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 webnews 05/01/07 (金) <前へ次へindexへ>
気持ちで奪い取った天皇杯。東京ヴェルディ、頂点へ!
第84回天皇杯全日本サッカー選手権大会 決勝 東京ヴェルディ1969vs.ジュビロ磐田

2005年1月1日(元旦)13:32キックオフ 国立霞ヶ丘競技場 観衆:50,233人 天候:晴一時曇
試合結果/東京ヴェルディ1969 2−1 ジュビロ磐田(前1−0、後1−1)
得点経過/[東京]飯尾(35分)、平本(53分)、[磐田]西(77分)


取材・文/中倉一志

 77分、磐田は1点を返すと、さらに勢いを増して東京Vに襲い掛かった。ゴール前に人数をかけて壁をつくる東京V。だが、後半を10人で戦うことを強いられた東京Vに残された力は少ない。既に足をつっている選手が何人もいる。それでも東京Vは、最後の砦を決して明け渡さなかった。この1年間で積み重ねてきたもの、天皇杯を戦う中で身に付けたもの、そして胸に去来する様々な思い。その全てを賭けて磐田の猛攻を跳ね返した。

 長く感じられた2分間のロスタイムの終わりを告げるホイッスルが鳴る。ピッチの上で東京Vの選手たちが雄叫びを上げる。ベンチからは控えの選手たちが一斉に飛び出していく。そして決勝ゴールを挙げた平本と、先制ゴールを叩き込んだ飯尾は無言で抱き合った。かつては常勝軍団と言われた東京Vの8年ぶりのタイトル。いや、その言葉は適当ではない。生まれ変わった東京Vが、様々な思いを乗り越えて手にした初めてのタイトルだった。



 立ち上がりから東京Vは鋭い出足で前に出た。高い位置からプレッシャーを賭けてボールを奪い、スピードのある飯尾と平本にボールを預けて前線をかき回し、左からは成長著しい相馬がオーバーラップから鋭いクロスを送る。ボールを捌くのは両小林と林の3人。林が中盤の底でボールを落ち着かせ、小林大吾が2トップをフォロー。そして小林慶行がバランスをとりながら攻守のつなぎ役を果たす。ルーズボールに対する寄せも鋭く、この試合にかける意気込みが伝わってくる。

 対する磐田はゆったりと試合に入った。その入り方は7、8割方のペースだろうか。攻撃はグラウにめがけてボールをぶつけるだけ。セカンドボールを拾えず、ボール支配率で東京Vに劣るばかりか、東京Vのパス回しに振り回されるシーンも。しかし、連戦練磨の余裕からか落ち着き払った態度は崩れず、「勝負どころは、まだ先」とでも言いだけに、ゆったりとしたペースを変える素振さえも見せない。東京Vとは対照的な立ち上がりだ。

 そんな磐田に対して東京Vは、3分、8分、そして29分と決定的なシーンを作り出す。ところが、これを平本がことごとく外す。大舞台への気負い。経験のなさ。そんな言葉が頭を掠める。それでも、タイトルに向けて強い意欲をむき出しにする東京V。そして35分、その思いが結実する。小林大吾のFKに頭で合わせた平本のシュートは、またもやポストに嫌われたが、ゴール前に詰めていた飯尾がこぼれ球を押し込んだ。スタンドから大歓声が上がる。



 ところが、この1点で目を覚ましたのは磐田。いきなりギアチェンジをして東京Vに襲い掛かった。スピード豊かなパス回しは、東京Vの中盤と最終ラインを何度も引き裂いていく。38分にはグラウの決定的なシュートがGKを襲い、41分には福西のヘディングシュートがゴールポストを掠めた。しかも44分には、小林慶行が2枚目のイエローカードを受けて退場処分に。東京Vは何とか1−0で前半を折り返したが、もはや試合の主導権は磐田が掌握していた。

 しかし、東京Vの気持ちは萎えていなかった。磐田の猛攻を凌いだ後の53分、平本が前線から激しくチャージ。磐田のミスを誘ってボールを奪う。そして目の前に広がるスペースへ向かってドリブルを開始した。「1人退場になって飯尾が下げられた。飯尾が凄く悔しい思いをしていたので飯尾と俺の得点で勝ってやる」(平本)。寄せてくる磐田の選手をものともせずにゴール前へ。そして左足を振り抜くと、チームメイトへの思いと、勝利への思いを乗せたボールがゴールネットを揺らした。

 後は時間との戦いだった。さすがにもう動けない東京V。磐田は後半から出場した中山にボールを集めてゴールを襲う。東京Vの2点目が生まれてからは4バックに変更してサイドからの攻め手を増やした。そして72分にはグラウに代えて藤田。福西を高い位置に上げて攻めの枚数を増やして東京Vをゴール前に釘付けにする。77分の西のゴールで1点差に迫り、更に激しくゴールに迫った。しかし東京Vは気迫で耐えた。そして国立競技場にホイッスルが鳴り響き、東京Vは頂点に上り詰めた。



「怪我人が多かったり、その怪我人がぱっと復活して外されちゃう選手がいたり、来年うちでプレーしない選手がいたり。だからこそ最後にみんなでタイトルを取ろうと、このメンバーで何かを残していこうよというのが、いい方向に向かった」。山田は試合後、そう振り返った。いろんな思いが交錯する中、心をひとつにして勝利を重ね、タイトルへの強い気持ちを国立の舞台にぶつけた。そんな姿は50,233人の観衆の心を引き付けた。天皇杯チャンピオンの名にふさわしいチームだった。

 一方、敗れた磐田は改めてチーム再建の必要性を露呈することになった。試合巧者の磐田が10人の相手に勝てないなど全盛期では考えられないことだ。その現状を考慮してか、山本監督は試合内容よりも「来季」という言葉を盛んに口にした。しかし、目の前の勝負を勝ち抜いてこその将来。いま敗れては明日はやってこないのが勝負の世界だ。その原則を忘れずにチーム再建に着手できるか。いま磐田はそれを問われている。




監督・選手の試合後のコメントにつきましてはこちらをご覧ください


(東京ヴェルディ1969) (ジュビロ磐田)
GK: 高木義成 GK: 佐藤洋平
DF: 李康珍 米山篤志 富澤清太郎 DF: 鈴木秀人 田中誠 菊地直哉(65分/川口信男)
MF: 林健太郎 山田卓也 相馬崇人 小林大悟 小林慶行(44分/退場) MF: 河村崇大 福西崇史 服部年宏 西紀寛 名波浩
FW: 平本一樹 飯尾一慶(HT/柳沢将之) FW: グラウ(72分/藤田俊哉) 前田遼一(HT/中山雅史)
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