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 第82回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
鹿島に死角なし。憎らしいまでの強さを発揮して市原を下す。
第82回天皇杯全日本サッカー選手権大会 準決勝 ジェフユナイテッド市原vs.鹿島アントラーズ

2002年12月28日(土)15:05キックオフ 長居スタジアム 観衆:10,928人 天候:晴
試合結果/ジェフユナイテッド市原0−2鹿島アントラーズ(前0−1、後0−1)
得点経過/[鹿島]エウレル(30分、89分)


取材・文/中倉一志

「強い」。今の鹿島を表現するにはこの一言で足りる。ゲームのコントロールの仕方、トーナメント戦の戦い方、そして勝負のポイントの抑え方。どれをとっても、おそらく今の鹿島の右に出るチームはいないだろう。派手なプレーをするわけでもない。相手を圧倒して攻めまくるわけでもない。一見、淡々とゲームをしているかのようにも思える。しかし、つぼを抑えた攻守のバランスの良さは、決してリスクを招かず、そして勝負どころでは確実にゴールを挙げてしまう。

 対戦相手は互角に戦っているようで、実は鹿島の計算どおりの展開に引きずり込まれていく。その憎らしいまでのしたたかさこそが鹿島の強さの秘密だ。そしてこの日の準決勝でも鹿島は真骨頂を発揮。準決勝で磐田を破り波に乗る市原を寄せ付けずに決勝進出を決めた。決して市原を圧倒したという印象を与えたわけではない。むしろ立ち上がりは互角に戦っていたような印象さえある。しかし、いつのまにか市原は攻め手を失い、当たり前のように2得点を奪われた。振り返ってみれば、市原にはただの一度も勝機はなかった。



 市原は崔龍洙を1トップに置く3−6−1。最前線の崔龍洙を起点にしてサイドへ展開、そこからのクロスに2列目から大柴と羽生が飛び出すのが狙いのようだ。そして左サイドでは、増田がスピードと個人技を生かして縦への突破を図る。守っては、バランスよく配置した守備網が高い集中力を発揮、鹿島にチャンスの糸口を与えない。市原の立ち上がりは上々だった。そして、増田のサイドアタックから何度か攻めの形を作り出した。

 しかし、それも立ち上がりの10分間ほどのことだった。丁寧にパスを回してゲームをコントロールする鹿島が時間の経過と共に、まるで真綿で首をしめるかのように市原から攻め手を奪っていく。再三、左サイドで起点になっていた増田は、名良橋のケアの前にサイド突破を封じられ、中盤では主導権を鹿島に握られて頼みの綱となる崔龍洙にボールを入れることがままならない。鹿島が無理をして攻めに出ないため均衡が保たれていたが、市原にチャンスが生まれる気配はなかった。

 そして30分、まるで当然といったようにあっさりと鹿島が先制点を挙げる。左サイドへ上がってきた中田がクロスボールを送ると小笠原が頭で落とす。そのボールを拾ったエウレルが素早くペナルティエリア内にドリブルで入り込み右足でゴールへ流し込んだ。ここから先は完全に鹿島が試合をコントロール。それほど無理をせず、しかし、確実にチャンスを作り出してゴールを襲う。市原は42分に決定機を作ったが、これはGK曽ケ端のファインセーブに阻まれてゴールならず。前半は鹿島の1点のリードで終了した。



 市原は後半開始から阿部に代えて林を投入、大柴をやや下げた3トップ気味の布陣で反撃を狙う。しかし、鹿島はびくともしない。前半同様、高い位置でしっかりとボールを回して市原にチャンスの芽すら与えない。前半同様、無理をせずに相手の守備網にほころびが生まれるのを待ち、そこを確実についてチャンスを広げていく。そして、58分、69分には決定機を演出。このチャンスは柳沢が決めきれずにリードを広げることは出来なかったが、もはや市原は鹿島の術中にはまっていた。

 そんな鹿島がわずかばかりの隙を見せたのが、77分に柳沢を池内と交代させた後だった。池内をCBに入れた鹿島は、それに伴ってファビアーノをボランチに、中田を左サイドのOHに上げて、アウグストとエウレルの2トップに変更した。この采配でややバランスを崩した鹿島は、広島の前にアップアップする時間帯が生まれた。それを象徴するかのように、ピッチの上では選手同士が激しく言い争いを始めた。しかし、それもつかの間、僅か数分後には、再びバランスを取り戻し広島に攻め手を与えない。瞬時に修正してしまうのも今の鹿島の強さなのだろう。

 そして89分、広島が攻めあがってきたところで鹿島がカウンターアタックを開始。中田からのパスを受けたアウグストがドリブルでゴール前へ、必死に守りに入る市原DFとGKを引き付けるだけ引き付けておいて、右を並走してきたエウレルにラストパス。ドフリーになったエウレルは無人のゴールにただ流し込むだけでよかった。



 怪我人や出場停止の選手を抱えたため万全の体制で臨むことが出来なかった市原。100%の状態で臨めなかったことは試合の結果に影響を与えたのは確かだが、それよりも鹿島が強すぎた。特に1点を奪ってからの鹿島のゲームコントロール振りは見事の一言。それほど激しく攻め立てたわけではないのだが、後半は市原のシュートを0に押さえ込んだ。何をすれば勝てるのか、それを知り尽くしたチームが、確実にそれを実行に移す。そんな鹿島を倒すのは簡単なことではない。

 そして、鹿島の強さのもうひとつの要因が天皇杯にかけるモチベーションの高さだ。多くのJリーグのチームが、この時期の大会の難しさを口実にリーグ戦と同様のパフォーマンスを発揮しないままに消えていく現状にあって、鹿島はリーグ戦と同じように高いモチベーションで試合に臨んでいる。「本当にこの大会を大切に思っている」とトニーニョ・セレーゾ監督は語ったが、どんな試合にも全力を尽くすという鹿島の姿勢こそが強さの要因になっていることは間違いない。


ベングロシュ監督(ジェフ市原)記者会見
トニーニョ・セレーゾ監督(鹿島アントラーズ)記者会見
エウレル選手(鹿島アントラーズ)インタビュー
(ジェフユナイテッド市原) (鹿島アントラーズ)
GK: 櫛野亮 GK: 曽ケ端準
DF: 斎藤大輔 ミリノビッチ 吉田恵 DF: 名良橋晃 秋田豊 ファビアーノ アウグスト
MF: 坂本将貴 阿部勇樹(HT/林丈統) 佐藤勇人 増田忠俊(76分/長谷部茂利) 羽生直剛(69分/中西永輔) MF: 本田泰人 中田浩二 小笠原満男 本山雅志(26分/石川竜也)
FW: 大柴克友 崔龍洙 FW: 柳沢敦(77分/池内友彦) エウレル
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