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 webnews 04/12/01 (水) <前へ次へindexへ>
「エース」は生まれそして去っていく。C大阪、幸運を引き寄せ大逆転残留!
2004Jリーグ ディビジョン1 2ndステージ 第15節 アルビレックス新潟vs.セレッソ大阪

2004年11月28日(日)13:04キックオフ 新潟スタジアム 観衆:41,231人 天候:曇
試合結果/アルビレックス新潟1−2(前0−1、後1−1)セレッソ大阪
得点経過/[C大阪]大久保嘉人(35分)、[新潟]エジミウソン(50分)、[C大阪]大久保嘉人(86分・PK)


取材・文/貞永晃二

 15位柏が最下位C大阪を勝ち点1リードして迎えた最終第15節。たとえ勝利したとしても、柏が大分に勝てば全てが水泡に帰す。そんな厳しい条件下のC大阪だったが、一致団結した選手たちが、試合前にC大阪のサポーターが夢描いた「シナリオ」をものの見事に演じ切って見せた。



 C大阪はDFの千葉とラデリッチを、一方新潟は巧者ファビーニョをともに出場停止で欠く苦しい台所事情での試合。キックオフ早々、C大阪の勝利への意欲が露になった。前への意識を強く持ち、アグレッシブなチェイシングとプレッシングで新潟を自陣に押し込む。そして久藤、酒本から鋭いクロスが新潟ゴール前に入れられる。しかしなかなかシュートを打たせないのが新潟の守備。その新潟も鈴木健のクロスを一人だけ先発したブラジル人・エジミウソンがヘッドで狙う。

 C大阪はここ数試合、徐々に調子を上げてきた西澤のポストとしての安定したキープが目を引く。そして右サイドでは酒本が攻守に暴れる。しかし最初のビッグチャンスはホームチームがつかむ。19分、エジミウソンがスピードでDFを引きずってドリブルで突進。しかしGK伊藤の果敢な飛びだしがチームを救う。さらに左右のウイング、寺川と鈴木慎がポジションを交換しC大阪DFの混乱を狙う。

 30分が経過する。C大阪は西澤、酒本が連続シュート、新潟は右サイド寺川が左足で入れたカーブクロスをノー・オフサイドで飛び出した上野が合わせそこない天を仰ぐ。両チームの激しい攻防がスタジアムを興奮に誘う。

 ついにC大阪は35分に先制する。西澤が軽やかなマルセイユ・ルーレットからシュートを放ちDFに当たって得た右CK、古橋のキックは緩やかなカーブボール。ニアに走った大久保は競ったDFの前に腕をねじ入れてジャンプ。側頭部(?)でとらえたヘッドはGK野澤の必死のジャンプも及ばずゴールイン。一瞬ざわめきが広がるが、さすがにビッグスワン、すぐさまオレンジカラーの選手を励ます大音量のコールに変わった。

 わずか1点のリードで安心するわけにはいかないC大阪は攻撃の手を休めない。しかし前半はこのまま終了する。1点をリードしたC大阪、一方柏は1−1の同点だ。「このまま終われば、、、、」、残留の希望がちらつく中、ピンクのサポーターたちの見せた笑顔をタイムアップ後も見ることができるのだろうか。



 前半、相手の激しい勝利への渇望にペースを譲り渡した新潟。しかし後半は俄然動きが良くなった。そして50分にはエジミウソンがスピード・ドリブルで仕掛ける。布部を弾き飛ばし前進し、巧みなコース取りにC大阪DFは混乱し、待ちかまえたCB柳本の寄せるタイミングが遅れる。その瞬間エジミウソンの左足インステップが唸った。GK伊藤の手の先を通過したボールはゴール右スミに突き刺さる。オレンジに染まったスタンドは激しく揺れ、すさまじい大歓声が巨大スタジアムに轟いた。C大阪の先制点の時とはまるで違う場所に来たかのような錯覚さえ覚えるほどだ。

 これで両会場ともに1−1の同点、このまま終われば一転柏がJ1残留となる。しかし生きるか死ぬか、残留を賭けた戦いのドラマはまだまだ終わらない、いやC大阪としては終わらせるわけにはいかないのだ。

 追いついた新潟を大観衆が後押しする。53分、またもエジミウソンに突破を許すC大阪。しかし前節出場停止で若い徳重健に譲ったポジションを、実績と経験で奪い返したGK伊藤が鋭い飛び出しでチームを救う。C大阪も古橋がボレーで、ヘッドでとGK野澤を脅かすが、ペースは新潟がつかんで放さない。相手ミスにつけこみ上野がシュート、しかしGK伊藤がこれもファインセーブ。さらにたたみかける新潟はボランチ山口、DF松尾が次々と狙うが決められない。ここで小林、反町両監督が動く。布部から苔口へ、桑原から本間へ。C大阪はワン・ボランチにするリスクを犯すようだ。

 78分、C大阪は元同僚の松尾にサイドからの突破を許すが、シュートはほんのわずか左に逸れて命拾いする。この幸運が流れを変えた。古橋、大久保が中央から連続して狙うが新潟も必死の守りで難を逃れる。奮闘した森島が去り、徳重隆が入りがむしゃらに2点目を求めるC大阪。大久保の混戦からの右足シュートが惜しくもクロスバーを叩く。新潟も逆襲からエジミウソンがDFを浮きダマでかわすがDFが粘り強く絡みシュートは打てない。続いて山口のシュートも大きくワクを逸れる。本当にゴールは7.32×2.44メートルもの大きさがあるのだろうか。



 しかし多勢に無勢ながらも必死の声援を送りつづけた遠来のサポーターたちに歓喜の瞬間がやってくる。左サイドからの苔口のクロスをDFがヘッドクリアするが小さく、ボックス内で大久保が拾う。マークを振り切ろうとするがDF鈴木健も必死にへばりつく。ボールは右にこぼれ、大久保は無理な体勢でしかも角度がないところからシュート、いやクロスだったか。しかし彼の勝利への執念、得点への想いが乗り移ったボールは鈴木健の左手に当たって落ちた。ホイッスルが鳴り響く。そして判定はペナルティ!しかも、抗議した鈴木健は2枚目のカードでピッチから追放される。一瞬静まり返るビッグスワン。しかしすぐさま大声で野澤コールが始まる。

 本来なら西澤がキッカーのはず。しかし腰が引けたのか、それとも後輩・背番号10への信頼感からか、ボールをスポットに置いたのは大久保だった。今後の彼にこれほど緊張する場面が果たして訪れるのだろうか。疑いなくサッカー人生で最も重要なPKのはずだ。そして小細工することなく蹴られたボールはGK野澤にも、そして今度はクロスバーにも触れずに激しくネットに飛びこんだ。緊張から解放され猛スピードで広告看板を飛び越え、愛し愛されるサポーターに喜びを伝えに走った大久保。ビッグスワンのほんの小さな一角だけは季節はずれのお祭り騒ぎとなった。

 しかしまだ86分、時間は残っている。簡単にホーム最終戦での負けを認めるわけにいかない新潟。オゼアス、平間を投入し同点を目指す。しかしボールを奪うとコーナー付近に運び時間消費に専心するC大阪。大久保、古橋の巧みな足技が4万超の大観衆をいらつかせる。C大阪のベンチ前では森島、布部そしてサブの選手たちが身を乗り出して声を振り絞る。どうやら大分での試合はすでに終わっているようだ。そしてタイムアップの笛が鳴り、大きなため息でスタジアムは包まれた。



「勝ちたい」という気持ちに満ちあふれた両チームの激戦は終わった。スタジアムを埋めた大観衆がナイスゲームを作りだしたといえる。C大阪はまさにミラクルな大逆転で残留を決めた。柏の試合経過を気にせず、ひたすら勝利を目指せば良かった立場が幸運だった。一方柏はC大阪の得点経過を気にしながらの戦いになったはずだ。ビッグスワンは終盤まで1−1だったのだから。さらに柏は対戦相手が大観衆にサポートされる大分で、しかもC大阪・小林監督の古巣だったことも不運だった。4万超の観衆に打ち勝ったC大阪に対して3万近い観衆に屈した柏。土壇場でのハートの強さの差、それはJ2陥落という修羅場を一度経験したC大阪の強みだった。それが両チームの明暗を分けたといえるのかもしれない。

 しかしC大阪にとって、この日の残留決定は決して天国なのではない。この日、自他ともに本当の「エース」だと認められた男に来季はもう頼ることはできないのだ。攻守全てのポジションでの格段のレベルアップがなければ、今季以上の地獄が待ちかまえているだろう。幸い今季は下から2番目で残留できた、しかし来季は下から3チーム目も入替戦行きなのだ。シーズン途中での監督交代という難しい仕事をなんとか全うした小林監督。しかし来季はもう言い訳は出来ない立場なのだ。


(アルビレックス新潟) (セレッソ大阪)
GK: 野澤洋輔 GK: 伊藤友彦
DF: 松尾直人 丸山良明 安英学 DF: 柳本啓成 上村健一 下村東美
MF: 桑原裕義(72分/本間勲) 山口素弘 寺川能人(89分/平間智和) 鈴木健太郎(84分/退場) MF: 布部陽功(68分/苔口卓也) 久藤清一 酒本憲幸 古橋達弥 森島寛晃(79分/徳重隆明)
FW: エジミウソン 上野優作(89分/オゼアス) 鈴木慎吾 FW: 大久保嘉人 西澤明訓
SUB: 木寺浩一 喜多靖 SUB: 徳重健太 齋藤竜 佐藤悠介
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