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 webnews 05/01/23 (日) <前へ次へindexへ>
第83回全国高校サッカー選手権備忘録(前編)


取材・文/2002world.com編集部

 冬の全国高校サッカー選手権を取材し始めて、今年が4年目になる。「延長戦無し、即PK戦」のノックアウト方式というレギュレーションからか、昨今では高円宮杯全日本ユース選手権の創設もあり「ユース年代のナンバー1チームを決める戦いではない」との声も出始めた高校選手権。それでも「冬の選手権」というのは高校サッカーの現場にいる関係者、選手にとって、一世一代の晴れ舞台であることに変わりはない。

 鼻をつんと刺す冬の冷気、そして強行スケジュールと取材・執筆条件は厳しいのだが、年を重ねるにつれて、それらの障害もひっくるめて楽しめるようになってきた。忘れかけていたことを気づかされたり、ハッとする一言を聞いたり…。そんなプラスの部分を信じてスタジアムに足を運べるからだろう。



 第83回全国高校サッカー選手権大会の火蓋は、今年も12月30日に切られた。開会式直後のきれいな青空の下にできた本当の「晴れ舞台」。国立霞ヶ丘陸上競技場で行なわれた開幕戦に登場した山形県代表・羽黒高校と京都府代表・城陽高校は、今大会最初の勝ち名乗りを受けようと争った。前半は城陽、後半は羽黒。きれいに前後半で攻守が入れ替わり、1対1のタイスコアでPK戦にもつれ込む。予選でPK戦を3勝し専用GKを備える城陽が有利に思えたが、大会前に訪れたジーコ・日本代表監督の激励に応えて、羽黒が白星を掴んだ。

 CFZから来たブラジル人選手のひとり、ブルーノ・カルバリョは「日本でサッカーをやりたいと思っていた。(『ブラジルではなく、日本で?』)はい、将来はJリーグでプレーをしたい。好きな選手は、小笠原選手です」とキッパリ。外国人選手にリーガ・エスパニョーラやセリエA等と比較検討されるようになれば、Jリーグも安泰だ。まだ12年だが、徐々に芽は吹き出している。

 大晦日に行なわれた1回戦の残り試合は、前日の青空が嘘のような悪天候の中で行なわれた。2年ぶり11回目の出場となる前橋商業高校の初戦は、雪が積もった西が丘サッカー場だった。ボールコントロールもままならない雪の中での死闘は、その後に得点王争いにも顔を出したDF・糠谷祐真を使ったセットプレーでワンチャンスを生かした前橋商業が、東海大仰星高校の粘りを制した。

 前橋商業の石関聖監督は、選手時代に果たせなかった「全国出場」の夢を、指導者としてかなえた。「僕も選手時代を通じて初めて全国の方に来たので、先のことはあまり考えていませんでした。僕よりも選手たちのほうが落ち着いていたかもしれません。今日宿舎に帰って、また先の事を考えます」。初々しいコメントで初陣を飾った感想を述べると、報道陣から出た「次は『前商らしいサッカー』を期待しています」という激励に対し、「今日は前商のサッカーができていませんでしたか?」とおどけてみせる余裕も。ベスト8までの4試合で「前商らしいサッカー」が何試合できたのか、再会した折に訊いてみたい。



 同じく、雪の中で熱戦を繰り広げたのが青森山田と米子北の一戦だった。会場の柏の葉の第1試合は雨。なんとか雪は免れたかと思っていたら、1試合目の終了と同時にちらほらと風花が舞い始めた。そのまま激しさを増した雪は、どんどんピッチを白く覆っていく。このカードは今夏のインターハイの再現となる試合。4−4のドローからPK戦で敗れた青森山田は雪辱を、米子北はインターハイの再現を狙う。戦前の予想通り、攻める青森山田、守ってカウンターの米子北という図式で試合は進む。

 試合は終了間際に小寺が挙げたゴールで青森山田が逃げ切ったが、試合そのものは米子北の狙い通りの展開。押されているように見えてゴールを与えず、相手にスペースが出来たところでスーパーサブの大家を投入。直後には決定的なチャンスを掴むなど、後一歩まで迫った。しかし、その展開を力で押さえ込んだのが青森山田。これが地力の差というものだったのかもしれない。「雪は慣れている」というコメントが欲しかったのだろう、ある記者が「(雪は)やりなれているとは言えない状態ですか」など聞いていた。確かに雪には慣れているだろう。だが、雪の中でのサッカーの試合は別物だ。

 このブロックでは、2回戦でいきなり対戦する市立船橋と東福岡の強豪対決ばかりに話題が集中していたが、改めてトーナメント表を眺めると今大会で最も激戦区であることが分かる。青森山田が勝ち進むためには、2回戦で奈良育英、さらには市立船橋と東福岡の勝者。順当に行けば準々決勝では宮崎県代表の鵬翔が待ち受ける。どのチームも勝ち抜けるのは至難の業だ。「(2回戦で当たる)奈良育英には、何年か前に2回戦で当たって負けている。今日はインターハイのリベンジが出来たので、次は奈良育英にリベンジして、その先は市立船橋にリベンジして・・・」。そこまで言って黒田監督(青森山田)はにやりと笑った。その先に何があるのか。それは誰にでも分かっていることだった。



 例年、高校選手権の盛り上がりに一役買っているのが、首都圏分散開催と地元高校の振り分け。観客席から送られる声援だけでなく、グラウンド状態や気候その他の環境を把握している地元勢のアドバンテージは大きいはずだ。優勝した鹿児島実業の松沢隆司総監督も「(決勝までの道のりで)準決勝の国見戦が第二の山。第一の山は大会初戦の修徳戦でした」と言う。

 しかし、今年はその首都圏勢が振るわなかった。実践学園高校、修徳高校の東京勢は西が丘サッカー場、神奈川県代表の麻布大渕野辺高校は三ツ沢球技場と、ピッチから観客席が近い専用スタジアムで、それぞれ初戦敗退を喫してしまった。埼玉県代表の西武台高校も初戦こそ勝利を飾ったものの、2回戦で藤枝東高校の前に屈した。地元勢にとってひとつのノルマとも言える3回戦までを勝ち抜いたのは、ファイナリストにもなった千葉県代表の市立船橋高校のみ。出場回数の少ない高校にとって、ホームで戦うことが逆にプレッシャーにつながったのだろうか?

 前年4強に入った滝川第二高校もシード初戦の2回戦で姿を消したが、これは超高校級プレーヤー・本田圭佑を擁する星稜高校が相手。籤運にも恵まれなかったし、エースの岡崎慎司がケガで途中出場になったことも痛かった。また昨年準優勝の筑陽高校からシード権を譲り受けた格好の東福岡高校も、地元の強豪・市立船橋高校を引いてしまい、PK戦の結果、初戦で姿を消す。

 決勝戦終了後、市立船橋のディフェンシブ・ハーフ・中村勇紀は、一番強かった対戦相手として東福岡高校の名前を挙げた。「手ごわかったチームはやっぱり東福岡ですね。あのサイドの攻めは本当にいやらしいです。もう、攻撃パターンは決まっているし、分かっているけれどもやられてしまう。東福岡に勝てたのは本当に自信になりました」。滝川第二を降した星稜、東福岡を降した市立船橋は、強敵を破って波に乗った。

(続く)
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