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 webnews 03/12/14 (日) <前へ次へindexへ>
コロンビア、粘るアイルランドを振り切る
FIFA World Youth Championship UAE2003 ラウンド16 アイルランドvs.コロンビア

2003年12月9日(火)21:00キックオフ シェイフ・ハリファー・スタジアム(アルアイン) 観衆:6.860人 天候:晴
試合結果/アイルランド2−3コロンビア(前0−1、後2−1、延前0−1)
試合経過/[COL]ペレア(11分)、モンターニョ(70分)、[IRL]ドイル(85分)、マッカーシー(92+)、[COL]カリージョ(104分)


文/砂畑 恵

 1次リーグ突破の歓びも束の間、ワールドユースも決勝トーナメントに突入した。この日の試合でベスト8入りを巡る席が総てが埋まる。アルアインではE組1位突破したアイルランドとD組で2位通過を果したコロンビアの対戦となった。

 E組はコートジボアール、サウジアラビア、メキシコがおり、アイルランドは2勝1分、しかも全試合とも2ゴールを挙げて順調に勝ち上がった。日本と同組だったコロンビアは日本戦こそ4得点を挙げて勝利したが、エジプト、イングランドの2試合はスコアレスドローで終えており、グループリーグ2位通過に落ち着いた。

 ワールドユースの話から少し逸れるが、ユースはA代表の合わせ鏡のようなところがある。勿論、選手は入れ換わり、日本チームのようにA代表とユースが別のフォーメーションを採用する場合も少なくはない。だが「Soul」の部分で通ずるものを感じることがある。

 人それぞれ差異があるのは承知の上で個人的な意見を言わせてもらうと、コロンビアというチームは「冬の落日」のイメージ。「冬の落日」というのは、どの季節の夕日よりも赤々として耽美なものだが、すぐ夜の帳に覆われていつまでも空に留まることはない。一世を風靡したバルデラマやアスプリージャのいた頃のコロンビアは、溜息の出る美しいパスが繋がるチームであったが勝負に脆く、世界大会では前評判が高い割には早くに姿を消してしまった。そういうことで私の中では「冬の落日」に繋がっている。

 対するアイルランドというチームは、タフで巨大な相手にも最後まで勝負を諦めないチームという印象。技術的には器用ではないが、メンタル面では非常に逞しい。W杯出場を賭けたプレーオフでは、オランダ有利の大方の予想を覆して出場権を獲得し、本大会でもドイツ、カメルーン、スペインという強豪にも、劣勢をはねのけて、ゲーム終盤には同点に追い付く粘り強さに感銘を受けた人も多いのではないだろうか。
 そういうことでも、私は1つの国のサッカーとしてユースチームの試合を見ていた。



 話を試合に戻そう。キックオフ直後からコロンビアがペースを握って動いていった。少ないタッチ数でパスを回すコロンビアはアイルランドを自陣に押し込む。アイルランドはFWへの楔のボールが上手く収まらず、そのボールをコロンビアに拾われては攻め入られるの繰り返し。アイルランドは押し上げることもままならず、守勢に回った。そして、優勢な流れのままにコロンビアが先取点を奪う。11分、リバスのパスをモンターニョが受ける。プレッシャーはなく、モンターニョは容易に前を向くと前線にロビングのボールを送った。バックラインを飛び出したペレアは、パスのバウンドに合せて足を振り抜く。シュートはポストの金属音を響かせてゴールネットに突き刺さった。

 ゴールも後も、コロンビアのパスは華麗だった。選手間の距離の取り方が上手く、複数のパスコースが用意されている。パスを受けてから前を向く動作の滑らかさは抜群に上手い。アイルランドの一連の動作にガクガクした固さがあるのとは全く違う。ただ得点以降のコロンビアはチャンスを逸していた。速攻という場面ではオフサイドに掛かることも多く、パスを回す間にアイルランドは堅くゴールを閉ざし、遅攻を余儀なくされる。結局、放つミドルシュートもゴールの枠を捉えることはない。GKの正面を突いた34分のリバスとのワンツーからモンターニョくらいで、特筆するものはほとんどなかった。

 対するアイルランドもゴール前のシーンは乏しかった。14分に相手のクリアミスからCKを得て、そのCKからサイエドがヘッドで左に外したのと、44分にセットプレーの流れから、フロードのミドルシュートがあった程度。ともかくコロンビアの攻撃に耐え続けて、そのままコロンビア1点リードで前半は終了したといったものだった。



 ところが後半になると、押されていたアイルランドが盛り返す。48分にサイエドのスルーパスをエリオットがシュートに結びつける。引き気味にいた前半とは明らかに違い、高い位置からコロンビアにプレッシャーを掛けた。ただクロスの質がいま1つで、コロンビアDFに跳ね返される。それでもクロスまで行くことは積極的にボールに絡んだ証拠だろう。

 コロンビアの方は相手の早いプレスに戸惑ったようだった。ワイドにピッチを使い、落ち着いたパス回しをしていた前半に比べ、段々、前に前にと急ぐ場面が増えた。早急にことを運ぼうとするコロンビアはアイルランドの守備を切り崩せない。包囲するようにしっかりと構えるアイルランドに対し、中央へと攻撃が狭められる。

 それでも70分、コロンビアは追加点を挙げた。スローインからDFを背にしたファウセットがボールを落とす。ボールを拾ったカステリジョンはドリブルしながらDF3人を引きつけ、フリーのモンターニョにパス。モンターニョはダイレクトで豪快なミドルシュートを叩き込んだ。その後、75分にはペレアのシュートがポストに阻まれたり、79分にはモンターニョのシュートがGKに防がれ、惜しくも追加点はならず。それでも1点ならまだしも2点のリードを奪われたアイルランドに勝機は感じられず、コロンビアの勝利はほぼ確実だろうと思えた。交代するコロンビアの選手にも笑顔が浮かぶ。残り時間は5分になろうとしていた。

 しかしアイルランドが真骨頂を発揮したのはここからだった。85分右サイドを交代したばかりのファーヘイが深くえぐってマイナスのクロス。それをドイルがトラップしたが、わずかに後方に落ちる。ドイルは体勢を立て直すと、振り向き様に一撃をお見舞いした。気勢の上がるアイルランドは92分、FKからマッカーシーがヘディングシュートを放つ。デラクエスタはクリアし切れず自陣のゴールへ。とうとうアイルランドは追い付いた。

 延長に入り、両チームも一進一退を繰り広げて、なかなか決着をみない。その最中、アイルランドは相手との接触で首を打ったキャプテンのカパーが抜けて1人少ない状況となった。丁度、コロンビアはCK。ショートCKから、ゴールライン際でアギラルが粘ってマイナスのパス。すかさずカリージョが渾身を込めたシュート。104分の激闘を征した。



 拍手で迎える自国サポーターに、拍手で応えるアイルランドの選手。水原での光景がだぶって見えた。アイルランドの粘りは脈々と下の年代にも繋がっている。勝ったコロンビアのパスワークも現代に健在だ。ただ素直過ぎる面もあり、バルデラマのようなアクの強い選手も欲しいけれど・・・。それでも時代を越え国のサッカーは魂で結ばれている気がした。


(アイルランド代表) (コロンビア代表)
GK: ヘンダーソン GK: ランダスリ
DF: ペズレイ フィッツジェラード(74分/ディロン) マッカーシー カパー DF: アンチコ デラクエスタ パチョン ファウセット
MF: フロード(80分/ドイル) フォレイ ワード(84分/ファーヘイ) ベル MF: モンターニョ(83分/カリージョ) アギラル リバス カステリジョン
FW: エリオット サイエド FW: ペレア(87分/ゴンザレス) トーレス
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