頼らざるを得ない状況が続いているFC東京。ゴール数もこの日のスコアラー・ケリーの4得点(リーグ13位)が最高で、上位チームと比較してもその得点不足は明らか。守備に関しては優れている分、アマラオ抜きでも得点出来る攻撃型がはっきりしない悩みは深い。



 さてゲームのペースを握りながら、敗北を喫したレッズについて。この試合でもパス回しはシーズン当初に比べ、格段に効果が上がっているように伺えた。それまではバックラインでの無駄とも思えるパス回しも多かったが、今は相手の守備の緩みに付け込み、早いパスが増えつつある。ワンタッチのパスでリズムを変えたりするシーンもあり、チャレンジも忘れていない。選手自体もその感触を確かにし始めている様子だが、まだ先端を行くジュビロと比較すれば、精度も低いし、ミスも少なくはない。それに加え、ストップした状況でのパス交換が多いというのも、他の上位チームに劣るところ。味方が作り出したスペースを利用しながら動きの内でパスを回し合う、ワンランクアップの必要もあるだろう。それでも継続は力となる。今後も効果的なパス回しを模索・追求してもらいたいと思う。

 それとは別に、この日のFC東京のような守備に秀でたチームに対し、崩しが単純過ぎたという問題点もある。特に強固なCBに対し、外からクロスを入れて正攻法で攻めても崩すのは難しい。そういう意味では、内舘や鈴木の3列目からのシュートは効果的ではあったが、殊FWに関しては、永井はヘディングの得意な選手ではなく、田中、交代投入の千島も小柄な選手。真っ向勝負を挑んでは勝ち目は薄い。FWの選手がゴール前に詰めるだけではなく、相手DFの視界から消えるように2度3度と動き直すことも大切になる。

 またジャーン・茂庭をいかに惑わせる、外へ吊り出すかという工夫も足りなかった。例えば前線のスペースへ対角線に走り込む。斜めに走ると相手選手はマークがおぼつかなくなり、ゴール前のスペースへ飛び込んだ選手に相手DFは釣られ、中央の守りが手薄になるのはよくあるパターン。逆に真ん中を固めているなら、飛び込んだ本人がシュートを打つことも可能になる。この試合に於ても、長谷部や山田が斜めに入り込んだらFC東京守備に綻びないし、より相手陣内深い位置でチャンスが産まれるのにと感じた場面が見受けられた。昨年のオフトは前の選手を追い越すことを規制していた聞く。それも今年は選手の自主性に任せる部分を緩和しているのを感じ取れる。中盤の選手も前線のスペースへ縦に斜めにとFWを追い越し走り込み、チャンスメイクすようになってもいい頃ではないか。



 両チームとも攻撃面で修正すべき点を内包している。そこに真摯に立ち向かわなければ互いのサポーターが夢見る上位進出は望めない。時間を掛けてでも1つ1つの問題点を解決していくことが大切なのではないだろうかと、そう考えながらスタジアムを後にした。


(浦和レッズ) (FC東京)
GK: 都築龍太 GK: 土肥洋一
DF: 坪井慶介 ゼリッチ 室井市衛 DF: 徳永悠平 ジャーン 茂庭照幸 金沢浄
MF: 山田暢久 鈴木啓太 内舘秀樹 平川忠亮 長谷部誠 MF: 三浦文丈(51分/浅利悟) 宮沢正史 石川直宏 ケリー
FW: 永井雄一郎(60分/千島徹) 田中達也 FW: 戸田光洋(70分/馬場憂太) 阿部吉朗(53分/アマラオ)
SUB: 山岸範宏 三上卓哉 堀之内聖 土橋正樹 SUB: 近藤健一 藤山竜仁
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