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 webnews 03/12/12 (金) <前へ次へindexへ>
 まずは、韓国の太極旗が翻る
タイトルはあちら、収穫はこちら。
東アジア選手権2003決勝大会 日本代表vs.韓国代表

2003年12月10日(水)19:16キックオフ 横浜国際総合競技場 観衆:62,633人 天候:晴
試合結果/日本代表0−0韓国代表(前0−0、後0−0)

取材・文/西森彰

 タイムアップの笛にホッとしたような顔を見せた韓国の選手たち。瓦礫の中から這い出て「我、勝てり」と言っているようなその姿を確認するまでもなかった。初代王者の称号は日本海を越えてホストカントリーから持ち出された。しかし、日本の選手、スタッフにはそれ以上の収穫、つまり、代表としてのファイティング・スピリットがもたらされた。



 日本、韓国、中国、香港で競われた東アジア選手権2003決勝大会も最終日。優勝の可能性を残しているのは開催国の日本と、その天敵・韓国だけである。日本は中国に2対0、香港に1対0と連勝を飾れば、韓国も香港に3対1、中国に1対0と2勝でここまで辿り着いた。勝ち点6、ゴールディファレンスのプラス3は同じだが、総得点で僅かに1点上回る韓国はドローでも優勝。日本が優勝するためには、この赤い軍団から勝利を奪わなければいけない。

 国内のメディアから批判を浴びている日本のジーコ監督、そして韓国のウンベルト・コエリョ監督にとって大きな意味のある一戦だ。日本は中澤佑二が3バックの左に戻り、初戦の中国戦と全く同じ3−5−2の布陣。一方の韓国は、第2戦でイ・ウルヨンが退場処分を受けてこの日は出場停止。それに伴い3名の入れ替えを行なってこの試合に臨む。こちらも日本同様4バックの導入を諦めて復活した3−4−3。



 試合は序盤から勝利が必要な日本が攻めて、韓国がこれを受ける形で推移する。左サイドから3バックの導入で息を吹き返しつつある三都主アレサンドロが攻撃参加する。その一方で韓国の3トップに人数を合わせるために、右サイドバックの山田暢久が攻め上がりを自重して中に絞って4バック気味に対応する。短期間に同一ベースで3試合続けていることから、バランスも悪くない。かなり期待させる出足だった。

 それに冷や水を浴びせられたのが18分。ドリブルでペナルティエリア内に切り込み、転倒した大久保嘉人がシミュレーションを取られ、2枚目のイエローカードを突きつけられたのだ。現場で見ている私にも、最初からPKを狙ったダイブに見えた。ただ実際に相手の足がかかっているのだから、後はレフェリーの好みによるだろう。ただし、1枚もらっている選手が「あの時間帯では出さないだろう」くらいの読みで試みるプレーではなかった。

 それまで横浜国際総合競技場のスタンドを盛り上げていた日本のファンの歌声は、一瞬にしてトーンダウンした。ある者はホームとアウェーを考慮しない杓子定規なジャッジを下したシンガポール人のレフェリーに、そしてある者は今シーズン数回目の退場宣告を受けたアジア最優秀若手プレーヤーに、それぞれ冷たい怒りを向けた。その中で一握りの韓国ファンの声援だけが聞こえていた。



 続いて日の丸。日韓戦には独特の雰囲気が漂う。
 スコアレスのままハーフタイムまで持ちこたえた日本のジーコ監督は「いつもの1.5倍走ってくれ!」と選手に伝えるとともに、2枚のカードを切る。韓国のハイボール攻撃に対し、余裕十分に弾き返していた中澤佑二、前後に激しく動いて前半を支えた福西崇史に代えて、本山雅志とオランダ帰りの藤田俊哉。4バックに切り替えて後半に臨む。左サイドの1.5列目に本山、そしてその裏の広大なスペースに三都主。誰が見ても危うい形に選手を散りばめたジーコ采配だったが、選手たちはその乾坤一擲の賭けに応えるプレーを見せた。

 1トップで孤塁を守る久保竜彦から後ろの選手まで、とにかく1対1の場面で負けない。それは技術面だけに限らず、足元にボールを置いての削りあいでも、肩をぶつけての競り合いでも。フィフティボールのほとんどを拾うのは青いユニフォームを着た選手たちだ。僅か3日前に10人で1点差ゲームを戦った韓国に疲れは残っていたのだろう。しかし、それを差し引いてもなお、日本は局地戦で韓国を圧倒していた。これだけの気迫で当たれば大久保1人の差を埋めて余りある。

 ボールを奪った時点で攻撃に向かえる位置にいるプレーヤーが、即興的にボールをつなぎ、縦に速い攻撃で、韓国のゴールを脅かす。バランスを省みず、ただひたすらゴールに迫る獰猛な日本の前に、韓国は完全にパニックに陥っていた。それはこれまで見たことのない日韓戦のシーンだった。今までやられてきたことをこのライバルに強いている。ゴール裏だけでなく、東西のメインスタンド、バックスタンドからも手拍子が起こり、歓声が飛んだ。日本のファンもタイムアップの笛を聞くまで、この試合展開に酔いしいれていた。



 久保のヘディングシュートがイ・ウンジュの肩口を抜いていたら。レッドカードを誘うプレーがレフェリーに悪感情を与えず、直後のプレーで本山がPKをもらえていたら。宮本恒靖の押し込んだボールが、ゴールラインの内側に完全に入っていたことをインドネシア人の副審が見逃していなかったら。何より90分間を11人対11人で戦えていたら。勝負事にタラ・レバは禁物だ。でも、これらの全てが裏目に出るのは、どれくらいの確率だろう。

 勝たなくてはいけない試合で、諦めずに勝利を追い続けるメンタルは確認できた。そして無理を承知の布陣で自分たちの創造力を発揮し、長短のパスをつなぎながらゴールに迫った攻撃にも及第点は与えられる。ただし、特殊な状況下のゲームだったので、ディフェンス面の評価は先送りするしかない。今後の課題は「普通に戦って、普通に勝ち切る」ことが出来るかどうかだろう。スクランブルの連発で結果を残しても、それは丁半博打に連勝しているだけにすぎない。

 韓国はチーム状態がこれまでになく悪いように見えたが、ユ・サンチョル以下、ベテランの踏ん張りで中国戦に続き、この日も厳しいゲームを無失点で耐え凌いだ。彼らも欧州組が帰ってくれば全く別のチームになる。互いにベストメンバーを揃えての再戦が楽しみだ。何はともあれ、東アジアチャンピオンおめでとう。「東限定」ではないアジアチャンピオンの一員として、心からの祝福と再戦希望書をおくろう。


(日本代表) (韓国代表)
GK: 楢崎正剛 GK: イ・ウンジェ
DF: 坪井慶介、宮本恒靖、中澤佑二(H.T/本山雅志) DF: チェ・ジンチョル、ユ・サンチョル、パク・ジェホン
MF: 山田暢久(89分/黒部光昭)、福西崇史(H.T/藤田俊哉)、遠藤保仁、三都主アレサンドロ、小笠原満男 MF: チェ・ウォングォン、ヒョン・ヨンミン(67分/イ・グァンウ)、キム・ドヒョン、キム・ドンジン
FW: 久保竜彦、大久保嘉人(18分/退場) FW: キム・デイ(H.T/チョン・ギョンホ)、キム・ドフン(84分/キム・ウンジュン)、アン・ジョンファン
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