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 webnews 04/10/21(木) <前へ次へindexへ>
醍醐味溢れる守備で両チームとも譲らずスコアレスドロー
2004Jリーグ ディビジョン1 2ndステージ 第9節 浦和レッズvs横浜F・マリノス

2004年10月17日(日) 14:05キックオフ 埼玉スタジアム2002 観衆:58.334人 天候:晴
試合結果/浦和レッズ0−0横浜F・マリノス(前0−0、後0−0)


取材・文/砂畑 恵

 「前半は相手を0に抑える」。これが横浜FM・岡田監督のプランだった。
 浦和は7勝の内、6試合で先制点を奪っている。しかも20分以内の先制は5試合。唯一、相手に先制されたG大阪戦でも同点弾は16分だ。第8節までの総27点中、16ゴールを前半に叩き出しおり、早い時間の得点で相手に優位に立つのが浦和快進撃の理由の1つである。

 しかし、この試合の横浜FMは松田、那須が出場停止に遠藤も怪我で欠場と、苦しいチーム状況で大幅な布陣変更を余儀なくされた。先日のW杯1次予選・オマーン戦で大活躍した中澤を中央に、栗原と河合で3バック。ボランチは柳と中西が組み、アウトサイドは右に田中隼、左は怪我より復帰のドゥトラが務めた。浦和との勝ち点9差と現状を考えれば、横浜FMが前半は慎重に入り、我慢のサッカーでいくことは当然の選択だった。



 ごく自然に攻撃的な色合いの強い浦和がキックオフと同時に横浜FMを押し込む。そして前半6分、鈴木の縦パスに反応した田中達が横浜FMのディフェンスラインを切り裂き場内を沸かせた。しかしここは、田中達を必死に追い掛ける栗原が身体を張ってブロックする。身を削るような守備を見せたのは中澤、河合とて同様だった。DFは完全に守備専従たが、中澤がフォアリベロとなって中盤に入るボールにアタックするなど、決して引き過ぎることはない。裏を突かれるリスクを負いながら、高い集中力と1対1で負けないという強いメンタリティーで浦和の攻撃陣と対峙する。遥かにスピードでは優るエメルソンに身体を引き摺られるようになりながらも喰らい付く河合のプレーからも気迫は伝わってきた。

 しかし横浜FMの守備が鉄壁を誇ったのは、中盤の助けもあってこそ。選手全員が守備に対するバランスを非常に重視していた。アウトサイドのドゥトラも、田中隼も攻撃参加を控えて、釣瓶のようにスライドしてDFラインに入った。ボランチの柳も中西も低めに構えて試合に臨み、DFが持ち場を離れた時はそのカバーを忠実に行なう。中央では浦和にスペースを与えず、エメルソンや田中達、そしてドリブル突破を得意とする浦和のアウトサイドをサイドラインに追い込んで侵入を食い止めた。勿論、外からクロスを入れられてもゴール前での競り合いに負けない自信も根底にあったはずだ。



 そんな横浜の守備の前に流れの中からチャンスが作れない浦和は21分、相手の囲いの1歩先を行くパスを回しでサイドを突き破った。鈴木から下げられたボールを長谷部は、一瞬、足の裏を使って永井の飛び出す間を作ってスルーパス。絶妙なタイミングで飛び出した永井はフリー。ドリブルで持ち込むとグラウンダーのパスをゴール前に流す。中央にいた田中達のシュートは空を切ったが、その裏に控えていたエメルソンがシュート。またも栗原の身を挺した守備によってゴールを割れなかった。

 続く26分、浦和はCKからも決定的なシーンを作った。三都主のキックはDFのクリアー。ボールを拾った山田が素早く三都主に戻す。三都主のクロスをネネがヘッド。ボールは榎本達の頭上を超え、見送る横浜FMの面々。だが今度はクロスバーに阻まれた。

 ところで横浜FMは少ないチャンスを得点に結び付けようと腐心する。けれど浦和の守備は岡田監督の予想した通り固かった。FWも含めハイプレッシャーを仕掛ける浦和に、横浜FMはパスをカットを繰り返された。裏のスペースに飛び込む坂田に向ける浦和DFの警戒心は並々ではない。ラインもいつも通りに高く保っていたが、ロングボールが前線に入るとサッと引いてスペースを消す。22分、坂田が守備ラインの裏を突いたが、帰陣した闘莉王がしっかりシュートコースを切って、GK山岸は楽々シュートをキャッチした。

 それでも37分、横浜FMに決定機は巡ってきた。ドゥトラの浮き球のパスを受けた坂田に闘莉王が吊り出されると、その空いたコースへと中西がスルリと駆け上がる。そこへ奥からラストパスが渡る。完璧に裏を取った中西は左足でダイレクトでシュート。しかしGK山岸の反応も素晴らしく、見事にゴールを守り切った。



 前半を狙い通りに浦和を無得点に抑えた横浜FMだが、本来の目的は首位・浦和からの勝ち点3ゲット。優勝戦線に生き残るには、「負けないサッカー」を続けてばかりもいられない。後半になると隠していた牙を徐々に剥き出した。46分、浦和ゴール前で奥が坂田にボールを預け、そのまま横に移動。坂田からパスを受けた田中隼がボールを戻して、奥がシュートを放つ。間一髪、長谷部がコースへ走り込みシュートは浮いた。そして61分にはCKから河合の落としを安がシュート。ポスト直撃のボールはゴール外に弾かれた。

 浦和にとっても横浜FMを倒すことは、すなわち首位安泰を意味する。「自分達らしく攻撃的に」。ブッフバルト監督の命を受けた浦和も、48分には山田のマイナスのパスを受けた田中達がゴール左隅にシュートを放つが、GK榎本達が右足でスーパーセーブ。その後はDFの3人も攻撃に加わって横浜FM攻略に心血を注ぐ。54分にはサイドを破ったアルパイが前線にクロスを上げ、55分には闘莉王がミドルシュートを放った。

 それに対し横浜FMはアウトサイドが攻撃参加で流れを引き寄せようとした。ポイントとなったのは田中隼。前半にも少ないながら鋭い攻撃を見せていたが、後半にはそれに拍車が掛かった。だが今度は浦和が横浜FMのお株を奪う守備で潰しに行く。60分、安のパスを受けた田中隼がゴールに迫る。ネネと三都主が縦に田中隼を挟み込んでボールを奪い返した。

 ガッチリ四つに組んで守備が破綻しない両チーム。ゲームも残り5分となったところで横浜FMは一気に勝負を賭けた。それまでDFのフォローに回っていた柳が、溜めていた攻撃パワーを一気に爆発させる。86分、ゴール前に上がった柳の戻しを田中隼がクロス。何とか闘莉王が跳ね返す。89分にはドリブルで持ち込んだ柳が低く伸びのあるシュートで浦和DFを冷やりとさせた。勢い付く横浜FMはロスタイム、奥のスルーパスでチャンスを作るが、安は闘莉王にがっちりマークを受けてGK山岸がキャッチ。終了寸前にも田中隼のクロスを奥が胸トラップシュートを試みるが、カバーにきた闘莉王に阻まれた。結局、一歩も引かない両雄の戦いはスコアレスドローで幕を閉じた。



 横浜FMとすれば今日の結果をどう捉えるかは難しいところだ。浦和との直接対決で勝ち点1に留まり、2ndステージ優勝の可能性はかなり遠のいた。それでもベストメンバーを組めないハンディを背負いながら、浦和の攻撃を無得点に抑えたという収穫もある。点こそ奪えなかったが、残り5分の勝負所ではチーム全体がそれを嗅ぎ取る点は流石だ。

 それから比べると浦和はまだ「若い」かもしれない。FC東京、横浜FMと守備を固める相手を崩せないでいる。そういう展開の中で点を奪うにはセットプレーに磨きを掛ける必要がある。また横浜FMの柳のような3列目からの飛び出しやミドルシュートも見習うところもあろう。「王者の老獪さ」それが浦和には今後は必要になってくる気がした。


(浦和レッズ) (横浜F・マリノス)
GK: 山岸範宏 GK: 榎本達也
DF: アルパイ 田中マルクス闘莉王 ネネ DF: 栗原勇蔵 中澤佑二 河合竜二
MF: 山田暢久(79分/堀之内聖) 長谷部誠 三都主アレサンドロ 鈴木啓太 MF: 田中隼麿 柳想鐵 中西永輔 ドゥトラ 奥大介
FW: 永井雄一郎 田中達也(68分/岡野雅行) エメルソン FW: 坂田大輔(83分/山崎雅人) 安貞桓
SUB: 都築龍太 内舘秀樹 平川忠亮 SUB: 榎本哲也 大橋正博 佐藤由紀彦 安永聡太郎
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