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 webnews 04/11/17 (水) <前へ次へindexへ>
油断?負け癖?C大阪、ザスパ草津に苦杯!
第84回天皇杯全日本サッカー選手権大会 4回戦 セレッソ大阪vs.ザスパ草津

2004年11月14日(日)13:04キックオフ 長居スタジアム 観衆:3,890人 天候:曇
試合結果/セレッソ大阪1−2(前0−0、後1−2)ザスパ草津
得点経過/[C大阪]森島(66分)[草津]マルキーニョス(72分)、佐藤正美(75分)


取材・文/貞永晃二

 JFL(日本フットボールリーグ)2位につけ、来季からのJ2昇格に挑戦中のザスパ草津。前週の5日、ホーム・敷島公園陸上競技場にJ2昇格をほぼ決めている首位・大塚製薬を迎えた草津は、詰めかけた1万3千を超える観衆(JFL新記録)の前で、大塚製薬の優勝決定を見事に阻止し、連勝を6とした。この上昇機運に乗るザスパ草津にとって、J1のチームを相手に戦う初の公式戦がこの日のC大阪との天皇杯4回戦である。

 一方、J1最下位に沈みJ2・3位チームとの入替戦が現実味を帯びてきたC大阪。前節はエース・大久保を欠きながらの磐田とのアウェーゲーム、結果はドローではあったものの内容の伴った試合ができた。天皇杯前回大会のファイナリストらしいプレーでこの日の緒戦を快勝し、残るリーグ戦3試合を3連勝といきたいところだ。



 立ち上がりはC大阪のペースで進む。植木監督がJ1との差を「ファーストタッチの差、動き出しの早さ」と挙げたように、個々の能力差が試合に表れる。酒本のクロスから森島のヘッドがバーを叩きスタジアムが初めて沸いた。さらにC大阪は草津を自陣に押し込み攻勢を続けるが、MF濱田から供給されるラストパスが精度を欠き決定機を演出できない。そして2年間在籍した古巣C大阪との対戦に燃える草津DF籾谷(もみたに)がワントップ西澤との空中バトルで優位に立ち、西澤と森島・古橋の2シャドーとの連係がギクシャクしうまくいかない。そして10分過ぎからはやや膠着した状況となった。

 試合がまた動き出したのは20分過ぎ。酒本がうまく抜け出してゴールラインまで入り込み丁寧なクロスをファーポストへ。しかし完全にフリーで合わせた森島はヘッドを左に外すミス。直後、古橋が古巣・Honda在籍時の対戦(4月)で2点を決めた草津ゴールに激しく迫る。しかしベテランGK小島(コーチ兼任)がなんとかCKに逃げる。こういうチャンスを決め切れないのが後々響いてくるものだ。

 草津はキーマン・山口が厳しいマーキングに苦しみ、なかなか基点になれない。しかし25分、その山口から初めてのチャンスが生まれる。左サイドから入れたクロスをGK伊藤がキャッチできずこぼし草津・依田が強烈なシュート。しかし伊藤は素早く前へ出てブロックし難を逃れる。このあたりから、形勢はほぼ互角に近づいてくる。そしてなかなか得点できないC大阪に凡ミスが出始める。40分、酒本が自陣での横パスを草津・佐藤にプレゼントし強シュートを浴びる。GK伊藤のファインセーブでなんとか失点は免れたものの、攻撃面では才能を感じさせる酒本だけに自陣で犯すミスの怖さを十分学ぶべきだろう。

 C大阪は苔口のスピードドリブル突破、草津はベテラン鳥居塚のドリブルシュートと両チームが見せ場を作ったが、そのままスコアレスで後半を迎えることになった。



 植木監督は試合前「前半ゼロに抑えれば、後半勝負が出来る」と選手を送り出したというが、草津はその狙い通りの展開で残る45分に賭けることになる。

 チャンスはまずC大阪に訪れる。58分、下村の左からのクロスに西澤が反応しハーフボレー一撃。バーを叩いたボールを森島がダイレクトで叩くがGK小島が飛び出し身体で止める好プレー。ここで小林監督は西澤から大久保への交代策をとった。

 草津は前線での佐藤の頑張りに加え、徐々に持ち味を発揮し出した山口のキープから攻め手を模索する。一方C大阪は入ったエース大久保が濱田とのワンツーで左に持ち出しシュートを狙う。そして、ようやく66分、C大阪が先制する。濱田と酒本のパス交換から右サイドを崩し酒本がプルバック。大久保が飛び込むがこぼれDFがうまくクリアできず、古橋がヘッドでフリーの森島へパス。森島は悠々とプッシュするだけ。ピンクサポーターからは歓声とともに安堵の声が聞かれた。しかし、この安堵感は選手にも広がり大きな落とし穴となった。

「1失点までOK、必ず2点とれる」植木監督の試合前の指示がここで活きる。先制された草津に焦りは感じられず、逆に攻めへの意欲を喚起することになったのだ。ここで得点を決めた森島を引っ込めた小林監督。一方、C大阪にとって未知のマルキーニョスを投入した植木監督。そして主審が「大久保だったからとらなかった」と小林監督が振り返ったPKかと思われるシーンが70分。ここで2−0となっていたらおそらく試合は決まっていただろう。展開は草津に有利に流れ出す。

 そして72分、CKからC大阪DFがクリアしきれないところをマルキーニョスが右足ボレーで決めて同点とする。またも食らったセットプレーからの失点に小林監督の表情も曇る。いつもはピンクで埋まる広いゴール裏の中央に集まる草津サポーターは跳び回って大喜びだ。

 そして75分、遠来の草津サポーターをさらなる歓喜が包み込む。草津・吉本がバイタルエリアでキープし左へ持ち出しシュート。ジャストミートしなかったキックが草津に「吉」と出る。ゴールをそれた弱い球速のボールにDF柳本の陰から前に入り込んだ佐藤が足を投げ出してシュート。GK伊藤はノーチャンスだった。あっという間の逆転ゴールに「負け癖」のついてしまった選手にもサポーターにも不安が立ち込める。

 残り時間はまだ15分あった。しかし焦るC大阪は崩れたリズムを立て直すことが出来ない。「左に入ったときは仕事が出来ない」と大久保を評した植木監督の言葉どおり、大久保の左足シュートは外れる。しかし、古橋の突進から生まれたチャンスに大久保の右足はうなりを上げたが、ここもGK小島が立ちはだかった。

 逆転後のC大阪の反攻にも冷静に対処し丁寧にパスをつなぎ攻める草津の選手たち。どちらが国内トップリーグに属する選手かわからないような試合展開となる。最後はDF千葉をトップに残すスクランブルに出た小林監督だったが、これも実らず試合終了。サポーターのブーイングを選手とともに浴びることになった。



 前日にJ1チーム敗退が続出したことからもC大阪には格下が相手だ、という油断はなかったはずだ。しかし先制後に2点目、3点目を狙う気持ちは見えず、ムードは緩んでしまった。J1最下位と実質3部リーグであるJFL2位にそんなに大きな差はないことを図らずも証明してしまった試合だった。果たしてこんな試合結果のあとに気持ちを入れ替えて「サバイバル」3試合に臨めるのだろうか。今年はサポーターを裏切り続けたシーズンだった。最後くらいは蔓延するあきらめムードを吹き飛ばすような「いい意味での裏切り」を期待したいものだ。

 植木監督の「5試合くらいのビデオを見まくった」というC大阪分析は見事に結実した。しかし監督の指示がいくら的確でも、選手が頑張らなければこんな結果は生まれないものだ。とにかく真面目で忠実で最後まであきらめないプレー振りは好感が持てるものだった。一旦JFLでのプレーに戻り、来月は横浜FMという「王者」に挑戦することになる。早い時期にJFL2位の座を確実にして、植木監督には今度は10試合分くらいのビデオでの横浜FM分析をお願いしよう。


植木繁晴監督(ザスパ草津)記者会見
小林伸二監督(セレッソ大阪)記者会見


(セレッソ大阪) (ザスパ草津)
GK: 伊藤友彦 GK: 小島伸幸
DF: 千葉貴仁 柳本啓成 下村東美 DF: 籾谷真弘 小田島隆幸 依田光正 小川雅己
MF: 布部陽功 濱田武(85分/齋藤竜) 酒本憲幸 苔口卓也 森島寛晃(67分/徳重隆明) MF: 小久保純(69分/マルキーニョス) 寺田武史 鳥居塚伸人 山口貴之
FW: 古橋達弥 西澤明訓(58分/大久保嘉人) FW: 佐藤正美 吉本淳
SUB: 徳重健太 佐藤悠介 SUB: 北一真 佐田聡太郎 山崎渡 宮川大輔
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