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 Go for Athens 04/03/14(日) <前へ次へindexへ>
追う者、そして追われる者。トレーニングと言うより、サバイバルだ。
Go for Athens(2) 「20名」を巡る厳しい戦い


取材・文/西森彰

 アテネへアベック出場を狙うサッカー日本女子代表の応援特集企画。2回目の今回はアメリカ遠征直前にJヴィレッジで行なわれた合宿をレポートしよう。


 約20日間に渡る2月の長期合宿に参加した25名から絞られ、アメリカ遠征を含む今回の合宿に参加したのは別掲の22名となった。上田監督は「次の22名が最終メンバーになるわけではありません。今回の25名の中での出し入れはあります」と前回の合宿で報道陣に説明している。福元美穂(岡山湯郷Belle)、須藤安紀子(日テレ・ベレーザ)、鈴木智子(田崎ペルーレFC)の3名にも逆転選出の可能性は残っているが、今回の22名が最終登録される20名に最も近い位置にいることは間違いない。

 短いインターバルが置かれ、各々の所属クラブにいったん戻った選手たちだが、体を鈍らせて戻ってきた者はいない。「コンディションが良い? うーん、今の時期にしては良いコンディションかも知れません。ただし、1週間空けたことで、選手たちの間でバラつきがあります。それは怠けていた選手がいるということではなくて、クラブに帰ってからの練習で目一杯やりすぎた選手がいたことによるものです」(上田栄治・日本女子代表監督)。

 日テレ・ベレーザや田崎ペルーレFC等の強豪はもちろん、どのクラブでも新シーズンを向かえ、新しいポジション争いが始まっている。代表合宿から1週間開放されても、もうひとつの真剣勝負が待っているのだ。この競争も勝ち抜かなければ、1年間を棒に振ることにもなりかねない。「(きついトレーニングを)やらなければ強くならない。本当に難しいところですよね」と上田監督も理解を示しつつも、頭を悩ませる。

 クラブと異なったポジションを割り当てられる選手はさらに一苦労だ。田崎の山本絵美は昨年の女子ワールドカップ・プレーオフのメキシコ戦では左のアウトサイドを担当し、中村俊輔ばりの切り返しから鋭いクロスで先制ゴールを演出した。田崎ではトップ下に位置している彼女は「あの頃は代表合宿に行くたびに視野がまるっきり違って戸惑いました。最近は代表合宿も増えてきたので、そんなに気にならなくなってきましたが」と笑った。代表チームではポジションへの対応力も試されている。



要所では笛で止めて、上田監督の指導が入る。
吉田弘コーチも厳しくひとつひとつのプレーをチェック。
 チーム内のベクトルをひとつの方向に向けるのが指揮官の最大の仕事と言って良いだろう。この日の午前中はクロス攻撃とそれに対する守備がメインテーマ。ウォーミングアップ終了後に「昨年のワールドカップでは日本の7得点全て、そして6失点のうち半分の3失点がクロスからの攻撃によるものだ。非常に重要な部分だからきっちり取り組もう」と具体的に数字を挙げながら、選手たちに練習の狙いを認識させる。

 そして上田監督、吉田弘コーチが「グッド」「そこはこうだ」とひとつひとつのプレーを評価し、良いプレーと悪いプレーをはっきり分ける。マークに付く際のポジショニングや姿勢など、基本的な部分も自分で実際にプレーしてしっかりと教え、さらに焦点となるプレーについては笛で動きを止めて、全員で選択肢を確認する。本来のポジション以外でプレーする選手たちにとって、これが格好のナビになっている。

 この日、最後に行なわれた紅白戦でも競争の激しさは歴然としていた。先週の練習試合とはレギュラー組の顔ぶれが数人変わっている。そして15分間の前半戦が終わると、また数名が入れ替えられて後半戦が行なわれる。それぞれの交代に秘められた意味を、彼女たちも十分に理解している。「最低あと2名がふるいにかけられる。ここまで来て落とされたくない」。崖っぷちでの競争が、練習に緊張感を溢れさせている。

 練習が終わってからのクーリングの場でも「やり残して後悔したくない」という気持ちが痛いほどに伝わってくる。数名で連携を確かめたり、コーンを置いてドリブルをしたり、利き足でないほうでクロスを上げたり、局面ごとに動き方をコーチに尋ねたり…。「もういい加減に上がれ!」の声がかかっても、これを無視してトレーニングを続ける選手たち。上田監督も「彼女たちの意識は本当に高いですよ」と称える。

 見学させてもらっているこちらにもピリピリする緊張感が伝わってくる、良い練習だった。「これまでプレーしたことが無いポジションで最初は戸惑いましたけれど、もう違和感はありません。とにかく時間が無いので」。ビデオで各自が動きを確認して、それを意識して練習に取り組む。新しい役割を与えられた選手も明るい顔を見せ、チーム戦術の理解は進んでいるようだ。



 こうなってくると、彼女たちが感じているトレーニングの手ごたえを実戦で試す場が必要なのではないか。日本女子代表が昨年のワールドカップ以後、国際試合を全く行なっていない点も不安になってくる。そのあたりを上田監督に尋ねてみた。

「いえ、その点については全く不安視していません。というのは、女子チームの場合、男子チームと試合をすることでレベルアップを図れるからです。Jヴィレッジ合宿の際には、平工業高校、勿来工業高校(ともにいわき地区でベスト4レベル)がスパーリングパートナーを務めてくれています。今回も平工業と試合をする予定です。高校生クラスになると女子のトップチームよりもフィジカル等は上ですから。それに向こう(アメリカ)で2試合できますし」

 同じ相手と戦うことで「前回よりもどれだけやれたか」を物差しとして計れる利点は確かにある。アメリカ遠征では、3月17日(水)にサンフランシスコ・ナイトホークス、3月20日(土・祝)にカリフォルニア・ストームと2つのトレーニングマッチが組まれている。予選へ向けて女子チーム相手の勘を取り戻すこの2試合は、同時にメンバー選考の最終試験も兼ねている。



 ワールドカップで日本を破ったカナダが、プレーオフで日本に敗れたメキシコに苦杯を喫して、オリンピックへの出場を絶たれた。「そんな紙一重のレベルなんですよ。言い方は悪いかも知れませんが、カナダは世界4位で天狗になっていた部分があったはずです。それに対して日本に敗れたメキシコは、オリンピックに向けて強化を続けてきた。片方が上がり、片方が下がった。それが結果に出たんだと思います」(上田監督)。昨年のアジア女子選手権では4位に終わった日本。今度はこちらが借りを返す番だ。


<日本女子代表アメリカ遠征チーム>
監  督  上田 栄治  【(財)日本サッカー協会 ナショナルコーチングスタッフ】
コーチ  吉田 弘  【(財)日本サッカー協会 ナショナルコーチングスタッフ】
GKコーチ  川島 透  【(財)日本サッカー協会 ナショナルコーチングスタッフ】
GK 山郷 のぞみ  1975.01.16  164cm 60kg  さいたまレイナスFC
小野寺 志保  1973.11.18  163cm 52kg  日テレ・ベレーザ
DF 大部 由美  1975.02.15  167cm 62kg  YKKフラッパーズ
四方 菜穂  1979.11.05  165cm 56kg  日テレ・ベレーザ
磯崎 浩美  1975.12.22  163cm 52kg  田崎ペルーレFC
宮崎 有香  1983.10.13  164cm 58kg  伊賀FCくノ一
山岸 靖代  1979.11.28  163cm 62kg  伊賀FCくノ一
矢野 喬子  1984.06.03  164cm 55kg  神奈川大学
下小鶴 綾  1982.06.07  167cm 53kg  スペランツァFC高槻
MF 酒井 與惠  1978.05.27  158cm 48kg  日テレ・ベレーザ
小林 弥生  1981.09.18  156cm 50kg  日テレ・ベレーザ
近賀 ゆかり  1984.05.02  161cm 53kg  日テレ・ベレーザ
安藤 梢  1982.07.09  164cm 55kg  さいたまレイナスFC
川上 直子  1977.11.16  156cm 50kg  田崎ペルーレFC
山本 絵美  1982.03.09  158cm 53kg  田崎ペルーレFC
柳田 美幸  1981.04.11  158cm 54kg  田崎ペルーレFC
宮本 ともみ  1978.12.31  168cm 59kg  伊賀FCくノ一
FW 荒川 恵理子  1979.10.30  166cm 55kg  日テレ・ベレーザ
永里 優季  1987.07.15  167cm 60kg  日テレ・ベレーザ
丸山 桂里奈  1983.03.26  162cm 56kg  日本体育大学
大谷 未央  1979.05.05  160cm 49kg  田崎ペルーレFC
澤 穂希  1978.09.06  163cm 57kg  日テレ・ベレーザ

<AFC女子サッカーオリンピックアジア予選>
グループA  北朝鮮、シンガポール、チャイニーズ・タイペイ、香港
グループB  中国、ミャンマー、韓国、グアム
グループC  日本、ベトナム、タイ

<日本の試合日程(一部予定含む)>
4月18日(日) 12:00  日本VSベトナム  駒沢陸上競技場
4月22日(木) 19:00  日本VSタイ  国立霞ヶ丘競技場
4月24日(土) 19:00  グループAの1位VSグループCの1位  国立霞ヶ丘競技場
19:00  グループBの1位VS2位の最上位チーム  広島ビックアーチ
4月26日(月) 15:45  3位決定戦  広島ビックアーチ
18:30  決勝戦  広島ビックアーチ

※決勝戦に進んだ2カ国がアテネ五輪への出場権を獲得する。
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