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 第83回天皇杯全日本サッカー選手権大会 <前へ次へindexへ>
磐田、天皇杯に照準。6年ぶりの準決勝へ
第83回天皇杯全日本サッカー選手権大会 準々決勝 東京ヴェルディ1969vs.ジュビロ磐田

2003年12月23日(火・祝)15:04キックオフ 岡山県陸上競技場桃太郎スタジアム 観衆: 天候:
試合結果/東京ヴェルディ1969 0−3 ジュビロ磐田(前0−1、後0−2)
得点経過/[磐田]名波(40分)、グラウ(71分、89分)


取材・文/中倉一志

 開始直後の1分、山西の強烈なFKがゴールマウスの右を襲う。続く2分、今度は左サイドを突破した西からのクロスにニアに飛び込んだ前田がヘッドで合わせる。2本のシュートはわずかにゴールマウスを外れたが、東京Vを冷やりとさせるには十分だった。しかし、東京Vも負けてはいない。3分、リズミカルなパスをつないで得たCKのチャンスに米山が合わせると、ゴール前の密集から飛び出したボールが右ポストを直撃した。キックオフ直後にお互いに訪れた決定機。それは両チームのこの試合にかける強い気持ちの表れだった。



 鹿島と並んでJリーグの2強と呼ばれる磐田。しかし、天皇杯には不思議と縁がない。最高位は第77回大会のベスト4。以後、激しいリーグ戦いの疲れを癒せないまま大会に臨んでは敗れることを繰り返してきた。しかし、今シーズンはここまで無冠。王者としては、このままではシーズンを終われない。「昨シーズンは完全制覇してチャンピオン。今シーズンはタイトルを取っていないということが、選手たちのモチベーションを上げている」(柳下監督・磐田)。磐田は万全の体制で天皇杯を取りに来た。

 かつてはJリーグを牽引する存在だった東京V。しかし、第76回大会で優勝を飾ってからは中位から下位を行ったり来たり。タイトルとは無縁のチームになった。しかし、今シーズン途中からアルディレス監督を招聘、チームは変身を遂げた。「我々のスタイルというのはパスをつなぐサッカー」(アルディレス監督)。軽快なリズムでボールを運ぶサッカーはチームに力を与えた。7年ぶりのタイトル獲得で復活を果たしたい気持ちは強い。



 前半、先にペースを握ったのは東京V。「前半30分くらいまでは相手の速いボール回しと人の動きに後手を踏んで悩まされた」(名波)。そのリズミカルなパスサッカーで磐田を翻弄する。トップに張るエムボマの周りを精力的に動いてはボールを引き出す桜井。山田、平野、小林の3人が巧みに入れ替わりながらボールをつなぎ、中盤の底に陣取る林が危険な芽を確実に摘み取って行く。1対1のシーンで負けることもなく、磐田相手に中盤の主導権を手中に収めた。

 決定機は12分、小林、山田とつないでエムボマにラストパス。強烈なシュートがポストの右へ飛ぶ。続く18分、平野からのパスを受けたエムボマがゴールへ向かって突進。両脇を東京VのDFにはさまれながらも強引に中央を突破した。しかし、この2つの決定機をはじめ、東京Vは何度もいい形を作るもののペナルティエリアの中へ入り込めない時間が続く。怪我人を多く抱え、決して100%とはいえない状態の東京V。その影響が微妙に響いているようだ。

 磐田の反撃が始まったのは30分を過ぎた辺りから。後方からのロングフィードと川口の突破以外に攻撃の形を見出せなかった磐田が徐々にボールをつなぎ始めた。そして40分、左サイドを駆け上がった西からファーサイドのグラウへ。そのボールをグラウが反対サイドのポストめがけて頭で落とす。そこへ飛び込んできたのは名波。頭で合わせてゴールネットを揺らした。押し込まれても慌てず。そしてチャンスを確実に決める。磐田の強さが垣間見られた得点シーンだった。



 先制されたヴェルディに同点の絶好機が訪れたのはロスタイム。強引に突破を図ったエムボマの足をGK佐藤が抱え込んだ。判定はもちろんPKだ。しかし、三浦が蹴ったPKはGK佐藤がセーブ。その跳ね返りを再び三浦が狙ったがボールは無常にもポストの右へ外れた。流れを引き戻し、更には勢いにのれる絶好の機会。しかし、東京Vはこれを逃した。そして試合の流れは、そのまま磐田に大きく傾くことになる。

 1点のビハインドを負う東京Vはも右SBの柳沢を高い位置に上げて前がかりになってゴールを目指す。しかし、これは磐田の思う壺だった。「最終ラインの背後、あるいはアウトサイドのスペースをついていこう。ショートパスだけではなくて長いボールを入れてリズムを変えよう」(柳下監督)。磐田は徹底して柳沢の後ろのスペースへボールを配給。そこを西が面白いように突破していく。さらに、高い位置を取るDFラインの裏へ前田、グラウが飛び出していった。

 そして磐田は狙い通りの展開から2点目を奪う。時間は71分、左サイドから西がアーリークロスをファーサイドへ。DFの背後へ走りこんできたグラウが頭で合わせてゴールネットを揺らした。ダメ押し点は後半のロスタイム。右サイドの深い位置から成岡が大きくサイドチェンジ。そのボールをフリーで受けた西がドリブルシュート。一度はGKに弾かれたが、そのこぼれ球をグラウが落ち着いてゴールマウスに流し込んだ。



「3点とも狙い通り。トレーニングしていたものが、いい形で出て、その結果として得点できた」(柳下監督)。立ち上がりの30分は押し込まれたが、終わってみれば3−0の圧勝。しかも、狙い通りの得点パターンは、改めて磐田の強さを感じさせるものだった。さらに柳下監督は続ける。「リーグ戦と同じ状態でトレーニングしているし、試合にも臨んでいる。いま非常にいい状態」。初の天皇杯獲得まで後2つ。磐田の気合は十分だ。

 さて、敗れた東京V。「今日は戦う前から問題は山積みだった。何人も怪我人がいましたし、試合に出場するにしても100%ではない選手がいた」(アルディレス監督)。いいサッカーをしていただけに悔やまれることだろう。しかし、アルディレス監督が目指すつなぐサッカーには手応えを感じたはずだ。「ボールを保持して、スペースを見つけて、そのスペースを使う。思うサッカーは出来ている。後は、その時間を長くするだけ」(三浦)。東京Vの改革は確実に進んでいる。


アルディレス監督(東京V)記者会見
柳下正明監督(磐田)記者会見


(東京ヴェルディ1969) (ジュビロ磐田)
GK: 高木義成 GK: 佐藤洋平
DF: 柳沢将之 富澤清太郎(65分/戸川健太) 米山篤志 三浦淳宏 DF: 鈴木秀人 田中誠 山西尊裕
MF: 山田卓也 林健太郎 小林大悟 平野孝(75分/平本一樹) MF: 川口信男(39分/成岡翔) 河村崇大(81分/菊地直哉) 服部年宏 西紀寛 名波浩
FW: エムボマ 桜井直人 FW: 前田遼一(73分/中山雅史) グラウ
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