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 webnews 05/01/04 (火) <前へ次へindexへ>
苫米地のキックはきれいな弧を描いた。
北の雄・北海、PK戦の末、3回戦へ。
第83回全国高校サッカー選手権大会 2回戦 韮崎高校vs.北海高校

2005年1月2日(日)14:10キックオフ 西が丘サッカー場 観衆:7,254人 天候:晴
試合結果/韮崎高校1−1北海高校(前半0−0、後半1−1、PK3−4)
得点経過/[北海]苫米地(41分)、[韮崎]岩崎(79分)


取材・文/西森彰

 2年ぶり32回目の出場となる、山梨県代表・韮崎高校は1回戦で高知高校を退けたが、その代償として中心選手の山本一邦をケガで失った。「(『山本が戻ってくるまで、絶対に勝ち残ろうと?』)それはもちろん。みんな『絶対に勝ってやろう』と思っていました」(岩崎大輔・韮崎)。対するは徳島商業高校を破ってここに進出した北の雄・北海高校だ。



 韮崎は、キャプテンの三枝史充也が4バックの前に位置して、4-1-3-2のような形で立ち上がった。トップに入った柏好文が最終ラインのあたりをフワフワと不気味に上下動する。「トップの柏君が左サイドに上手く流れて、あれでウチの最終ラインが押し上げられなくなってしまった。自分たちの目を信じられなくなってしまっていました」と北海の島谷制勝監督。サイド攻撃でゴール前まで押し込んで、からっぽになったバイタルエリアから三枝のミドルシュートが飛ぶ。序盤は韮崎ペースで推移した。

 北海は、左SB・苫米地秀樹の左足から反撃に転じる。「最近は試合だけなく、練習でも良いボールが入らなかった。あんまり決まらないんで、一度苫米地には『キッカー失格』を言い渡していたんです」(島谷監督)。この日は正キッカーがベンチスタート。仕方なく再任させた苫米地の左足が、当たりに当たった。苫米地の正確なクロスが、前線の選手が欲しいところへ供給される。

 そして、後半立ち上がりの41分、北海はチーム全体で一気に韮崎ゴールを襲った。満生健、蟻川将寛、三浦功司とつないで、韮崎DF・飯塚裕太のファールを誘い、イエローカードと直接FKをもぎ取る。北海の選手たちは、GKの前にブラインドを作り、壁にも2枚潜り込ませて、ニアサイドでのヘディングシュートを守備側に意識させた。そうしておいて苫米地のキックは、壁とGKの頭上を越して、一番奥へきれいな弧を描いた。



試合終了まで大声援を送った韮崎の応援団。
蹴り直しを含めて3本ストップの瀬川。
 韮崎の深沢一とも監督は、55分、中盤の攻撃的な位置にいた選手を一気にふたり代えて、塚田大士と1年生の岩崎大輔を投入した。63分、その岩崎が、柏とのコンビネーションで左サイドを崩し、田辺健太の頭にピタリと合わせたが、GKの真正面に飛んでしまう。北海も直後に、満生が右サイドをドリブルで突進、強烈なシュートはニアポストを直撃する。さらに1分後、三浦が力強いドリブルからシュートを放つが、韮崎GK・石川祐がセーブ。互いに、相手ゴールを脅かす、激しい試合展開になった。

「前半は相手GKのキックで長いボールが飛ぶので、最終ラインが怖がって引いてしまっていた。『裏を取られてやられたら仕方ない。引いてやられたら後悔するぞ』と言いました」。島谷監督の指示で後半は良く押し上げていた北海の最終ラインだったが、1点リードの展開にどうしても守りの意識が強くなってしまう。残り10分を切ったあたりから、選手交代で活性化した韮崎の中盤が、北海のクリアボールをことごとく拾って、波状攻撃につなげだした。

 そして、規定の80分に達しようとする瞬間だった。韮崎DF・眞壁幸司が前方に蹴りこんだボールが、相手DFに当たって左サイドにこぼれる。ここにいたのが岩崎。途中出場の1年生が振りぬいた左足は、一瞬にして韮崎のビハインドを帳消しにした。「これは勝ったな」。緑の輪の真ん中でもみくちゃにされながら、岩崎大輔が確信したように、勢いは完全に韮崎だった。



 土壇場で追いつかれた北海の島谷制勝監督は、懸命に選手たちの集中力を取り戻そうとした。「ウチの子供たちが特に変なミスをしたわけではありませんし、相手にも名門校の意地がありますし。それがサッカーだからやめられないんだと思います。生徒にはそれを伝えてPKで思い切り蹴ってもらいました」。だが、PK戦に入っても流れは韮崎にあった。

 双方ふたりずつが成功させた後、3人目のキッカーになったのは同点ゴールを挙げた岩崎。ゴール右に向かって蹴ったボールは、GKの瀬川勇介が一度はストップした。だが、瀬川が動くのが早過ぎたということで、小川直仁主審は、岩崎に蹴り直しを指示する。この蹴り直しを岩崎が成功させる。この日の西が丘サッカー場は、韮崎に、いや岩崎に微笑みかけていた。

 だが、北海のGK・瀬川は、自らを奮い立たせた。「嫌な感じはありませんでした。弱気になったりそういうことはないです」。自分がここで弱気になったら負け。次を止めれば同じ。自軍の上原宏太が決めてつないだ後、韮崎4人目の飯塚裕太、5人目の三枝を連続でストップする。好きなGKの名前を訊かれてイギータの名前を挙げる小柄な守護神が、PK戦で輝いた。



 喜びに沸く北海の選手と応援団の向こう側で、うなだれた韮崎のイレブンを緑に染まったスタンドが温かく迎えていた。「やっぱり守備があんまりできていないと思うんで、まずは守備から練習して。努力して、もっともっと努力して、来年、また出たいと思います」。雪辱を誓った岩崎。それが去り行く3年生へ何よりの贈り物だ。


(韮崎高校) (北海高校)
GK: 石川祐 GK: 瀬川勇介
DF: 村松祐太、飯塚裕太、眞壁幸司、宮川拓也 DF: 安田悠真、中島和也、松田卓己、苫米地秀樹
MF: 三枝史充也、小俣大輔、秋山芳徳(55分/塚田大士)、相山瑞樹(55分/岩崎大輔) MF: 関祐太、上原宏太、清水義勝、三浦功司
FW: 柏好文(76分/堤悟)、田辺健太 FW: 蟻川将寛(70分/高屋裕明)、満生健
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