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 第83回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
マルヤス工業、健闘もプロの壁は厚く。アビスパ3回戦へ進出。
第83回天皇杯全日本サッカー選手権大会 2回戦 アビスパ福岡vs.マルヤス工業

2003年12月7日(日)12:59キックオフ 東平尾公園博多の森球技場 観衆:2,388人 天候:晴
試合結果/アビスパ福岡3−0マルヤス工業(前0−0、後3−0)
得点経過/[福岡]林祐征(61分)、増川隆洋(69分)、ベンチーニョ(76分)


取材・文/中倉一志

 Jリーグの試合とは一味違ったゆったりとした空気が流れる東平尾公園博多の森球技場。この日、天皇杯の2回戦が行われた。ピッチに登場するのはアビスパ福岡と、愛知県代表のマルヤス工業。アビスパ福岡にとっては今年最後のホームでの公式戦になる。まだ2回戦だからなのか、相手がアマチュアチームだからなのか、観客は2,388人とさびしいが、それでも熱心なサポーターたちは、いつもと変わらぬ熱い声援を選手たちに送る。

 対するマルヤス工業は創部35年目にして初めて天皇杯の舞台に立つ。1回戦では岡山県代表の吉備国際大学を1−0で破って博多の森にやってきた。バックスタンド・アウェイ側に目をやると真っ赤に染まるブロックがある。サッカー部の関係者や、家族、従業員の方たちだろう。おそろいのジャンパーを着て、晴れの舞台で戦う部員たちに声援を送っている。初めての全国の舞台で、初めてのプロとの対戦。「ひと泡吹かせてやろう」。そんな気持ちが伝わってくる。



 12時59分にキックオフされた試合のファーストシュートはマルヤス工業。MF登録の松下のシュートがポストの右へ飛んでいく。しかし、福岡は格の違いを見せる。3分、ベンチーニョがペナルティエリア内でGKと1対1に。5分にはゴール前に飛び込んできた古賀か川島からのクロスにドフリーで頭を合わせる、そして11分には、ベンチーニョの直接FKが右ポストを襲う。3本の決定的なシュートはGKに弾かれ、あるいはゴールマウスをわずかに越えていったが、福岡は立ち上がりから全開でマルヤス工業に襲い掛かる。

 しかし、マルヤス工業は福岡以上のがんばりを見せた。ベンチーニョとの1対1をあふれる気迫で防いだGK木村に代表されるように、とにかく必死になってボールを追いまわした。基本フォーメーションは4−4−2。中盤の4人がほぼ横一線に並び、最終ラインが2つあるような陣形を取る。低く構えて待ち、福岡が入ってくるとMFとSBで挟込み、そこへボランチが加わってボールを囲む。ベンチーニョからは決して離れず自由を奪った。

 その激しいプレスに福岡も戸惑いの色を隠せない。試合を支配しながらも、中途半端に攻めあがっては囲みこまれ、つながるはずのパスにミスが出る。クロスボールの精度も極端に悪い。初先発の加藤と、CBとしてはこちらも初先発の増川のコンビは、裏に向かって放り込まれるボールの処理に不安定さを見せる。シュートはどれもミドルレンジからのものだ。43分に林が裏へ抜け出して1対1になったシーンはGKのファインセーブに阻まれ、ロスタイムのベンチーニョのシュートもポストの左へ。前半は0−0のまま終了した。



「1−0でもいいから勝つことが大事。まず自分たちでいらだたないこと」(松田監督・福岡)。後半、福岡は気を引き締めなおして攻撃を組み立てる。48分、49分、50分、そして56分と決定的なチャンスを作り出した。しかし、マルヤス工業の闘志も衰えない。最後の最後で足を投げ出し、身体を張ってゴールを守り、前半と変わらぬ運動量で激しいプレスを見せる。プロの意地とアマチュアのチャレンジ精神が真正面からぶつかり合う展開が続く。

 61分、ベンチーニョが決定的なシュート放つ。しかし、シュートコースに飛び込んだMF西森が身体に当ててCKに逃げた。度重なる決定機を決めきれない福岡にサポーターからため息が漏れる。しかし、さすがのマルヤス工業も、福岡の攻撃の前に限界点に達しようとしていた。そして、このシュートを防いだあと、緊張の糸がわずかに緩む。次の瞬間、右からのCKに林が頭を合わせる。遂にマルヤス工業のゴールネットが揺れた。

 事実上の勝敗を決めるゴールだった。この先制点でリズムを掴んだ福岡は、続く69分にベンチーニョのFKに増川が合わせて2点目。そして、ここからは福岡の独壇場。76分、前線で粘ってボールをキープした太田から左サイドを駆け上がってきた古賀へ。古賀はファーサイドへクロスボールを送る。そこで待っていたのはベンチーニョ。古賀からのボールにダイレクトで右足を振り抜いて駄目押しゴールとなる3点目を挙げた。



 終わってみれば3−0。マルヤス工業が放ったシュートは前半の2本だけ。しかし、数字以上にマルヤス工業の健闘が光った。最後まで福岡を苦しめた中盤のプレスは見事の一言。それを可能にしたのは、適度な高さを保つ最終ラインと、全員が連動して動くコンビネーションの良さ、そして、呆れるほどの運動量を披露した両ボランチの活躍だった。「選手たちも楽しかったと思いますよ。本当に良くやってくれました。完全燃焼、いい思い出になりました」。塩崎監督は満足気に博多の森を後にした。

「最後のところは相手も身体を張っていて一番難しいところ。続けていけば必ずものに出来る。まず自分たちで苛立たないというところが一番のポイントだった」とは松田監督。高いモチベーションを持つ相手に、最後まで自分たちを見失わなかったのも戦い方に自信がある証拠だ。3回戦の相手は鹿島アントラーズ。「1年やってきたことを試す場としては、またとない機会。非常に楽しみにしているし、大事に闘っていきたい」(松田監督)。福岡はビッグキリングを目指してカシマサッカースタジアムに乗り込む。


(アビスパ福岡) (マルヤス工業)
GK: 水谷雄一 GK: 木村俊夫
DF: 川島眞也 増川隆洋 加藤寿一 アレックス(75分/平島崇) DF: 真弓勇 津野光晴 上原諭 長谷川淳
MF: 宮崎光平 米田兼一郎(22分/原田武男) 篠田善之 古賀誠史 MF: 西森磨彦 坂脇一義 松下隆 池ヶ谷和弥 岩見昌也
FW: ベンチーニョ 林祐征(70分/太田恵介) FW: 栗田宗義
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