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 webnews 05/01/07 (金) <前へ次へindexへ>
こだわりのパスサッカー。津工業3回戦で姿を消す
第83回全国高校サッカー選手権大会 3回戦 盛岡商業vs.津工業

2005年1月3日(月)12:10キックオフ 三ツ沢球技場 観衆:5,000人 天候:晴
試合結果/盛岡商業3−1津工業(前2−1、後1−0)
得点経過/[盛岡]高橋(1分)、[津]鈴木(7分)、[盛岡]山崎(29分)、福士(67分)


取材・文/中倉一志

 90年代にトレセン制度の改革により、JFAの強化指針が全国各地に浸透し、ユース年代の育成が共通意識を持って行われるようになったことは、サッカーに興味のある方なら良くご存知の話だろう。また、一発勝負のトーナメント戦を勝ち抜くためには、リスクを極力回避する戦術を取ることが基本であることも誰もが知っていることだ。しかし、そこはサッカー。基本的に何でもありのスポーツは、どんなときにも異色のチームが存在する。

 今大会が初出場となる津工業は、まさにそんなチームだった。「サッカーは考えられたファーストタッチと精度の高いパスに尽きる」という藤田一豊監督のこだわりは、自陣の最終ラインからでも細かくパスを繋なぐサッカー。そして、異色とも言えるサッカーに、お手本のようなオーソドックスなスタイルで臨んだ盛岡商業も、ある意味ではこだわりを持ったチーム。そんな両チームの戦いは非常に密度の濃い、見ごたえのあるゲームだった。



 試合は、盛岡商業・高橋大(3年)の開始直後の1分のゴールで幕を開けた。しかし、序盤の主導権は津工業。4−2−3−1のシステムで臨む津工業は、160センチと小柄ながらも1トップを務める菊池(3年)が前線で動き回ってボールを引き出すと、2列目からは加藤(3年)がDFラインの裏へ飛び出し、両サイドのMFが空いたスペースへ向かって走り込む。トップのキープ力と、ボールを持たない選手の動き出しが肝になるシステムだが、鍛えられた選手たちは流れるようにボールを繋いでいく。そして7分、早々と同点に追いついた。

 対する盛岡商業のシステムは4−4−2。最終ラインを積極的に高い位置に置き、コンパクトな中盤を形成して、チャレンジ&カバーを繰り返す高い位置からの守備と、ボールを奪ってからの早い攻撃でゴールを目指す。そしてフラット4の最終ラインが巧みにラインを上下させて、相手のトップの動きを封じ込める。押し込まれる展開が続くが、慌てずにピンチの芽をひとつ、ひとつ摘んでいく。そして、津工業の動きに慣れたのか、25分を過ぎた辺りで主導権を奪い返した。

 そして迎えた29分、盛岡商業にファインゴールが生まれる。中央でボールを持った山崎(3年)が左前方のスペースへボールを送る。そしてスペースへ飛び出してパスを受けた藤舘(3年)が折り返すと、そこへ走りこんできたのは山崎。ドンピシャリのタイミングで放ったシュートはクロスバーを叩いたが、そのまま下に跳ね返ってゴールラインを割った。スピード、タイミング、そして2人の連携。見事なゴールだった。



 このまま試合の主導権は盛岡商業が握る。津工業はどんなときにもボールを蹴り出すことがない。そのパターンを読み切って、相手がパスを受けると激しくプレッシャーをかけて囲い込む。奪ったボールをポストに当てて、落としたボールを前を向くボランチがサイドへ展開。そこからオープン攻撃を仕掛ける。絶妙のバランスを取って試合を支配する盛岡商業の優位は動かないようにも見えた。

 ところが津工業もジリジリと盛り返す。狙いは高いラインを敷く盛岡商業の右サイドに空くスペース。ここへ途中からトップ下に入った梅原(2年)と、左MFの岩崎(3年)が走りこんでチャンスの芽を広げていく。いつしか試合は五分と五分。それどころか、23分、24分には津工業が決定的なシュートを放つ。再びリズムを刻みだした津工業の攻撃。疲れを知らないかのように走り回る姿に、盛岡商業は明らかに手を焼いている。

 そんな試合も縦1本のパスで勝負が決した。この日は強風が吹き荒れるあいにくの天気。盛岡商業のロングボールの処理に、津工業のDFが安全を考えてボールをバウンドさせた。すかさず巧みに身体を入れたのは福士。素早くマイボールにすると、そのままゴール前へ。右足を振り抜くと、ドン!という音とともに津工業のゴールネットを揺らした。これで勝負あり。盛岡商業は、そのまま主導権を離さずに試合を終わらせた。



「DFラインであれだけ切り返すチームを、私は初めて見ました。よほど自信があるんでしょう。勉強になりました」とは盛岡商業の斎藤監督。とにかく徹底して走り回り、徹底してボールを繋ぐサッカーは新鮮だった。その一方で、この日の盛岡商業が見せたように、ボールを保持するところにプレッシャーをかけられてピンチを招いたのも、パスをつなげることにこだわるからでもある。「その辺の折り合いをつけなくちゃいけないんだけれど」。もちろん藤田監督(津工業)も、その欠点は承知だ。

 しかし、藤田監督は蹴ることは選択しそうにない。「蹴るのは好きじゃないんです。ボールにメッセージがこもってないと意味がない。蹴るのはどこかへ行って教えてもらえって感じてすね。これで痛い目にもあっているけど子供たちは、それも織り込み済みですから(笑)」。このサッカーにこだわる限り勝利を手にするのは難しい。しかし、勝利を放棄するのではなく、こだわりを持ったサッカーで勝つことを目指すのも悪くない。難しいことかもしれないが、それもまたサッカーだ。

 そんな津工業の対極にあるようなオーソドックスなサッカーを見せた盛岡商業も、その洗練された組織力は見応えがあった。特に、Jリーグ開幕当時のような、フラットに並んだ最終ラインが相手の体制に合わせて上下動する姿はきれいだった。その組織サッカーで辿り着いた準々決勝の相手は国見。「自分たちのサッカーをやっていくしかない。慌てないでやる」(斎藤監督)。盛岡商業は初の国立を目指す。


(盛岡商業) (津工業)
GK: 三浦昭 GK: 扇本雅史
DF: 村上大心 小林祐久 川村雅俊 斉藤知志 DF: 野垣内俊 山田慎二 大谷勇介 杉本恭彦
MF: 高橋佑彰 山崎良介(71分/竹田大和) 中野翼 藤舘祐輔(55分/藤原純) MF: 大平渉太 中村竜二 岩崎陽平 鈴木康平 加藤祐也(52分/梅原拓也)
FW: 福士徳文 高橋大(49分/田中大介) FW: 菊地光輔(62分/青木朱太)
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