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 webnews 04/11/16 (火) <前へ次へindexへ>
勝負を分けたスタートダッシュ。ホームの川崎が、J1・神戸を振り切る。
第84回天皇杯全日本サッカー選手権大会 4回戦 川崎フロンターレvs.ヴィッセル神戸

2004年11月14日(日)13:01キックオフ 等々力陸上競技場 観衆:6,836人 天候:曇り
試合結果/川崎フロンターレ3−2ヴィッセル神戸(前2−0、後1−2)
得点経過/[川崎]寺田(13分)、我那覇(38分)、[神戸]ホルヴィ(45分)、藤本(59分)、[川崎]ジュニーニョ(72分)


取材・文/西森彰

 今年はセーフティーリードを保ったまま昇格争いを制した川崎フロンターレ。リーグ戦では「勝ち点100」を新たな目標として戦っているが、勝ち点4を残したまま、ここ2試合は足踏みしている。「大宮さんと福岡さん。やはり、周りから『気持ちで負けている』と言われたこともあったんで、今日の試合はそこだけは気持ちを出してね、前面に出して戦おうとこの1週間準備してきました」(関塚隆監督・川崎)。選手たちにとってもJ1と戦えるのが、ひとつの大きなモチベーションになったはずだ。

 受けて立つヴィッセル神戸は、ゲームへの入り方が悪すぎた。「トップの3人が得点力がありますので、我々としてもここをどう抑えるかということを考えたんですけれども、ちょっと立ち上がり、そこのズレが修正できない。リズムがとれなくて、我々の中盤でのプレッシングが上手く機能しなかった」(加藤寛監督・神戸)。「もっとガチガチ来るかと思ったけれども、そんなことはなかった。今日に限っては、J1との差は感じなかった」と川崎の我那覇和樹が漏らしたように、降格争いを戦っている時の気迫に欠けていた。

 ユニフォームから発露するオーラが全く違った両チーム。当然のように川崎優位でゲームは推移した。ホームチームの積極性が感じられたのがセットプレーの場面。FKを得るたびに、DFラインの選手が前線に上がり、キッカーはこれをターゲットにボールを蹴る。13分、マルクスの右CKに寺田周平が頭で合わせた先制点、そして17分、31分のチャンスもそう。リードを奪った後も、リスクを恐れずDFが上がり、マークが薄くなったところから、ゴールを脅かす。

 そしてもうひとつ。この日はトップ下に位置するマルクスが、最前線のジュニーニョだけでなく、中村憲剛ともポジションを入れ替えてボランチの位置まで下がるなど、プレーエリアを幅広く使った。これが神戸のボランチをバイタルエリアから引きずり出し、ジュニーニョ、我那覇和樹の自由度を増す原因になった。38分の追加点は、マルクスが神戸のボランチとDFの間でボールを受けて持ち上がり、左でフリーになった我那覇和樹へ送って奪ったもの。

 セットプレーではDFの高さ。流れの中ではマルクスの作り出すスペース。チームとして意思の感じられる2ゴールだった。



 散々な状態で折り返した前半を受けて、神戸の加藤監督は機能しない3バックを諦め「3バックから4バックに変えて、4人のDFで3人のFWを見る形」(土屋征夫・神戸)にフォーメーションを変更。これと合わせて藤本主税、平瀬智行のふたりをピッチに投入した。「(ベンチで前半を見ていて)クロスボールを上げるのが早かった。(川崎の)真ん中は高いんでそれで弾き返されていた。もう少し深いところまで持っていて、そこから中に折り返せばチャンスがもっと増えるはず」(藤本・神戸)。神戸のサッカーが見るからに変わっていった。

 後半開始直後、ホルヴィの強烈なシュートで1点差に迫ると、後は川崎を圧倒し、ほとんどハーフコートゲームに持ち込む。59分、左から藤本がショートコーナーで平瀬に預け、リターンを叩いて同点。このCK自体、藤本のパスで抜け出した播戸竜二が、1対1のシュートをGKにぶつけて得たもの。藤本の変幻自在のパス出しと、4バックの右サイドに入った土屋征夫のオーバーラップを軸に、サイド攻撃で川崎のゴールに襲い掛かる。ゲームは完全に彼らのモノになったかに見えた。

 だが、川崎はバックスタンドに陣取ったファンの声援を受けて、追いつかれた後のピンチを懸命に凌ぎながら、ひたすらチャンスを窺った。「1対1で非常に集中した戦いになっていましたし、またウチが取ったボールをしっかり前でもう少しつないでいければ、逆に前の威力というものがある」(関塚監督)。DFを固めたい誘惑を振り切って、戦い続ける選手たちの闘志と、攻撃陣の決定力に期待した。結果的にそれが実を結んだ。

 72分、我那覇とのワン・ツーで右サイドを崩した木村誠が中央へクロスを送ると、ゴール前で待ち構えていたのは、頼れるエースだった。「後半はあっという間に同点にされたんですが、チーム全体が落ち着いて良い形で一所懸命に戦って、良い結果につながった」とジュニーニョ。両チームで39本のシュートが飛び交うゲームの決勝点は、J2のリーディング・スコアラーが奪ったゴールだった。



 神戸は惜しいゲームを落とした。「(久しぶりに長い時間の出場で)プレーさせてもらえる喜びはあったし、だからこそ勝ちたい気持ちもあった。気持ちの入ったプレーをしようと思って入った」(藤本)。そして「4バックのサイドバックで攻撃参加というのは僕の持ち味だから、もっと攻撃に絡めたら良いなと思ってプレーした」(土屋)。このふたりを中心に、後半は鬼気迫るプレーが相次いだ。

 だからこそ惜しまれるのは前半のルーズな戦いぶり。土屋も「追いついたところでそのまま3−2にしていればウチのゲームだったと思う」と押し切れなかったことを嘆きながらも、「後半みたいなサッカーが前半からできていれば、フォーメーションが違っていても、同じサッカーをやれると思うし」と無為に過ごした最初の45分間を悔やんだ。この土屋の言葉が、この日の神戸を言い表していたと思う。



 鹿島アントラーズ時代、共に戦ったジーコ・日本代表監督の観戦する御前試合で、見事に自軍を勝利に導いた関塚監督。試合後の記者会見では「こういうトーナメントの大会というのは、勝ち上がるということが大事なんで、内容もあれだったですけれども、サポーターの力も借りて、勝ち上がれたということが良かったなと思っています」と結果を評価した。

 シーズン終盤、どのチームもケガ人などで編成が苦しい。川崎も多分に漏れず、関塚監督によると、主だったところで7人のケガ人を抱えている。コンディションが悪いチーム同士の戦いで最後にモノを言うのが、イレブンの戦う姿勢。追い越されなかった理由は、リードが2点あったから。そして、その2点は神戸を置き去りにした好スタートがあったからだ。

 神戸が後半見せた猛攻によって、J1クラブが持つ真の底力も再認識させられた。「『J1で戦っていくうえでは、そういうところの隙を見せないサッカーをしていかなければいけない』と、肌でみんなが感じたんじゃないか」と関塚監督。その一方で、ラストスコアラーのジュニーニョは「J2の場合はスペースがなくって、みんな絞ってくるので良い形ができない。J1のチームはつないでくるので、自分たちが攻めるときは比較的にボールが持てる。逆にやり易い」と自信を語る。

 謙虚さと自信。来期に向けて戦う川崎には、どちらも必要不可欠なものである。



加藤寛監督(ヴィッセル神戸)記者会見
関塚隆(川崎フロンターレ)監督記者会見


(川崎フロンターレ) (ヴィッセル神戸)
GK: 下川誠吾 GK: 掛川誠
DF: 佐原秀樹、寺田周平、谷口博之 DF: 土屋征夫、高木和道、丹羽竜平
MF: 木村誠、中村憲剛、久野智昭、塩川岳人(89分/飛弾暁)、マルクス MF: 朴康造、菅原智、ホルヴィ、ホージェル、薮田光教(H.T/藤本主税)
FW: 我那覇和樹(89分/黒津勝)、ジュニーニョ FW: 播戸竜二、和多田充寿(H.T/平瀬智行)
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