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 Go for Athens 04/04/13(火) <前へ次へindexへ>
Go for Athens(9) ライバルたちの横顔


取材・文/西森彰

 さあ、アテネオリンピック出場を目指す日本女子代表の戦いが始まる。4月18日(日)〜4月26日(月)までの10日にも満たない短期決戦。それは我々を熱く、そして痺れさせる真剣勝負の9日間になる。今回は対戦相手の横顔を紹介しておこう。



 まず、4月18日(日)から4月22日(木)までの5日間、3グループに分かれた1stラウンドが開催される。北朝鮮が入ったグループA。中国と韓国が入ったグループB。日本の入ったグループCはベトナム、タイとの3チームで構成されている。4月18日(日)に初戦のベトナム戦(駒沢陸上競技場・12:15キックオフ)、そして22日(木)にタイ戦(国立霞ヶ丘陸上競技場・19:00キックオフ)を行なう。

 初戦となる18日のベトナムだが、これが実はうるさい相手だ。FIFA女子ランキングではグループ内最下位の42位だが、この数字を鵜呑みにすることはできない。現在公式戦7連勝中と勢いがある。日本とは過去に3回対戦しており、成績は日本の3勝。上田体制になって以後、日本とは1度しか対戦が無く、2年前のアジア大会での3対0というスコアが残っている。決して、一部で報道されているような軽い相手ではない。

「ベトナムは個人のテクニックは非常に高い。さらにレフェリーの見ていない所、ボールの無い所でゴチャゴチャやってきたりする。ケガは確かに怖いが『ケガをしたくない』と逃げ腰になった時の方がかえってケガをし易いもの。強い気持ちでプレーしなければ」(上田栄治・日本女子代表監督)。テクニックとマリーシアも備えている男子サッカーで言えば南米タイプのチームでイメージしておきたい。



 2戦目のタイは、昨年のアジア女子選手権の開催国で、FIFA女子ランキングではベトナムのひとつ上の41位。日本は過去4回の対戦でタイに1ゴールも許さず、28得点を記録している。最後に対戦したアジア女子選手権直前の親善試合でも、アウェーで9対0と退けている。「ベトナムとタイを比べると、やっぱりベトナムの方が上かな。タイは1枚落ちると思います」と上田監督。

 このタイ戦は、ベトナム戦から中3日、次の準決勝までは中1日の強行軍となる。指揮官は「第1戦と第2戦では大幅にメンバーを入れ替えるかもしれない」と指揮官はターンオーバーを匂わせ、「強行日程なので、その中である程度(ターンオーバーが)あると思います」と大部由美・日本女子代表主将(YKK東北女子サッカー部フラッパーズ)ら、選手たちも20名での総力戦を覚悟している。

 2カ国とも日本に比べると格下のチームだが、万が一にも取りこぼしは許されない。「どちらにしてもグループリーグで勝てないようではお話になりませんから。そこで負けるようでアテネだなんて言ってられない。準決勝に向けて勢いをつけるような戦い方をしたい」と上田監督は言う。怖いのはケガ、そして累積での出場停止。それらを回避した上で、なお加速するようなゲーム運びで大一番につなげたい。



 アテネのチケットが懸かる準決勝は4月24日(土)、国立霞ヶ丘陸上競技場で行なわれる(もちろん日本がグループ1位抜けをしていれば、だ)。仮想敵チーム・北朝鮮はFIFA女子ランキングでは7位だが、実力的には既に同ランキング5位の中国を抜き去った感もある。年明けのオーストラリアカップでも中国と対戦し3対0と完勝した。同大会では、FIFA女子ランキング21位のニュージーランドとも対戦し、これを11対0で一蹴。このアジア最強チームが、準決勝の相手と想定されているのだ。

 U-19アジア女子選手権では、日本が準決勝で中国を破ると、逆のブロックではチャイニーズ・タイペイが北朝鮮を破って上がってきた(結局、日本が優勝)。それを踏まえて「相手がチャイニーズ・タイペイになっていた、なんてことはありませんかね?」と上田監督にふったが「いや、やっぱり北朝鮮がきっちり上がってくると思います」と余計な希望は持っていない。

 いろんなところで書かれているように、これまで日本は北朝鮮に7連敗中。山本絵美がアジア女子選手権の時を振り返った。「北朝鮮が日本のサッカーを良く研究してきていましたね。ポイント、ポイントをきちんと抑えられて、こっちの良い所が消されてしまいました」。北朝鮮のスカウティング能力は非常に高いものがあるらしい。逆に日本にとって北朝鮮は「見えざる敵」だ。上田監督も「オーストラリア遠征の後は平壌で合宿を張っているらしいんですけれど」とその動向は掴めていない。



 日本にもアドバンテージはある。誰が考えてもすぐに思いつくのがホームの利だ。あのメキシコとのプレーオフの1万2千人を遥かに超える大観衆が、アテネを目指す大和撫子たちの後押しをするはずだ。そして1stラウンドの試合数は、日本がベトナム、タイとの2試合、北朝鮮はチャイニーズ・タイペイ、香港、シンガポールとの3試合をこなさなければいけない。さらに日本は2日前に国立霞ヶ丘陸上競技場でゲームを行なって、そのピッチ状態も把握することができる。

 最も大きなカギは、最終戦のキックオフ時刻だ。グループリーグ同一時刻キックオフという大原則を破って、北朝鮮(対シンガポール)と中国(対韓国)の他グループ同士が18:30の同時キックオフ。これはグループ内で力が抜けている北朝鮮、そして中国と韓国の間でワイルドカード狙いの勝ち点調整をできないようにするためのものである。表向きの理由はそうなっている。

 だが、北朝鮮のグループリーグは広島で行なわれるのだ。ゲーム終了予定時刻は20時30分前後。その日のうちに東京入りするのは不可能だ。準決勝までは中1日の日程で、北朝鮮はゲーム翌日に東京までの移動を強いられる。決戦を前にしての長距離移動がどれほどの不利になるか。過去2年の高校サッカー選手権決勝戦を思い出せば、想像に難くないだろう。



 当然、指揮官の脳裏にも対戦相手ごとにいくつかのシナリオが描かれているはずだ。しかし、まずは自分たちのできることをやっておく。この静岡での直前合宿では1、2日目とも午前、午後の両方でハードなトレーニングをこなしている。前回の福島合宿で上田監督が「(男子高校生チームとの試合は)もう、静岡では考えていません。紅白戦が中心になります」と語っていたとおり、11日(日)の午後には30分を3本行なっている。

 福島合宿以上の声で上田監督が叱咤激励し、ギリギリまで追い込んでいく。12日(月)も午前練習は無かったが、前日の紅白戦で出た課題をチェックし、早めにフィードバックするために、ハードなフォーメーション練習をこなした。「午前、午後練習を2日連続でこなし、昨日は久しぶりに90分間の紅白戦。選手たちも3日目でかなり疲れていると思います」と語る上田監督。だが、ここで手綱を緩めるわけにはいかないのだ。

 14日(水)には最終テストとして、北朝鮮とともにアジアの2強を形成する中国との親善試合をこなす。敢えて本番直前に強敵との対戦を選択したのは、1stラウンドからガラリと敵のレベルが変わる、切り替えが非常に難しいアジア予選を考えてのこと。グループリーグを「中国戦も含めた3試合」と仮想することで、選手たちをモチベートしていくはずだ。

「おっしゃる通り、確かにメリット、デメリット、両方の要素があります。そしてメリットの方が大きいと考えて、中国戦を決めました。ここでどんなゲームができるのか、それがひとつの大きな山だと思っています」(上田監督)

 決戦に向けての準備は最終段階に入った。
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