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 第83回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
群馬会場は2年連続のアップセット、市立船橋がザスパ草津を下す
第83回天皇杯全日本サッカー選手権大会 1回戦 ザスパ草津vs市立船橋高校

2003年11月30日(日) 13:04キックオフ 群馬県立敷島公園サッカーラグビー場 観衆:6.136人 天候:曇
試合結果/ザスパ草津0−1市立船橋高校(前0−0、後0−1)
試合経過/[市船]増嶋(62分)


取材・文/砂畑 恵

 昨年の天皇杯では、関東社会人リーグ所属・群馬FCホリコシとJ2モンテディオ山形の1回戦が行なわれ、アップセットが起きたここ敷島公園サッカーラグビー場。今年はJFL入りを果したザスパ草津(以下、ザスパ)と2種シードの市立船橋高校(以下、市船)が顔を合わせた。初出場ながら、ほとんどの選手がJに所属した選手で占めるザスパに、全日本ユースで優勝を飾ってシード出場した市船とが対戦する注目カード。厚い雲が垂れ込める空の下、スタジアムは両チームのサッカーへの期待感で包まれていた。



 開始直後は、お互いが探り合いを重ねる中、ボールに落ち着きがなかったが、徐々に実力に勝るザスパがゲームの流れを掴む。16分、奈良のシュートがGK佐藤を強襲。19分には山崎の突破からゴール前のフラビオにボールが渡るが、シュートはDFのカバーに入った猪股をかすめてバーの上に。そのCKでは奥野が頭で合わせるも、わずかに枠の外へ切れた。26分にも相手のFKから一転、素早くカウンターを仕掛ける。サントスは左タッチラインを猛然と駆け上る寺田に展開。その寺田は相手の守備陣形が整う前に柔らかなクロスボールを上げた。フリーで構えた奈良は、ペナルティーエリアにわずかに入った位置から遠いサイドにヘディングシュート。GK佐藤が反り返るように手を伸ばしCKに逃れた。

 一枚上手のザスパを相手に、思うように攻撃を仕掛けられない市船だが、その守備力たるや目を見張る。4人のDFは統率が取れ、相手とのマッチアップでは簡単には譲らない。特に冷静新着な増嶋と、カバー能力に優れた渡辺のCBの連携は見事で、ゴール前を固く閉ざす。CBが外に引き出されても、2列目の選手がバックラインへ下りてその穴をシステマティックに埋めていた。またザスパの攻撃シーンで何度か登場するGK佐藤だが、29分にスルーパスに抜け出た奈良との1対1では果敢に飛び出すなど、ナイスセーブを連発する。

 ただ攻撃面は苦戦の模様だ。序盤こそカレンロバートや田中がドリブルで相手ゴールに迫ったが、そのうち2人、3人と詰めに掛かられた。味方の攻撃の切り替えも遅くなりがちで、なかなかチャンスが巡ってこない。それでもセットプレーでよい場面を作った。19分のCKでは大外にいた増嶋、石井と頭で繋いでゴールに迫る。それはサントスにクリアーされるが、そのボールを拾った田中が押さえの効いたシュートを放ち、ザスパを冷やりとさせた。



 後半に入っても趨勢は変わらず、ザスパペースで試合は進む。48分、サントスの戻しを籾谷がロングシュートで狙うも左に逸れた。54分には、小田島のスルーパスを受けた山崎がドリブルで持ち込んでシュート。GK佐藤はボールを零したが、詰めて来たフラビオの足元でボールを抱え込んだ。だが攻め疲れか、55分を過ぎると攻撃はペースダウンする。

 その機に乗じて、湿りがちになっていた市船の攻撃に繋がりが生まれた。57分、カレンロバート、田中、そして再びカレンロバートと繋ぎ、ゴール前に走り込んだ猪股にパスを送る。ここは千葉がきっちりカット。58分には根本のパスを受けた田中がドリブルでキープし、楔のボールを猪股にいれるが、またもザスパに阻まれる。それでも攻撃の形は少しずつだが出来つつあった。そして60分、カレンロバートがDF3人に囲まれながらようやくCKをもぎ取った。1本目、鈴木は高めのボールで味方に合わせようとしたが、その頭上でGK小島が後ろ手に掻き出した。続く2本目、鈴木はそれまでのCKとは違う変化を付けた。



 後のインタビューで石渡監督はこう話していた。「相手GKはハイボール強い。低いボールで点で合せよう」。石渡監督はザスパ戦の勝機はカウンターで攻めるか、セットプレーしかないと踏んで、試合前の1週間の内、3日間をセットプレーに費やしたと明かした。その狙い通り、鈴木はニアに低いボールを入れ、それを増嶋が足で合せてネットを揺らしたのだ。62分の先制点はまさに石渡監督の指示を実践して見せたのだ。

 格下相手が先制点。一瞬ではあったが、ザスパの守備はうろたえ安定感を失う。63分、根本のパスをカレンロバートがスルー。田中がDFを背負いボールを落とす。抜け出たカレンロバートをザスパDFは掴まえられない。GK小島との一騎討ちだ。前に出てくるGK小島の手先で、カレンロバートはちょこんと合せたが、小島は足に当て、元代表の意地を見せる。

 これ以降、ザスパは落ち着きを取り戻し、市船に猛攻を繰り返した。64分、奈良のロングパスから山崎に繋げ、再びゴール前に走り込んだ奈良へとセンタリリ塔Oが渡るが、奈良のヘディングシュートはゴール右に外れる。72分には、堺がゴールネットを揺らし会場が沸くも、その前の競り合いの中でファールがありノーゴール。75分を過ぎると、パワープレーに変更。79分には寺田からの長いパスを受けた浦本が、市船DFを引き倒しながらシュートを放つが、またもポストの左側を通過。86分にもゴール前へのハイボールを、小田島はヘディングシュートしたが、ここでもGK佐藤がナイスセーブする。そしてロスタイム、ゴール正面のFKも物に出来ず、最後まで市船ゴールを破ることが叶わなかった。



 記者会見の席で植木総監督は「ファンの方に申し訳ない」と述べた。ただ実情は天皇杯の直前に、JFL参入戦など7試合をこなすハードスケジュールで、チームとしては調整するので手一杯だったようだ。その事情はともかく、前半決めるべきところで決められなかったことが敗因だと振り返る。またフラビオと周囲とのコミュニケーション不足、選手同士が鼓舞仕切れなかったことなど、今後の反省材料であると思うと述べた。

 勝った石渡監督は、この一戦を高校選手権に繋がるゲームにする為にも、格上を相手にして、常日頃の守備意識を忘れずに闘えるかが課題だったと話す。勝った喜び以上に、選手達が相手の早いリスタートにも気を抜かずに、90分間を集中したことが1番の収穫であったようだ。ただ、すべてに満足ではなく、クリアーなのか、パスなのかという点、ゲームを切るべきところで切るなど守備の判断力を修正するという反省も忘れていなかった。

 「サッカーは押しまくっても負けることがある(植木総監督)」。「サッカーは力通りではない(石渡監督)」。まさにその言葉が如実に表れた試合だった。


(ザスパ草津) (市立船橋高校)
GK: 小島伸幸 GK: 佐藤優也
DF: 籾谷真弘 小田島隆幸 奥野僚右(46分/柴暢彦) DF: 石井秀典 寺田雅俊 増嶋竜也 渡辺広大
MF: 鳥居塚伸人 サントス 寺田武史 山崎渡(74分/浦本雅志) 立石飛鳥 MF: 鈴木修人 根本茂洋 猪股英明(84分/米田拓巨)
FW: 奈良安剛(65分/堺陽二) フラビオ FW: 高橋昌大(89分/薬袋克己) カレンロバート 田中恒太(79分/壽透)
SUB: 高木孝弘 後藤大輔 SUB: 羽田晃 中村勇紀
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