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 webnews 05/01/08 (土) <前へ次へindexへ>
手の内を知り尽くした同士の対戦は鹿児島実業に軍配
第83回全国高校サッカー選手権大会 準々決勝 多々良学園vs.鹿児島実業

2005年1月5日(水)14:10キックオフ 駒沢陸上競技場 観衆:4,210人 天候:晴
試合結果/多々良学園1−2鹿児島実業(前1−0、後0−2)
得点経過/[多々良]楢崎(6分)、[鹿児島]山下(42分)、赤尾(75分)


取材・文/中倉一志

「多々良さんには本当にお世話になりっぱなしですから。向こうの方も、うちを兄貴分みたいに思ってくれていて、今日も試合前に恩返しをさせていただきますと言うんで、俺は夏にお世話になった恩返しをするよって」(松沢総監督・鹿児島実業)。

 多々良学園と鹿児島実業は知り尽くした仲だ。5月の連休には多々良学園が中心になって行うフェスティバルに鹿児島実業が参加。夏のインターハイ前にも、鹿児島実業は多々良学園のグラウンドを借りて強化合宿を行っている。今年の対戦成績は練習試合も含めて1勝1敗2分と五分。お互いに手の内は分かりきっている両校は、今シーズンの最後の舞台で雌雄を決することになった。



 ただひとつの目標である優勝へ向けて着実に駒を進めてきた鹿児島実業。3回戦で右SBの選手が退場処分を受けたため、この日はDF登録の赤尾をボランチで起用する3−5−2システムで臨む。それでもボールを回す姿を見る限りではチームに不安材料はない。どっしりと構えながら力強さを感じさせるプレー振りは、さすがに優勝候補の名にふさわしい。しかし、準々決勝は思いもよらない展開で幕が開けることになった。

 開始直後の6分、多々良学園は最終ラインから、右サイドのスペースへ出た楢崎(2年)へロングボールが渡る。何の変哲もないプレーだったが、鹿児島実業はエアポケットに落ち込んだように誰も反応せず。スルスルとドリブルを仕掛けた楢崎は、苦もなくGKと1対1に持ち込んでゴールネットを揺らした。あまりにもあっけない鹿児島実業の失点にスタンドにどよめきが起こる。多々良にとってはいい意味で、鹿児島実業にとっては悪い意味で、思いもよらないゴールシーンだった。

 ここから多々良学園は徹底して守備を固める作戦に出る。鹿児島実業の両WBには左右のMFが最終ラインにまで下がってマンマークで対応。2トップは最終ラインの4人で見る。そしてトップ下の平間(2年)はボランチが2人がかりでケアした。どこから攻めてきても必ず2人で対応するという多々良の守備的なスタイルに鹿児島実業は手を焼くことになる。ただいたずらに前線に放り込んでは難なく弾き返され、全く攻撃の糸口を見つけることなく前半を過ごさなければならなかった。



 閉塞感だけが残った前半。しかし、鹿児島実業はワンプレーで試合の流れを引き戻した。後半開始直後の42分、GKからのハイパントを相手のDFがそらしたところへ山下が走りこむ。そして、カバーのために前に出てきたGKの動きを冷静に確認すると、難しい体制から見事なループシュートをゴールマウスへと流し込んだ。直前の攻撃でMFが前に上がっていたために、一瞬だが山下がDFと1対1の関係に。そこをすかさず突いた見事な攻撃だった。

 ここから鹿児島実業の猛攻が始まる。まずトップに楔のボールを打ち込んで、2列目から平間がラインの裏へ飛び出していく。その動きに多々良のDFラインの注意が中へ向けられると、手薄になったサイドを両WBが駆け上がる。2トップと両WB、そしてトップ下がめまぐるしく動き回る鹿児島実業の攻撃に、多々良の最終ラインは崩壊寸前。ゴール前に釘付けにされる。しかし粘る多々良学園は、この猛攻をなんとか凌いで体制を立て直す。

 鹿児島実業の攻め疲れもあったのだろう。60分を過ぎてからは試合は再び膠着状態に。力任せに攻める鹿児島実業と、粘り強い守備からカウンターを狙う多々良学園。むしろ、高い位置で起点を作ってボールを回そうとする多々良学園に流れが傾きかけたかにも見えた。しかし75分、鹿児島実業は渡邉が右サイドを突破。絶妙なクロスボールを折り返した。そして、中央へ飛び込んだのは赤尾。ドンピシャリのタイミングで頭で合わせて、決勝ゴールとなる2点目を叩き出した。



 鹿児島実業にとっては嫌な展開だった。徹底的に守られて攻め手を消され、同点に追いついた後の猛攻も中々実を結ばなかった。しかし、最後まで攻め続けるという気持ちを持ち続けたことが、足元をすくわれることなく決勝ゴールを奪うことに結びついた。優勝という明確な目標を掲げるチームの強い精神力と、培ってきた地力の強さがもたらした勝利であったと言える。鹿児島実業は2年連続のベスト4進出。そして目標まで、あと2つと迫った。

 準決勝の相手は同じく九州の国見。今年のプリンスリーグでは勝利を収めた。しかし松沢総監督は、「あの時はごまかしで。押されっぱなしの中で1点とって、相手のシュートミスに救われた。勝ちをもらった試合」と多くを語らない。最大にして最強のライバルとの準決勝。どんな形になっても激しい試合になることだけは間違いない。「目一杯戦う」とは松沢監督。この戦いの先に、9年ぶり、そして初の単独優勝が待っている。







(多々良学園) (鹿児島実業)
GK: 柳井一茂 GK: 片渕洋平
DF: 碇野壱馬 福田僚平 西嶋聡 村上晋悟 DF: 伊集院俊弘 岩下敬輔 西岡謙太 赤尾公
MF: 楢崎佑馬 平間直道 菅田恭介 谷本詳太(66分/恵谷将) MF: 三代将平 上村豊和 坪内佑太郎 渡邉辰巳
FW: ハウバート・ダン 石田聖雄 FW: 栫大樹 山下真太郎
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