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 第81回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
C大阪の猛攻及ばす。清水が3度目の決勝で、天皇杯初制覇!!
第81回天皇杯全日本サッカー選手権大会 決勝 清水エスパルスvs.セレッソ大阪

2002年1月1日(元旦)13:31キックオフ 国立霞ヶ丘競技場 観衆:46,728人 天候:晴
試合結果/清水エスパルス3V−2セレッソ大阪(前1−0、後1−2、延前1−0)
得点経過/[清水]三都主(20分)、森岡(68分)、[C大阪]森島(78分)、尹晶煥(89分)、[清水]バロン(97分)


取材・文/中倉一志

 澄み切った青い空。ふり注ぐ明るい日差し。2002年元旦、国立競技場に日本の頂点を極める戦いの日がやって来た。その晴れ舞台に駒を進めてきたのは清水エスパルスとセレッソ大阪。サッカープレーヤーの憧れである「元旦の国立」に全てをかけて日本一の称号を目指す。3度目の決勝進出で初の栄冠を狙う清水。来年度はJ2で戦うことが決まっていながら高いモチベーションで勝ち進んできたC大阪。その強い意志はともに譲らない。

 そんな両チームのサポーターも選手たちを熱く後押しする。国立競技場の周りに長蛇の列を作った清水サポーターは、開場とともに清水側ゴール裏をオレンジ一色に染め、18台のツアーバスを走らせてやって来たC大阪サポーターは、ピンクのメガホンで熱い思いを伝える。そんな声援を背に受けて、22人の選手たちがピッチの上に散っていく。そして13:31、46,728人の大観衆に見守られる中、試合開始のホイッスルが高らかに響き渡った。



 最初に主導権を握ったのはC大阪。開始直後の1分にいきなりチャンスを掴むと、その後も激しく清水を攻め立てる。高い位置からプレスをかけて中盤を支配し、1トップ気味の大柴を中心に、森島、尹晶煥がスペースへ飛び出してゴールを狙う。そして6分にはゴール前の混戦から、続く10分にも左サイドから崩して決定的なチャンスを演出。さらに14分にもセットプレーから決定的と思えるシーンを作り出した。しかし、この3度のチャンスを森島が決めることが出来なかった。

 対する清水は、このC大阪の猛攻を凌ぐと、ジワジワと押し戻し始めた。そして20分、澤登がヘッドでゴール前に落としたボールが三都主へ渡ると、三都主が4人に囲まれながらも個人技でかわして芸術的なチョップショット。これで先制点をゲットすると一方的に試合を支配し始めた。尹晶煥を徹底マークしてC大阪の起点を潰し、激しいプレスで中盤を制圧。攻めては、澤登が右サイドのスペースに飛び出してC大阪のDFを切り裂いた。

 また、注目の三都主はボールタッチが少なく、得意のサイドからのドリブル突破は殆ど見られないものの、鋭いクロスボールを何度も逆サイドに供給。C大阪DF陣を混乱に陥れた。一方のC大阪はDFラインを4バックにして守備の建て直しを図るが、度重なる決定的なピンチを何とか凌ぐのが精一杯。とても攻撃に移れる余裕などはなかった。試合の流れは完全に清水が掌握。C大阪は15分以降、なす術もなく時間を費やすだけだった。



 流れを変えたいC大阪は59分、杉本と大柴に代えて岡山と大久保を投入。この2人を2トップに置いて森島を2列目に下げた。そして59分、61分には決定機を演出。流れを引き戻したかのようにも思えた。しかし68分、清水は澤登のFKに森岡が頭で合わせて2点目を奪う。C大阪の先制攻撃をかわして先取点を奪い、相手が前がかりになったところでセットプレーで突き放す。まるで模範解答のような清水の戦い振りに、この時点で誰もが清水の勝利を確信したに違いない。

 しかし、C大阪はあきらめない。70分にはボランチの濱田に代えて真中を投入して、更に攻撃的な布陣を敷いて2点を追いかける姿勢を見せたのだ。凶と出れば更に失点を重ねかねない采配。だが「リスク覚悟でやる場合は紅白戦でも準備していた。いつどこで決断するかだけだった」(西村監督・C大阪)というC大阪にとっては当然の采配だったのだろう。そして、この一連の西村采配が、試合そのものを大きく変えることになる。

 清水に疲れもあったのだろう。2点を確実に守ろうという気持ちが芽生えたのかもしれない。しかし、それ以上にゴールを目指すC大阪の強い姿勢が際立っていた。ゴール前の制空権を制した岡山。切れのあるドリブルで前線を切り裂く大久保。そして2列目から森島、真中がDFラインの裏側に飛び出し、更には尹晶煥までもが前に出てくる。清水はこの猛攻の前に守備が崩壊。ただ前へ向かってボールを蹴るだけで、絶えることのないC大阪の連続攻撃にその身をさらされた。



 そして89分、原のクロスを岡山が落とすと、そこにはフリーの森島がいた。躊躇なく右足を振り抜いてまずは1点をゲット。さらに終了直後の89分には尹晶煥の強烈にミドルシュートをGKが弾いたところへ大久保が飛び込む。たまらず足を払うGK黒河。もちろん判定はPKだ。これを尹晶煥が確実に決めて、とうとう試合は振り出しに戻った。今シーズン、終了間際に失点を繰り返してきたC大阪が、最後の試合で見せた凄まじいばかりの勝利への執念だった。

 優勝の行方は延長戦へ。そして今度はゼムノヴィッチ監督がその手腕を見せる。戸田を守備に専念させ、崩れていたダブルボランチの吉田とのバランスを修正。そして大榎を最終ラインの後ろへ余らせたのだ。これで完全崩壊していた清水の守備が安定。試合は再び落ち着きを取り戻し、ピリピリした緊張感がピッチを包み込む。ともに高い集中力で攻め、そして守る。全くの互角のまま試合は進んでいた。

 そして97分、とうとう決着がついた。清水の左サイド、ハーフウェイライン付近でのボールの奪い合いで森島がバランスを崩した瞬間、三都主がボールを奪って、そのままサイドを疾走。そして絶妙なクロスボールをファーサイドに送った。そこに現れたのはバロン。シュートは一度はGKに弾き返されたが、そのリバウンドを再び押し込んで決着をつけた。歓喜に沸くスタジアム。清水が3度目の挑戦で日本サッカー界の頂点に立った。



 ともに持てる力の全てを発揮し、観客の目を釘付けにした清水とC大阪の戦いは、81回を数える天皇杯の歴史に残る好勝負のひとつ数えられることは間違いない。序盤戦からJ1のチームの多くが敗れ、そして上位チームもモチベーションを上げられずに次から次へと敗れた今年の天皇杯にあって、高いモチベーションを保ち、全てをぶつけ合った両チームは、元旦の国立競技場を飾るにふさわしいチームだった。優勝を遂げた清水はもちろんのこと、敗れたC大阪にも大きな賞賛を送りたい。


(清水エスパルス) (セレッソ大阪)
GK: 黒河貴矢 GK: 下川誠吾
DF: 森岡隆三、大榎克己、古賀琢磨 DF: 斎藤大輔、鈴木悟、室井市衛
MF: 平松康平、吉田康幸、戸田和幸、三都主アレサンドロ、澤登正朗 MF: 原信生、田坂和昭、濱田武(70分/真中靖夫)、杉本倫治(59分/大久保嘉人)、尹晶煥
FW: 久保山由清(64分/横山貴之)、バロン FW: 森島寛晃、大柴健二(59分/岡山一成)
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