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 webnews 05/01/07 (金) <前へ次へindexへ>
国見イレブン。
ただゴールだけが足りなかった。藤枝東もPKに散る。
第83回全国高校サッカー選手権大会 3回戦 国見高校vs.藤枝東高校

2005年1月3日(月)14:10キックオフ 駒場運動公園競技場 観衆:約11,500人 天候:晴
試合結果/国見高校0−0藤枝東高校(前半0−0、後半0−0、PK5−4)


取材・文/西森彰

 昨年の全日本女子サッカー選手権1、2回戦。私が担当したのは、静岡・日本平会場だった。おりしも国立霞ヶ丘陸上競技場では、国見高校と筑陽学園高校による全国高校サッカー選手権の決勝戦が行なわれていた。当日、目を通した地元の新聞に、決勝戦の話題を枕に使った静岡県勢の選手権における不振についてのコラムが載っていた。

 最後に優勝したのが9年前、第74回大会の静岡学園高校(鹿児島実業高校と両校優勝)、ベスト4=国立に進んだのも7年前、第76回大会の藤枝東高校まで記録を遡る必要がある。「日本一のサッカーどころ」を自負する静岡県。いくら、県内予選の厳しさがビハインドになっているとは言え、結果として代表校の成績が振るわない事実…。静岡県民の悔しさが伝わってくる文章だった。

 昨年は立正大湘南高校の前に初戦で敗退、非難の矢面に立たされた藤枝東高校。その借りを返すべく、サッカー王国の予選を勝ち抜き、今年も全国の舞台に帰ってきた。1回戦で佐賀東高校、2回戦で西武台高校を降して順当にトーナメント表を上がっていく。そして3回戦、いよいよ前回チャンピオン・国見との対戦を迎えた。



「まあ、前に高円宮杯で一度やっていますし。その時は渡邉(千真)君はいなかったですけれども、そんなにチームのやり方も変わってこないし、昨日の試合も確認しました。そこでいつも3人でやっているDFを4人に増やして、高さにも対応ができたと思います」(服部康雄監督・藤枝東)

 互いにポジションを入れ替えながら、最終ラインを脅かす国見の変則3トップ。2列目の選手に入られた時に3バックでは同数の戦いを強いられてしまう。そこで、今大会初出場となる知野匡伸をセンターバックに起用し、170センチ台前半の小柄な最終ラインに、高さのテコ入れを行なった。そして、中盤はダブルボランチから、キャプテン・増田洋平のワンボランチに変更し、赤星貴文を頂点にしたダイヤモンドの中盤を組む。

 一方の国見は、柴田公章、中村祐輝の藤枝東2トップに、吉住貴士と藤田優人をマンマークで付けて、一番後ろに比嘉隼人が余る。中盤は、右に中川翔平、左に渡辺三城。相手のキープレーヤー・赤星は木村星弥が視界に入れて、中央で出崎升浩がバランスを取る。そして、その前に渡邉千、本吉伸、城後寿の3人が配された。


藤枝東イレブン

 前半は国見が中川、渡辺三の両サイドに回し、そこからクロスを狙う。その攻撃は織り込み済みの藤枝東は厳しいチェックで、良質なボールを3トップに与えない。その中で互いに薄くなっている中盤を飛ばして、前の選手にボールを預ける。ショートパスをつなぐ展開をイメージしていた国見は、速攻に戸惑いを見せる。

 そして17分、左サイドを崩した藤枝東は中央へのパスを赤星がスルー。その裏で中村がボールを受けるが、トラップが流れてシュートを打てない。20分にも、増田が入れた嫌らしいロブを、国見GK・原田和明がファンブル。これを中村が狙ったが、その前の接触プレーで傷んでいた中村は弱いボールを蹴って、DFのクリアを許してしまう。

 国見は、23分に五輪のデ・ロッシと同じポジションで本吉がバイシクル・キックを試みるがヒットせず。直後にも木村がハーフウェーラインを越えたあたりで、ロングシュートを試みる。どちらもゴールを狙うことよりも、相手に行きかけた流れを手繰り寄せる試みだが、藤枝東も中盤のパスカットから鈴木がシュート。なかなか主導権を渡さない。

 それでも26分、中川からのクロスボールをニアサイドで本吉がヘディングでつなぎ、渡邉千の頭上を越したボールを城後が詰める。国見にしてみれば狙い通りの形で陥れたゴールだったが、これはオフサイドの判定で得点が認められない。30分にも、城後のロングスローから渡邉千が決定的な場面を迎えたが、これも藤枝東GK・碓井健平に阻まれる。前半はほとんど五分の展開でハーフタイムを迎えた。



紙一重の決着。
「前半はゼロ(0対0)でOK」(服部監督)と考えていた藤枝東は、後半に入ると優位に立っていく。相手の3トップを恐れず、終始、高い位置をキープする最終ラインに背を押され、藤枝東の選手たちは前に出た。逆に相手のテクニックに翻弄されて、1対1でボールを奪えない国見の選手たちに疲れが見え始めた。

 52分、右サイドから閨谷太希の蹴ったボールが、国見のゴールバーを直撃。赤星がリバウンドを拾ったが、厳しい寄せにシュートが打てない。59分にはカウンターから中村、柴田とつないでシュート。61分には、右コーナーキックの場面で、鈴木がスルーと見せかけてニアサイドからシュート。さらに連続コーナーキック。ジワリジワリと国見のゴールに迫る。

 あの国見がボールポゼッションで下回り、自陣でハーフコートゲームを強いられている。冬の選手権で国見がこれほどの苦戦を強いられているのは、いつ以来なのだろう? 敗れた一昨年の決勝戦でさえ、市立船橋高校のタクティクスに嵌った感が強かった。この日の藤枝東は違う。自分たちのサッカーをぶつけて、それで国見を圧倒しているのだ。

 使い古された常套句ではあるけれども、ボクシングなら藤枝東が大差の判定勝ちを収めていた。しかし、サッカーにおいては、「ゴール」という明確なポイントを示さなければならない。前後半40分ずつ、合計80分間を戦い終えた時点で、藤枝東に足りなかったのは、まさにたった一つのゴールだけだった。しかし、その最後の1ピースは試合終了のホイッスルまで埋まらなかった。



メインスタンドからは敗者へ一際大きな拍手が送られた。
 国見の小嶺忠敏総監督は「PKはラッキー。こういう展開の中でも勝てたことを評価したい」と、とりあえず次に進めたことを多とし、「押し込まれても簡単に失点しないところが、成長したところだと思う」「やっぱりシュートが少なかった。それについては納得がいっていない」と選手たちの口からも収穫と課題が出ていた。

「結果が出れば良い訳ではない。しかし、結果を出さなければ話にならない」。そんなリアリズムが国見の遺伝子には組み込まれているのだろう。内容で完璧に凌駕され、ともすれば崩れてもおかしくない試合展開の中で、全員が80分間を耐え抜き、そしてイーブンの状態で取り直せるPK戦に持ち込んだ。彼らが負けなかった事実は残る。

「(内容では)負けた感じはない。次に進む方法としてPK戦があるのは仕方がないと思っています。これまでやってきたことは間違っていなかった。鈴木崇とか、中村とか、難しいシュートだったとは思いますが、そのうちの1本でも入っていれば…。国見と市立船橋ばっかりの大会を何とか変えていければと思っていただけに残念です」

 PK戦終了後、服部監督は悔しそうに語った。レギュレーションを受け入れてPKの練習も行ない、蹴る順番も決まっていた。ストップされた第1キッカーの赤星は「滅多に外さない選手」。選手交代についても質問が出ていたが、高校生クラスでは、あの緊迫した局面ですんなりゲームに入れる選手はなかなかいない。しかも自分たちが押している状況で、変える理由も見当たらない。服部監督にしてみれば、打てる手を全て打っての敗戦だろう。

「(『国見のようなサッカーは』)ああいうサッカーじゃなく勝ちたいっていうのはあります。ただ結果を出さなければ何も言えないのがサッカーですし、あそこまで徹底してやれるというのは素晴らしい。僕はやりたくないし、選手もやりたくないでしょうけれども」(服部監督)




 勝った国見よりも多くの拍手を背中に浴びて、藤枝東の選手はロッカールームに引き上げた。紫のユニフォームを銀のベンチコートで覆った赤星の姿もあった。卒業後、彼は浦和レッズの選手として、1、2回戦を戦ったさいたまスタジアム2002、3回戦を戦った駒場運動公園競技場で勝利を目指す。浦和の一員として彼が見せるプレーは、藤枝東のサッカーが正しかったのかどうかを検証する「延長戦」でもある。


(国見高校) (藤枝東高校)
GK: 原田和明 GK: 薄井健平
DF: 比嘉隼人、藤田優人、吉住貴士 DF: 井上翔太、知野匡典、小関佑典、原田圭輔
MF: 中川翔平、木村星弥、出崎升浩、渡辺三城 MF: 増田洋平、閨谷太希、鈴木崇記、赤星貴文
FW: 本吉伸、城後寿、渡邉千真 FW: 柴田公章、中村祐輝
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